我が国の新幹線のライバルとして取り上げられる事も多い、フランスの 高速列車TGVが時速574.8kmというレールの上を走る列車としては、 世界最高速度を記録したというニュースがありました。 この記録はレール上を走る列車としての世界記録達成というだけでなく、 浮上式列車である我が国のリニアモーターカーが出した世界最高速度 記録の581km/hに匹敵するという点で、フランスの技術力を強くアピール するものでもあります。 今回のTGVの最高速度試験の様子はテレビで中継され、現場には将来 高速鉄道の導入を検討している国の関係者もいたと言います。 この試験に当たっては、最高速度試験に適した車両の改造、試験軌道 や架線の強化、電圧の強化等、“実験”の要素が色濃いものとなっており、 今後、TGVが500km/h以上の速度で営業運転を目指して実施した試験、 というわけではないようです。 従って、ある意味では“無駄な試験”でもあるのですが、それでも最高速度 試験を行うにあたって開発した技術や実験データは、従来の営業路線にも 十分適用出来るものであるでしょう。 何より「世界最高速度を出せるポテンシャルを秘めた列車」という商業上の アピールポイントという点では大きいものがあります。 さて、一方の我が国の新幹線はあくまで実用化を前提とした最高速度試験 を実施しているので、最高速度試験も営業路線にて通常運行と同じ条件で 実施しております。従って、試験車両も営業路線と同様に16両編成といった 具合で、そのまま営業車両として投入出来そうな感じの車両を製作しての 実験を進めております。なお、今回世界最高記録を出したフランスのTGVの 車両は最高速度アタックの為に特別に改造された5両編成の車両です。 これだけ聞くと日本は何ともマイペースであるように感じられますが、実は 同じ距離を走るのでも所要時間が短いのはTGVよりも“遥かに遅い”新幹線 であるというのをご存知ですか? 新幹線の車両とTGVの車両を比較した場合、よく取り上げられるのが、 新幹線は「ムカデ方式」、TGVが「機関車方式」というヤツです。 新幹線の「ムカデ方式」というのは「電車方式」とも呼ばれ、原則、各車両に モーターが付いています。(最近の車両は間引きされていますが・・・) 一方、TGVは先頭に電気機関車を配置し、後ろに続く客車を引っ張る形で 走るシステムになっております。 どちらにも一長一短があるのですが、「ムカデ方式」の利点として「加速力の 速さ」が上げられます。すべての車両にモーターが付いているので、全ての 車両がスクラムを組んで動き出せるのです。 一方、TGVのような「機関車方式」では力自慢の先頭車両が“荷物”を引く という感覚なので、どうしても出足が遅くなりがちです。 そのため、新幹線とTGVが同じ長さだった場合、新幹線の全車両がホーム から出た時、TGVはまだ半分くらいしか出ていない、といった具合になって しまうわけです。 ちなみに今夏より投入予定の東海道新幹線の最新型車両であるN700は 現在主力の700系車両よりも加速力で60%もアップしているそうです。 また、TGVは現時点でも300km/h営業運転が基本であり、その点では 我が国の新幹線よりも優れているのですが、その300km/hで運転出来る 区間というのが実は全区間ではありません。 特にパリに近づくと在来線に乗り入れるので、在来線区間では必然と 在来線に合わせた速度で走ることとなり、その分、高速鉄道としては 時間のロスが大きいものになります。 パリだけでなく、地方都市では我が国の山形新幹線や秋田新幹線同様、 在来線を走っている区間も多く、どっちかというと、田舎では高速専用線を ぶっ飛ばし、都市部では在来線として走っているという感じです。 従って、意外と“効率の悪い”路線整備を続けているわけです。 我が国の新幹線も都市部では騒音対策の為にスピードを落として走行して おりますが、専用線を走っている為、在来線よりはずっと速い速度です。 結果、極端な例え方をするならば東海道新幹線が東京を出発して新大阪に 到着した頃、TGVの場合はまだ名古屋付近、なんて感じなわけですよ。 これでどっちが便利か?と言われればやはり新幹線の方が便利ですよね? で、さすがにTGVも新幹線方式の利点を認めたのか、現在では通勤路線を 中心に「ムカデ方式」の車両を投入すべく、新型車両を開発中だとか。 一般に高速鉄道を利用する目的の一つが「目的地までの所要時間の短縮」 なわけです。「最高速度を体感したい」なんて単なる趣味の世界なわけです。 しかし、それでも「世界最高速度」という言葉の持つインパクトはものすごく、 鉄道に詳しくない識者の中には「新幹線は時代遅れ」なんて平気で言う人 もいるくらいです。それにもともと新幹線自体、「夢の超特急」として開発された 鉄道ですから、やはり新幹線は「夢」であり続けてもらいたいものです。 360km/hで北の大地を目指す“ネコ耳”新幹線も夢がないとはいいませんが、 個人的に「男のロマン」を求めるなら、やはり500km/hでの営業運転を目指す 中央リニア新幹線の整備に期待したいものであります。 |
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