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●映像化するなら「ロボット刑事」
― 石ノ森先生にはたくさんの映像化作品があります。特に「仮面ライダー」をはじめとする70年代の実写ヒーローものは数多いですが、庵野さんとしてはテレビとマンガ、どちら派だったんでしょうか?

庵野:僕はマンガ寄りでしたね。「009」の連載を読み出したのは小学2年生とかでしたが、「仮面ライダー」が始まった時は5年生でしたから、どうしても低年齢向けのテレビ番組にはついていけない部分がありました。

― 「キカイダー」「変身忍者嵐」「イナズマン」「ロボット刑事」あたりは、テレビではご覧になっていましたか?

庵野:ときどき見ていたという感じです。「キカイダー」は、オープニングでくるっと回りながらメカ部分や目の電飾が光るところが好きなんですけど、本編だとそういうカットがあまりないのが残念でした。「キカイダー」のいいのは、最初の頃とハカイダーが出てくるあたりですね。ものすごく面白くなるのは、やはりハカイダーからです。テレビと連動していたマンガは、尻切れに終わっているものが多くて、ヒーローものに限るとちゃんと終わっているほうが少ないくらいですね。メディアミックスなので、番組が終わるとマンガも終わるという事情もあると思うんですけど、「キカイダー」の場合は番組自体が長かったので、マンガもきちんと終わっていて良かったですね。特にラストの問いかけにはシビレました。「嵐」や「イナズマン」の頃は中学生になっていましたから、テレビはときどき見る程度で、ほとんどマンガのほうを読んでいました。「イナズマンF」の面白さは、のちに出渕(裕)さんと飲んだ後に、「見たことがないなら家に来い」と誘われて(笑)、そこで初めて教え込まれました。「ロボット刑事」のテレビのほうは、オープニングがすごい好きなんです。廃工場のような場所で、(千葉)治郎さんが取り囲まれて撃たれそうになった時にKが飛び込んできて盾になるカットがいいです。あのぐらいの口径の拳銃ではびくともしない、Kの力強さもいいですね。カット割りも良くて、あそこ見たさに何度も繰り返してしまいます(笑)。

― 以降のヒーローものはどうですか?

庵野:「(秘密戦隊)ゴレンジャー」の頃は高校生でしたから、さすがに「ヒーローものを馬鹿にするな」と怒って途中で見るのをやめてしまいました。「ゴレンジャー」の面白さがわかるのは大学に入ってからでした(笑)。大学の時に再放送があって、「これはこんなに面白かったのか!」とようやく気づきました。「ゴレンジャー」自体も放映途中からだいぶテイストが変わった作品で、機関車仮面や野球仮面の頃になると、突き抜けた良さがありますね。清川(元夢)さんが声をあてた青すじ仮面の回で、「青すじ仮面が青すじ立てて怒ったぞ」という名セリフがあって(笑)、そのあたりからコメディ方向への路線変更が顕著になっていった気がします。

― それ以降は、平成仮面ライダーとかも見ていませんか。

庵野:そうですね。見たのは「BLACK」くらいです。「BLACK」の1・2話は良かったですね。「スカイライダー」も最初は良かったけど、これも路線変更で子ども向けになってきて、「ゴレンジャー」を見るような感覚で見ていました。ニセライダーが公園で悪いことをして、仮面ライダーの評判を落とす作戦とか。

― このマンガを映像化したい、という石ノ森作品はありますか。

庵野:「どれか1本やっていい」と許可が下りるなら、僕は「ロボット刑事」をやりたいですね。あの原作の雰囲気のままで。

― それは実写でですか?

庵野:作品としてのリアリティーを考えるとアニメだと思うんですが、あの時の石ノ森先生の絵を描けるアニメーターが今いるのかなといった悩みもありますね。かといって、今風のデザインにする気はないんですよ。だったらまだ実写のほうが逆説的にリアリティーがあるかなとも思います。あの絵が描ける絵描きさえいてくれたら可能性はありますね。ただ、「ロボット刑事」は先生が映像をイメージしたものをマンガのコマに置き換えて描かれているわけで、それをまた映像に戻すというのは非常に難しいと思いますね。マンガが映像的な分、映像を超えたイメージがそこにありますから。見開きの使い方なんかをどう映像にすればいいのか、悩みますね。映像は枠が変わりませんから。

― 石ノ森先生は大の映画好きだったとうかがっていますが、やはりそうした共通性は感じますか。

庵野:「ロボット刑事」を読んでいると、(映画の)松本清張のシリーズを思い出しますね。最初のエピソードなどは、松本清張作品で描かれる“事件”の感じがします。「砂の器」のようなハードな日本映画の雰囲気がありますね。あの頃の石ノ森作品の背景の描き方もいいですね。ペンタッチを活かして描かれていて。一枚絵として、とても完成度の高いものになっていたと思います。石ノ森先生はベタの使い方も非常に上手いですね。白黒でペンタッチだけ、スクリーントーンを使っていなくて、イラストではなく絵画的な印象ですよね。石ノ森先生の60年代・70年代の絵柄は、ものすごく好きです。あの頃は本当に、1枚1枚のクオリティの高さがすごくいいですね。

庵野秀明 インタビュー動画(2)

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