筒井康隆 インタビュー(第1回) メッセージトップ>>
●SFをよくわかっているマンガ家
― 石ノ森章太郎先生は、筒井さんの短編「ベトナム観光公社」をマンガ化していますね。「週刊少年マガジン」71年7号に掲載されたものでした。この作品については、どういう印象をお持ちだったでしょうか。

筒井:この短編は、水野良太郎さんなど、何人かの方にマンガ化していただきました。これは「S-Fマガジン」に発表した当時、相当評判になりました。丸谷才一さんが毎日新聞の文芸時評欄で取り上げてくださったこともあって、話題になったんです。そのときにあまり間を置かないで、マンガ化したいというお話があったんじゃなかったかな。石ノ森さんのは……この頃は石森章太郎だけど、ほとんど僕の作品そのままで、台詞もまったく変更ないし、忠実にやってくれた。やっぱり、オリジナリティを大事にしてくれる人だと思ったし、SFのことをよくわかっている人だと感じましたね。

― 筒井さんが、石ノ森作品に最初に出会ったのは、どの作品だったのでしょうか?

筒井:覚えてないですねえ。いっぱい読んだ記憶はあるんですが。「佐武と市(捕物控)」とか、長いのは読んでないですね。漫画全集みたいなものがあって、その中に「石森章太郎集」というのが1冊あったのは覚えています。そこに、短編のSFなんかがだいぶ入っていたでしょう。あれで、あ、SFがわかっている人なんだな、ということは感じました。その中の作品で覚えているのは、いろんなエピソード、いろんなストーリーが平行して描かれて、でも、最終戦争が起こってみんな死んじゃうというやつ。

― 「そして…だれもいなくなった」ですね。ギャグマンガや恋愛マンガなど、数種類のストーリーが同時進行していく構成でした。

筒井:それはいいなと思ったね。小説ではこれはできないなと思った。

― そういうふうに、実験的な作品が多かったですね。

筒井:あれはやっぱり、いろんなタイプのマンガを描く人だからこそのものですね。……僕のところにも、そういう馬鹿なことを注文してくる人がいますよ。「時をかける唯野教授」を書けとかね(笑)。……それから昔、こんなことがありました。「サイボーグ009」が出る少し前に、講談社から、マンガの原作をやってくれという話がありました。その頃、たとえば「エイトマン」であるとか、数字を名前にしたようなやつがあって、そういうのをやってくれという依頼だったんです。それで僕は、何だったか、「サイボーグ009」に似た名前のものを書いて提出したんですよ。それは没になっちゃって。しばらく後から、彼の「サイボーグ009」が出たから、そんなことはよく覚えています。

― 当時、ヒーロー物やSF物などで、タイトルに数字をつけるという流行があったわけですね。

筒井:008とか、いろいろあったんですよ。そんなのをやってくれって言われて、つまんないなと思いながら書いたんですけど、やっぱりダメでした。ああいうものを書くのは、ほんとに好きじゃなければね。いやいや書いたらろくなものにならない。

― アニメ「スーパージェッター」の脚本も手がけていらしたそうですね。

筒井:ちょうど「スーパージェッター」をやっていた頃の話ですね。

― さらに昔は、「漫画少年」という雑誌に投稿もなさっていたそうですが、マンガはお好きだったんですね。

筒井:そうですね。僕は、マンガ少年ではあったわけですけど、高校・大学時代からは、マンガはむさぼり読まなくなりました。マンガがわーっと出てきたのは、手塚(治虫)さんが出てきてからだいぶ後ですよね。最初は手塚さん一人の人気で、その後手塚さんのお弟子さん達がいっせいに出てきたという状況があった。そこまでしばらく間があったんです。その間に、ぼくは手塚さんのマンガばっかり追いかけてて、ほかはあまり読まなかった。いっせいにわっと出てきたときには、もう読んでいませんでした。ただ、SFじゃないけど、永井豪ちゃんのやつは、大人のマンガとして楽しんでましたね。

― どのあたりの作品ですか。

筒井:「ハレンチ学園」。あとは「オモライくん」なんかも。あのへんは大好きでしたよ。で、永井豪ファンクラブの会長もやりました。石ノ森章太郎は、SFは描くけれども、ほかのものをたくさん描いてるんですよ。まあ、永井豪ちゃんだってそうなんだけど。ただ、なんか僕は永井豪ちゃんと波長が合ったんですよね。石ノ森とは実はあんまり合わなかったですね。

― たしかに、石ノ森先生は、SF以外でも膨大な数になりますからね。

筒井:500冊か、こりゃすごいですね。そのくらい描いてるだろうなあ。もう、あの人は忙しかったからねえ。ほんと忙しかった。だから、人と会ってる時間がなかったんじゃないかな。夜、銀座に行って飲んでると、彼も飲んでたりすることがあるんだけど、……藤子不二雄の、よく飲むほうはどっちだっけ。

― A(我孫子)先生ですね(笑)。

筒井:Aのほうか。彼といつもつるんでたね。忙しいくせに、飲み始めるとあの二人はあちこちはしごするんだよね。こっちは、話があるから編集者としんみり飲んでたら、5、6軒回ってまたもどってくるんだよ。「あなたたち他に行くとこないの」なんて言ってた(笑)。

― そういう場でお会いしたときの石ノ森先生の印象というのは、どうだったでしょうか。

筒井:酔っぱらってました(笑)。でも、真面目な話をもちかけたら、わりと真面目に話していたように思います。本質的には真面目な人なんでしょうね。

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