◎大和の排除命令 悪しき商習慣との決別を
優越的地位の乱用で、「大和」(金沢市)が排除命令の行政処分を受けた背景には、百
貨店業界を取り巻く経営環境の厳しさがある。百貨店の売上高は一月まで十一カ月連続で対前年同月割れが続き、客単価も低下している。首都圏の大手デパートですら青息吐息の状況だけに、大和の経営も楽ではなかろう。
だが、香林坊店や富山店の納入業者の多くは、もっと弱く、苦しい立場にある。業者の
家族、親戚、知人は、大和の顧客でもあり、こうした業者の支えなしに、パイの限られた地方都市で息長く商売をしていくのは難しい。大和の経営陣は、コンプライアンス(法令順守)などという堅苦しい言葉を持ち出すまでもなく、「苦しいときは相身互い」の心意気で、弱い者いじめのような悪しき商習慣と決別し、納入業者と二人三脚で厳しい消費不況を乗り切ってほしい。
これから総額二兆円の定額給付金の支給が始まる。百貨店業界にとっては、またとない
追い風だ。支給が本格化する前に公正取引委員会の排除命令が出されたのは、むしろ幸いだったのではないか。今こそ膿(うみ)を出し切って心機一転、反転攻勢に臨んでほしい。
百貨店業界は今、再編の大波にもまれている。「そごう」と「西武百貨店」、「大丸」
と「松坂屋」、「三越」と「伊勢丹」など、かつてのライバル同士が手を組み、覇権を争っている。売上高一兆円を超える巨大資本の前に、地方の百貨店は苦戦を強いられ、札幌市では今年一月、「丸井今井」が破綻し、「三越伊勢丹ホールディングス」と「高島屋」が再建支援の主導権争いに動き出した。
民事再生中の丸井今井の各店舗では、市民が地元の「丸井さん」を救おうとわざわざ買
い物に足を運び、二月の売上高が前年同月比で約5%増えた店舗もあるという。地方の百貨店が生き残っていくためのヒントがここにある。
北陸新幹線の開業に向けて、人や投資を呼び込む魅力的な地域づくりが急がれている。
中心市街地の真ん中には、その核として地元に根付いたデパートが元気でいてほしい。今がその正念場であり、大和の再生に期待したい。
◎太陽発電の人材育成 自治体の設置支援加速を
経済産業省・資源エネルギー庁は来年度、太陽光発電システム設置のための人材育成支
援に乗り出す。環境対策はもちろん、企業の成長市場への参入促進、さらには離職者や学生の就職支援という「一石三鳥」を狙う取り組みにするようだが、とりわけ地方レベルでは、住宅向けの太陽光発電システムの普及がまだまだこれからという状況だけに、人材育成とともに、システム設置を促す自治体の支援も加速したい。
政府は、昨夏に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」で、二〇二〇年には現在の
十倍の太陽光発電を導入する目標を掲げている。住宅用はその主力と見られており、経産省の人材育成支援はこの目標達成に向け、中小工務店や電気工事店の従業員のほか、離職者や学生など三年間で計九千人に対して講習を実施する。
太陽光発電は今後急速に普及が進むとみられるが、北陸における住宅向け太陽光発電の
普及率を見ると、最も新しい二〇〇七年度の数字では、石川県内が0・67%、富山県内は0・9%と、全国平均の1・52%よりも少ない。システム設置のスペシャリスト養成とともに、今後の普及促進へ自治体側の努力が求められる。
太陽光発電への支援では、石川県が新年度から家庭版環境ISOに登録する世帯を対象
に、太陽光発電なども含めて省エネ対策に取り組んだ場合、投資額の5%を助成する制度を設ける。富山県は一月から同システムの導入希望者に申請一件当たり五万円を補助しており、予想を超えた反響を呼んでいるという。ただ、各市や町でも支援策を設けるところが増えてきたものの、財政難の中で対応にも温度差があるのが実情だ。
一般的な太陽光発電の能力を持つ機器の購入費用は二百万円程度とされ、昨年末に復活
した国の補助制度では、その一割程度が支給される見込みだ。国の補助制度と自治体の補助を組み合わせれば、かなり負担軽減になるだろう。自治体は各種補助を組み合わせた活用法も含め住民らに周知してほしい。購入意欲が高まれば、人材の需要にもつながるはずである。