いつもと毛色が違う話です。とある設計事務所の本社ミーティングルームがリニューアルされたのですが、そのガラススクリーンフィルムの作成に技術協力をしました。
まずは写真(クリックで拡大)から。
写真奥側のミーティングルームがガラス壁に覆われているため、この視線制御ということで貼られているフィルムになります。遠目には形が現れていますが、実際には四角の粒(ビット)の集まりで全体が構成されています。Bit Scapeという名前の通り、粒による風景の表現です。
下の写真(クリックで拡大)を見てもらうと分かります。左側の写真、中央やや右よりの部分を拡大したのが右側の写真です。右側の拡大写真では、全体としての形が失われて粒が見えています。この写真ではちょっと分かりにくいかも知れませんが、パソコンのスクリーンからの距離を変えてもらうと、形が消えたり、現れたり、というが体験できると思います。
アイデア段階では丸の粒で構成する、いわゆるハーフトーンでやる予定だったのですが、それでは全体のイメージに合わなそう(&つまんなそう)ということで四角の粒で構成したいという案が出てきました。ところが既存の画像加工フィルタでは適切なのがない、ということで、その画像加工技術を提供しました。
四角で表現する場合、同じ形の四角で埋めていくが一般的です。そうなるとドットの固まりになるので、もっとハッキリと図像が浮かびます。その代わりに奥行き感が失われて、風景というよりは絵になっていきます。モザイクとかですね。
このBit Scapeのポイントは、四角の大きさが変わることで、より奥行きのある表現が可能になっているところです。上の写真で分かるように、粒の形は4種類しかありません。それらの四角の集合で全体の風景が現れてきます。横と縦のラインは合っているので、キレイにグリッドが現れます。写真では横線が強くでていますかね。
じーっと10分ぐらい見ていると、目が慣れてきて、かなり明確に全体の形が分かると思います。あえて、どんな風景なのかは書きませんので感じてみてください。まぁ、すぐに分かると思います。ヒトによって感想は違いますが、「モニターっぽい」とか「テキスタイルっぽい」とかが多いですかね。
技術的なところですが、Adobe のPixel Bender Toolkitというソフトウェアを利用しました。昨年、Adobeがリリースしたソフトウェアですが、画像加工専用の言語が搭載されており、画像を扱うための関数が用意されています。ツールそのものは無償でダウンロードして遊べますので、興味があるかたは、ぜひ試してみてください。これは面白いです。
ロジックとしては、図像の明るさを四角の大きさに変換しているだけです。ツール上では粒の大きさが指定できるようになっていて、デザイナに渡してスタディしてもらいました。僕ら(GxP社)としては技術提供のみ、ということになります。デザイナ自身が初期段階から「粒の大きさを変えたい」という明確なビジョンを持っていたので、実現そのものは単純でした。その後、粒の出方を調整するのにだいぶ苦労したようですが。
このフィルタは、もう少し育てられるかなぁと思っています。他にも展開しようと画策していますので、なにか出来てくれば紹介しますね。