英国経済は、強いポンドや海外からの投資資金がGDPを支え、ここ10年余りは良好な状況が続き世界から称賛されてきた。しかし昨年8月ごろから金融危機の影響で景気低迷が始まり、GDPもマイナスとなった。
そして英国は“ヨーロッパの新しい病人”とまで呼ばれるようになっている。もともと英国で最も強いセクターはシティーに代表される金融だ。金融業のGDPに対する寄与度は7〜8%で、国の税収の4分の1を稼いでいると言われている。しかし最近、中堅や大手銀行の一角が大幅な赤字を計上し、数行が税金を使い国有化されている。
90年代のスウェーデンの銀行危機ではGDPの約4%、日本の場合は約14%の国の資金が使われたと言われている。仮に英国が日本並みの資金を必要とすれば、英国のGDPを約190兆円として約27兆円が必要となる。
恐らくこの程度であれば英国も大丈夫であろうが、それ以上に心配されているのは銀行セクターの負債の大きさである。小国のアイスランドの銀行負債がGDPの10倍近くに膨れ上がり、政府と銀行が共倒れしたのは記憶に新しい。
英国の場合は銀行の負債がGDPの4、5倍と言われている。しかしロンドンのシティーは半数以上が外国籍の銀行で、英国自身の銀行の負債はアイスランドほど大きくなく、これも何とか乗り切れるだろう。
またポンド安となったため、外貨建ての負債が大きい英国にとってはむしろ経済的にプラスに働くように思える。グローバルな経済的連鎖が強くなる世界でどの国がいち早く不況から脱却するのかは注目の的だ。日本もうかうかすると英国に先を越されることにもなりかねない。(QJ)