「依存症」というキーワードで、日本経済が、消費の女性依存、産業構造の建設業依存、金融の外国人依存、資産有用の預金依存、行動判断のマスコミ依存などによって、どれだけヘンテコになっているかを切れ味鋭く読み解いていきます。

また、食料の海外依存に対しては、食料自給率が日本より低い先進国でも何も問題になっておらず、むしろ農家への補助金を厚くする政策を採っている先進国が農産物の輸出によって新興国の農業生産を圧迫しているという指摘もあり、さすが『日経公社債情報』が発表するエコノミスト・ランキングで6年連続ナンバーワンと思わせる主張の厚みを感じさせます。
<もくじ>
はじめに
「20年バブル崩壊」を象徴する「グリーンスパンからボルカーへ」/日本人が予期する低成長シフトダウン/「日本的勤勉さ」の今後にも悲観論が/「依存」という視点で日本経済を考える/10のテーマと「秋田県」のケーススタディー
第1章 日本の個人消費は「女性依存」
婦人服売上高にカギがある
落ち込みがきつい消費マインド/百貨店の婦人服売上高で消費状況がわかる/2007年7月に始まった「悪い物価上昇」/SC専門店でも婦人服売上高は減少/女性の消費に変調が起こっている/海外ブランドの価格戦略に変化/婦人服の売り手がとる対応策/消費税率引き上げの判断材料にも
第2章 お父さんのこづかい減少でわかる「交際費依存」体質
「消費弱者」に逃げ場はあるのか
景気悪化で減少するお父さんのこづかい/企業の交際費は2005〜06年に増加/交際費等の支出が最も多い建設業
第3章 なお残る「建設業依存」と構造調整圧力
中小・非製造業は生き残れるのか
本音は「災害が起これば仕事が増える」/建設投資額はピークから4割減/展望がない内需依存の零細業者/淘汰が進むと失業率6%台に/「ちょうどよい服の大きさ」にする方法/他分野進出・転業の支援を
第4章 食料の「海外依存」は本当に問題なのか
40%の食料自給率が意味するもの
40%を回復した食料自給率/「食料安全保障」という奇妙な概念/3種類の食糧自給率/高い国産品を買わされる消費者/「食の安全」と食料自給率は別の問題/質・価格ともに強い国産品を作るために/日本の農産物はどんどん輸出できる/いまも生きている1985年の提言
第5章 緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本
ここままでは国ごと沈んでしまうのか
日本とフランス、プールの違いの意味/不要な規制がたくさん残っている/規制緩和で非製造業を活性化せよ/激減した「規制緩和」関連記事/緩和ムードが下火になった理由/やってみなければわからない「実験」/日本が沈むシナリオを回避するために
第6章 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか
ゆとり教育が生んだ3つの弊害
ゆとり教育で元気になった学習塾産業/教育費負担の増大と格差拡大/なぜおかしなことが放置されてきたのか/教師の「やる気」を高める
第7章 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人
景気の波と報道の影響力との関係
何を見て景気のよし悪しを判断する?/不況期ほど影響力が大きいマスコミ/納豆の売り上げを急増させた捏造事件/出版界の「ランキング依存」/新聞好きの日本人とマスコミの責任
第8章 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」
間接金融中心で何が悪い?
なぜ米国人を真似する必要があるのか/間接金融は本当にデメリットが多い?/直接金融がサブプライム問題の傷を広げた/市場は官が育成するものではない/政府はマネーをどこに誘導したいのか/むしろ低下したリスク資産への投資/「貯蓄から投資へ」のスローガンは「笛吹けど踊らず」/「投資から貯蓄へ」とマネーが逆流/新興国に投資するときの鉄則/軽すぎる「リスクをとる」という言葉/日本人には信じ難い米国人のメンタリティー
第9章 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場
ブレークスルーを生む政策を打ち出すために
東京市場はニューヨークの「写真相場」/日本市場の動向は外国人投資家が決める/動ける幅が非常に小さい日銀の金融政策/日本の経済対策はなぜ効果がないのか/「1月効果説」が示す外国人の影響力/通貨の覇権争いで敗れる日本/グリーンスパン氏のすごいアイディア
第10章 日本経済はやっぱり「米国依存」
否定された「デカップリング論」
輸出依存が宿命に近い日本経済/米国が風邪をひくと日本も風邪をひく/誤りだった「デカップリング論」/信用不安と景気悪化の「負の相互作用」/何が株価をメルトダウンさせたのか/米国経済は脆い「カードの城」/日本はグローバルスタンダードを握れるか
第11章 ケーススタディー:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図」
秋田県は「10年先の日本」/お国自慢にならないデータの数々/失敗している人口対策と外国人誘致策/本当はたくさんある観光資源/全国で最高学力の「日本のフィンランド」/朝7時前に起床する子が9割/県から夕刊が消える/よくも悪くも生真面目すぎる県民性/夏の甲子園で11年連続初戦敗退/秋田経済は典型的な「飛行機の後輪」/財政事情を悪化させるもの/波紋を呼んだ「飛び込み勧誘」禁止条例案/なぜか駐輪場が有料で駐車場が無料/日本経済の縮小均衡を先取りする町/秋田県の事例から読み取れる貴重な教訓/秋田県が復活すれば日本の未来も輝く