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iPS細胞の高品質化に成功 米チーム、難病治療に前進

2009年3月6日10時40分

 パーキンソン病患者の皮膚からさまざまな細胞に成長する人工多能性幹細胞(iPS細胞)を高品質でつくることに、米国チームが成功した。従来の作製法と比べ、iPS細胞の性質のばらつきを抑え、がん化などの危険性も減らせるという。6日付の米科学誌セルに発表する。

 パーキンソン病は神経細胞が減って神経伝達物質のドーパミンが不足し、手足のふるえなどが起こる難病。米マサチューセッツ工科大などのチームは、53〜85歳の男女5人の患者の皮膚細胞に、iPS細胞をつくるのに必要な三つの遺伝子を導入した。

 遺伝子の導入には従来通りウイルスを使ったが、iPS細胞ができた後、特殊な酵素で導入遺伝子を取り除き、遺伝子が過剰に働かないようにする仕組みも加えた。すると、iPS細胞の遺伝子の働きぶりが、従来のiPS細胞より、もうひとつの万能細胞の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に近くなることがわかった。

 患者の細胞からつくったiPS細胞は、難病の原因解明の研究や、拒絶反応のない移植治療に使えると期待されているが、導入遺伝子が残っていると性質がばらつくとされ、課題になっている。

 国立成育医療センター研究所の阿久津英憲室長は「技術改良が着実に進んでいる。導入遺伝子を残さない今回のような作製法は、今後の主流になる可能性がある」と話す。(佐藤久恵)

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