Der Zibet


「孤高のオリジネーター」Der Zibet、
アルバム『PRIMITIVE』で13年振りの完全復活!

 二十歳の頃、どうも社会と馴染めなかった。世はバブル全盛期、誰もが軽いノリでお手軽な享楽を満喫する世の中に、自分とのズレを感じて、部屋で膝を抱えて音楽ばかり聴いていた──その音楽のひとつがDer Zibetだった。グラムロック、ニューウェーブ、プログレ、オルタナティブ、雑多な最先端の音楽性を貪欲に消化し、Vo.ISSAYの美意識と共に独特の世界観を紡いでいたが、忽然と姿を消したバンド──2009年の今、様々な季節を経て、帰還。待ってた。

■お帰りなさい、ですね。「Der ZibetのISSAYさん」とお話が出来てうれしいです。再始動以前の一番最後のライブは──確か今はなき新宿のパワーステーションで。
ISSAY:最後は、『キリギリス』を出す前の年の暮れですね。12月に、パワーステーションでやったのが──ラストライブ、見てるんですね(笑)。
■はい(笑)。活動を再スタートされるに至っての、経緯を伺っても良いですか?
ISSAY:ええ。まず、ベースのHALが事故で大怪我しちゃったんですよ。治ってきた辺りで「音楽をやりたい」って言い出しまして。有志が集まって、彼の家や、スタジオで曲を作ったりだとか、それがきっかけの一番大きな所ですね。そのちょっと前くらいに、僕、Lynxというバンドをやっていまして、Der Zibetの曲でライブをやったことがありまして。その時にHIKARUが出てくれて、その辺りから交流がまた深くなって。HALちゃんのリハビリも兼ねたリハーサルバンドをやっていて、最初のうちはドラムをΦ、FRICTIONのミノルがやっていたんですけど、途中でMAYUMIに替わって、気が付いたら「これはDer Zibetではないか」と(笑)。
■いかがでしたか?蘇ってくるものとかありました?
ISSAY:スタジオで、音を出して一発目の衝撃は大きかったですね。目の前に──懐かしいよく知っているような風景が広がった、っていうのが一番最初の感覚かな。ドラムはまだミノルだったんですけど、ベースをHALちゃんが弾いて、HIKARUがギター弾いて、僕が歌った時に、本当に良く知っている世界があった、っていうのが正直な感想ですね。
■なるほどですね、素晴らしい。そして──13年振りのフル・アルバムですね。
ISSAY:いやもう、作ったほうも、すごくエキサイティングでした(一同笑)。とにかく、やることなすこと、全部が自分の中に突き刺さっていくというか。すごくエキサイティングで刺激的な状態で。作っている時の感覚は13年前にやってる時の感覚とやっぱり近かったんじゃないかな。常に刺激し合うバンドだったんで。
■『PRIMITIVE』っていうタイトルは、ご本人的にはいかがですか?
ISSAY:僕達は昔からそうなんですけど、アルバムを作る時は、何かしらのキーワードなりの元にやって行くんです。今回はHIKARUからある日「PRIMITIVEっていうキーワードでどう?」ってメールが来たんですよ。彼としては世の中を見ていて、「何で、今の人達はプリミティブな感覚が無くなってるんだろう」、「今の大人達に必要なのは、プリミティブなパワーなんじゃないか」っていう部分で思いついたらしくて。あと、Der Zibetが持っていた、特にMAYUMIの得意としていたジャングル・ビートのグルーブ、ああいったものを想定して、そのキーワードを僕にぶつけてきたみたいで。僕はその言葉を見た瞬間に、これは今の時代、面白いなと思ったんです。「これは面白い単語だから、是非、これをタイトルに新しいアルバムを作ろう」とすぐに返信して。それでやっていったんですけど、作業の仕方としては、HIKARUは音楽的な部分で、僕は作詞の立場から、まず「PRIMITIVE」って言葉を念頭に置きながらただ白紙の状態で入っていって。一番大事なのは、「今の時代にPRIMITIVEっていうのはどういうことであるか」とか、「自分達、Der ZibetにとってPRIMITIVEってなんなんだろう」とか、「僕自身にとってどういうことなのか」を考えながら作っていった、っていうのが大きかったですね。この21世紀に入ってもう9年経つんだけど──そこで「PRIMITIVE」って言い切っちゃうのって面白いな、っていうところですね。
■そうですよね、なるほどなるほど。この作品も、流石はどこを切り取っても、もちろんDer Zibetで。
ISSAY:──今回、よく言われますね(笑)。Der Zibetとしてのプリミティブさがすごく出ている気がしますね。本来自分達にあるべきところ、そこが出ているとは思います。
■「ISSAYさんの中でのPRIMITIVE」とさっき仰っていましたが、何か見えたものはありますか。
ISSAY:これは結果論なんですけど、すべての曲が出揃ってこの形になり、他人事のようにやっと聞ける状態になった時に──「ああ、僕が今回出したかったのは、生命力なんだ」と気が付きましたね。「生命力」のあるものにすごく惹かれたし、今、「生命力」があるものに対しての羨望だったり憧れがあったりだとか、そういう羨望とかは昔から持っていたと思うんですよ。今回それが一番良い形で出たんじゃないかっていう気はします。
■そう考えると、すごくストレートな形で出されているイメージはありますよね。「生きる」っていうことは──Der Zibetの世界観に於ける永遠のテーマだった気がするんですが(笑)。「タフに生きよう」ではないですけど。
ISSAY:そうですね(笑)。21世紀なんで、「生き残りの時代なんじゃないか」っていう気はしていたんで。
■あぁ、さらに、新曲はもとより、ライブで披露される以前の楽曲もアレンジも刷新されていて──。
ISSAY:そうでしょう?どうあっても、「懐かしい」っていう言葉で片付けられるようなバンドにはなりたく無いなと。多分、どこのバンドでもそれは一緒だと思うんだけどね。
■ニューアルバムを出されたりと、新しいことを考えてらっしゃると思うんですけど、これからはいかがですか?
ISSAY:まず、ライブですね。今、『PRIMITIVE』ツアーのリハーサルに入ってるんですけど、古い曲を新しい形で出すっていう部分と、新曲の数々をいかにステージでもはっきりと提示するか、その作業に没頭し始めているんで、まずライブっていう感覚が強いですね。なるべくライブもコンスタントにはやっていきたいと考えていて。
■じゃあこれで正に完全復活のような。
ISSAY:そうですね、楽しみです。
■なるほど、楽しみですね。これでまた、新しいファンの子達とかに聞いてもらえると嬉しいですよね。
ISSAY:本当にね、このアルバムはロックを好きな人だったら、誰もが好きになれる要素を持っていると思うんです。だから本当に色んな人達に聴いてもらいたい──「新人バンド」と見てもらって全然構わないんで(一同笑)──十何年もやってなかったんだから「新人です」って言っても一緒ですからね。「こういうバンドがいるんだ」と手にとって聴いてもらえれば最高だと思いますね。  

 

Interview&Text : 林 拓一朗