モンゴルといえば、青く澄み切った広い空、緑のじゅうたんを敷き詰めたように果てしなく広がる草原が思い浮かぶ。
「モンゴル人は物をほしがる心が削(そ)ぎおとされていて、むしろ日常かるがると移動することを愛してきた」。司馬遼太郎は「草原の記」の中で、モンゴルの民族的資質をこう表現した。
馬とともに草原を駆け巡った遊牧民ならではの特性だろう。その一方で独特の文化も編み出した。岡山市デジタルミュージアムで開催中の「チンギス・ハーンとモンゴルの至宝展」をのぞくと、諸民族の興亡の歴史の中でいかに豊かな文化がはぐくまれてきたか、その底力に驚かされる。
ユーラシア大陸の東西にまたがる史上最大のモンゴル帝国を築いたチンギスハン。その覇業を核に、紀元前四世紀から二十世紀にかけ世界史に確かな足跡を残した北方遊牧民族の歴史と文化に光を当てた。
会場を彩るのは、中国・内モンゴル自治区博物館から厳選された優品だ。まばゆいばかりの金製の王冠、チンギスハンが使ったという鞍(くら)、色鮮やかな女性の衣装、それに武具、楽器…と実に多彩。装飾品や容器のデザインなど随所に中国やシルクロードの影響も見てとれる。
閉塞(へいそく)感に包まれている昨今。草原文化に浸りながら悠久の歴史に思いをはせれば気分も安らぐ。