2009年3月6日5時35分
米テキサス大のチームが盗作が疑われる医学論文約200本を見つけ出し、著者や編集者に見解を問いただした。「盗作された側」は「露骨な盗作」とあきれかえるが、「盗作した側」は、「先に論文が出ていたとは知らなかった」と言い訳が目立った。こうした盗作の実態が明らかになるのは珍しい。
6日付の米科学誌サイエンスが掲載する。
チームは、米国立医学図書館が運営する医学・生命科学の論文データベースを対象に独自開発のプログラムを使って表現の相似性を調べ、著者が異なっていた約9千本を抽出。実際に論文を読んで212本を「盗作の可能性がある」と判断した。著者や掲載紙の編集者と連絡のとれた163本について電子メールでアンケートを行った。
「盗作された側」の著者からは「こんな露骨な盗作は初めて」「科学者として受け入れたくない」など厳しい反応が多い。一方、「盗作した側」は「データ借用の許可をとらなかったことは謝罪したい」などの釈明が目立った。「なぜ私の名前があるのかわからない」「学生が書いた論文で研究室をやめてもらった」など、かかわりを否定するコメントもあった。
83本の論文についてはアンケートをきっかけに編集者が内部調査を実施、46本は「取り下げ」の形で不備を認めたが、半分近くでは何の対応もとられなかったという。
アンケートは、匿名を条件にしており、日本人がかかわっているかは不明だ。
調査で使ったデータベースは、世界80カ国以上の約5200の学術雑誌の論文を収録している。(行方史郎)