ホーム > きょうの社説


2009年3月6日

◎定額給付金の活用 官民一体で消費の導火線に

 支給手続きが始まった定額給付金をきっかけに、石川、富山県でも消費拡大キャンペー ンやプレミアム商品券発行などの動きが本格化してきたのは望ましいことだ。景気浮揚効果をめぐり、実施前から批判もされてきたが、冷え込む地域経済をてこ入れする機運が徐々に高まってきたことは、それだけで一つの効果と言えるのではないか。

 昨年来の経済対策がようやく動き出したにもかかわらず、その効果をはなから否定し、 後ろ向きの議論をいつまでも続けていては、せっかくの機運に水を差すだけである。官民一体で知恵を絞り、給付金を消費刺激の導火線にすることを前向きに考えたい。

 内需の柱であるはずの個人消費が冷え込んだままでは景気回復の糸口はつかめない。定 額給付金の性格については「生活支援」から「消費刺激」へと政府の見解が変わったが、自治体も消費に回すことを積極的に呼びかけることで、過度に萎縮することなく、消費を拡大することが地域経済や日本経済を強くするという認識を広げていくきっかけにもなるだろう。

 定額給付金は総額二兆円の規模だが、これを決めた昨年十月とは経済状況は一変した。 景気を下支えするには規模が物足りないという声が出ていることも確かである。給付金の効果を一過性にとどめず、消費刺激の導火線にしようと思えば、それに続く対策がより重要となる。

 個人金融資産は国民全体でみれば、約千五百三兆円(二〇〇七年末時点)に上り、仮に 1%でも市場に流れれば十五兆円となる。巨額の個人金融資産が消費に回るような内需拡大策を真剣に考えるときである。政府が新たに検討する大規模な追加経済対策では、その視点をとりわけ重視してほしい。

 自治体の間では、年度末の事務繁忙期と重なったため、定額給付金の支給手続きの煩雑 さに不満の声も漏れているが、単なる国の下請け事務と考えず、住民の生活や地域経済のプラスになる施策として受け止めたい。民間の「給付金商戦」と足並みをそろえ、首長自らが消費喚起に旗を振る積極さがあっていいだろう。

◎観光競争力低迷 外国語のもてなし向上を

 世界経済フォーラムがまとめた二〇〇九年版の世界の観光競争力ランキングで、日本が 二十五位という結果になった。文化資源やインフラ整備は上位ランクなのに、「外国人訪問者に対する人々の態度」など外国人から見た「親しみやすさ」の点で最低水準だったことが大きい。外国人へのソフト面での対応が十分とは言えない実態を示した数字であり、謙虚に受け止めねばならないだろう。

 北陸でも、外国人旅行者に対するもてなし力の向上に向けて、英語のガイドの養成に力 を入れるようだが、景気動向に影響されにくい欧米富裕層の誘致をめざす上では、観光地、宿泊施設、空港や駅などで、外国人と円滑にコミュニケーションが取れる人材の育成が欠かせない。

 ランキングは、観光に関する政策や環境保全度などの指標を、データや経営者に対する 調査をもとに指数化し、一年ごとに発表している。今回は前年と同様に一位がスイス、二位がオーストリア、三位がドイツとなった。いずれも多くの国と国境を接し、日常的に多言語が飛び交う。アジアの中で日本より上位のシンガポール(十位)、香港(十二位)は英語を日常的に使う環境にある。

 これを見れば「親しみやすさ」という指標には、英語による意思疎通能力が、大きな比 重を占めていることが分かる。外国人旅行者にすれば、英語で思うように接することができない日本人に、もどかしさを感じるのかもしれない。

 石川県では新年度、金沢城公園や兼六園の見どころを英語で伝えるボランティアガイド の育成に乗り出すというが、外国人旅行者の中でも、とりわけ物見遊山的でない「特別の体験」を求める富裕層を満足させるには、道案内程度ではなく、より質の高いコミュニケーション力が求められる。

 それだけに、地元の歴史や文化の知識を身につけ、柔軟に使いこなせる語学力の持ち主 が必要となる。観光にかかわる多くの人が外国語のもてなし力に磨きをかける意味でも、そうした学びの場を多く設けてもらいたい。


ホームへ