日本の県名などが中国や台湾で勝手に商標登録されるケースが相次ぐ中、岡山県上海事務所の林誉知所長が、「岡山」の中国での商標登録の出願・登録状況を調べた。その結果、出願も登録もなく、林所長は「幸いだが、中国での知名度がないという意味では悲しむべきかも」と話している。
瀬戸内海対岸の香川県では、台湾の現地企業が「讃岐」を商標登録していたため、本場の讃岐うどんが台湾進出した時に、「讃岐うどん」と名乗れないトラブルが発生している。
林所長は、こうしたトラブルが多発していることを知り、中国工商行政管理局のホームページで「岡山」の出願・登録状況を6月に検索。「倉敷」「備前」「清水白桃」なども調べたが、いずれも未出願、未登録だった。
日本貿易振興機構(JETRO)の調査によると、中国では「和歌山」「山口」「高知」など27府県名が商標出願され、うち20件が登録済みになっている。「九谷焼」「美濃焼」などの地域ブランドも商標登録され、これらのほとんどが都道府県などとは全く関係のない中国の業者による出願らしいという。
中国の法律では、広く知られた地名は商標登録できないと定められているが、商標登録の審査官が知らない地名は登録されてしまう。異議申し立てはできるが、時間や手間がかかるという。
JETROや特許庁は、対策として「自らの商標を早期に出願することが重要」としているが、県の取り組みはこれから。事業所の海外展開を支援している県産業企画課は「地域ブランドや地名を県内から商標登録したという話は聞いたことがない」という。
今秋、香港の見本市に出展するなど県内産果物の輸出促進を図っている県農政企画課では、「清水白桃」や「マスカット・オブ・アレキサンドリア」「ピオーネ」など県特産品の中国での商標登録を課題の一つととらえている。「輸出が本格的になれば、きちんと対応しなければならない。どこが主体となって手続きするかなどの問題もあり、生産者団体に商標登録の重要性を知らせていきたい」
林所長は「将来、中国進出の可能性が少しでもあれば、商標登録しておくべきだ」と助言する。林所長によると、中国には商標登録専門の弁理士も多く、1商標あたりの出願料は6万〜7万円だという。(八尋紀子)