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更新:3月6日 13:20インターネット:最新ニュース

通信業界の旧体制に挑むベンチャーが集結 米eComm

 日本では「放送と通信の融合」がよく取り沙汰されるが、米国ではこうした言葉を聞くことが少ない。事実、米国は「融合」というマイルドな表現にはほど遠く、ソフトウエア業界が放送や通信業界を浸食していると言うのが適切だろう。そんな状況を如実に示すのが3月3日からサンフランシスコで開催された「エマージング・コミュニケーション会議(eComm)」だ。古い電話業界の殻を打ち破ろうとする様々なベンチャーがずらりと顔をそろえた。(在米ITジャーナリスト 小池良次)

■無料IP-PBXとスカイプの強豪コンビも登場

 「電話業界は、アップルのiPhoneやグーグルのAndroidを異端児と称して騒いでいるが、冗談じゃない」──。こう言い放ったのは、2日目の基調講演に登壇した市民団体「New America Foundation」のSascha Meinrath氏だ。同氏に言わせれば、アップルの「iPhone」もグーグルの携帯プラットフォーム「Android」も既得権益に守られた電話業界の優等生に過ぎないという。

 「今の通信業界に求められているのは、ポリシー・ハッキング(既存概念の打破)だ」とMeinrath氏はいう。現状はそれには程遠いという認識であり、「今年1月に就任したバラク・オバマ大統領によって、少しは情報通信政策も変わる可能性がある」と突きつけた。

 確かに、eCommで行なわれた発表は、「スカイプ対応のIP-PBX(構内交換機)」「iPhoneを使ったVoIP電話」など、既存の枠にとらわれない内容が多かった。

 日本と同様、米国でもブロードバンドを使ったインターネット電話(固定)は広く普及している。特に企業ではコスト削減のために大手から中小までネット電話が持てはやされている。

アスタリスクのスカイプ対応について説明するMark Spencer氏

 そうしたなか、オープンソースのIP-PBX最大手であるDigiumはIP-PBX「アスタリスク」を無料ネット電話の「Skype(スカイプ)」に対応させることに力を入れ始めた。PBXは企業内に置く小型の交換機で、社内や社外の通話をさばくだけでなく、留守録や転送、電話会議など多彩な機能を提供する。IP-PBXは、それにインターネット電話の機能を加えており、現在はIP-PBXが主流となっている。

 アスタリスクはオープンソースのIP-PBXソフトで、同社のサイトから無料でダウンロードできる。ちょっとしたサーバーにインストールすれば、数万円でIP-PBXが完成する。大手メーカー製なら数十万から数百万円するだけに、アスタリスクは中小企業に人気が高い。

 このアスタリスクがスカイプと連携すれば、企業間だけでなく一般消費者との電話料も安く抑えることができるだろう。電話会社にとっても通信機器ベンダーにとっても、「アスタリスクとスカイプ」のコンビは強敵になりそうだ。今回のeCommでは、アスタリスクの産みの親であるDigiumのCTO、Mark Spencer氏が登場し、その機能を詳しく説明した。

■オバマ政権と携帯インターネット電話

 iPhoneに限らず、3G携帯ではデータ通信の速度が上がり、ウェブ閲覧だけでなくビデオやネットラジオなども利用できるようになった。もちろん、スカイプなどの無料ネット電話も技術的には利用することができる。しかし、電話会社にとって、携帯でのインターネット電話は“鬼門”にちがいない。収益の大半を占める音声通話が安いインターネット電話に置き換えられれば、売り上げが激減するからだ。そのため大手電話会社や政府は、携帯インターネット電話に慎重な態度を崩していない。

 たとえば、最大手のスカイプは昨年、連邦通信委員会(FCC)に「携帯データ網の開放」を求めたが、FCCは「携帯業界は十分な競争環境にある」との理由で、この要求を退けている。また、アップルもインターネット電話に関するiPhoneアプリを現状では認めていない。欧州でiPhoneを取り扱う携帯事業者T-MobileはiPhone向けVoIP電話の利用差し止めを求める裁判を起こし、勝訴している。

 そうした壁がありながらも、eCommではGlobal IP SolutionsのIrv Shapiro氏がiPhoneを使ったインターネット電話の研究発表を行なった。内容は純粋な技術的考察で、ビジネス面での制約(契約や規制)には触れていない。しかし、オバマ政権は従来の情報通信政策を一変させ、ネットワークの開放も進めようとしており、携帯インターネット電話もビジネスとして解禁されるかもしれない。制度面での制約がなくなれば、大手携帯事業者相手に野心的なベンチャーたちが戦いを挑むことになるだろう。

◇   ◇   ◇

 そのほか今年のeCommでは、携帯から音声を使ってカレンダー利用やレストラン予約ができる「携帯音声ウェブ」、大量の携帯GPSデータを分析(データマイニング)して人々の集まり具合から繁華街の様子などを浮き彫りにする新種の「ロケーションサービス」といった興味深い発表もあった。

 既成概念を打ち破りながら新しいビジネスを狙うこうしたベンチャーは、欧米諸国が強いのだろうか、米国だけでなくイギリスやカナダなどからの参加も多かった。一方、主催者の考え方もあるだろうが、アジアからの発表が1件もないのは気にかかる。世界でトップクラスの携帯市場と独自の携帯文化を持つ日本をはじめ、香港や韓国などにも興味深い携帯ビジネスはありそうなのだが。

[2009年3月6日]

-筆者紹介-

小池 良次(こいけ りょうじ)

ITジャーナリスト

略歴

 米国のインターネット、通信業界を専門とするジャーナリスト。京都外国語大学卒業後、ブラジルのサンパウロ新聞社に入社、社会面・経済面を担当する。その後、帰国し民間調査会社で技術動向調査、技術出版、科学技術セミナーなどを企画運営する。88年、同社事務所代表として渡米。1993年末情報通信分野を専門とするフリーランス・ジャーナリストとして活動を開始、現在に至る。日経ネット(日本経済新聞社)、インターネット・マガジン(インプレス社)に連載を持つほか、インターネット・アスキー、月刊イントラネット、週刊ダイヤモンド、中央公論、トリガー、ビジネスコミュニケーションなどに特別レポート多数。

著書:電子小売店経営戦略(インプレス刊)、国際大学フェロー。

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