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進む周産期医療の強化

公明新聞:2009年3月6日

東京都の周産期緊急医療対策

総合母子医療センターを拡充など
東京都

東京都の周産期緊急医療対策

 重症の妊婦患者の転院搬送の受け入れ先が決まらず、治療が遅れてしまう“妊婦たらい回し”――。東京都内では、2008年9月23日と10月4日に相次いで、こうした事故が発生した。これを受け、都議会公明党は直ちに「周産期母子医療問題プロジェクトチーム」を発足させ、再発防止策の推進に取り組んできた。都の対策と都議会公明党の取り組みを紹介する。

総合母子医療センターを拡充
搬送依頼の完全受け入れめざす

 東京都は、各地域の周産期医療拠点として、「周産期母子医療センター」(総合9、地域14カ所)の機能拡充を進めている。

 まず08年10月には、新生児集中管理室(NICU)への受け入れ新生児数を確保するため、重篤期を脱した回復期の新生児が利用する「後方病床」の体制を拡充。さらに12月には、緊急手術に対応できるよう、産科医の電話呼び出し制度(オンコール体制)を整備するとともに、地元の開業医の協力も得て、手薄な休日の受け入れ体制を強化した。

 さらに都は、NICUと、ハイリスク(危険度の高い)妊娠に対応する機器を備えた母体・胎児集中管理室(MFICU)の両方を備えた「総合周産期母子医療センター」が、救急部門などの医師と常に連携することで、母体救命の緊急搬送依頼を必ず受け入れるセンターになることをめざしており、09年度予算案に1億7500万円を計上している。

 一方、地域の中核病院でミドルリスク(中程度の危険度=中等症)の患者を受け入れる「周産期連携病院」(6カ所)も3月1日に指定した。これは、ミドルリスクの受け入れ先を創設することで、「周産期母子医療センター」でのハイリスク患者の受け入れ病床を確保するのが狙い。

 また都は、産科医などの不足問題に対しては、都内の病院で周産期、小児、救急などに従事することを条件にした奨学金制度を創設し、医師の確保をめざす。

地域外搬送も迅速化
集中的管理へ コーディネーター新設

新生児集中管理室を視察する都議会公明党の周産期母子医療問題PT=2008年11月26日 名古屋市 転院搬送の遅れを防ぐため、東京都は、搬送先の調整を集中的に行う「母体・新生児搬送コーディネーター」を新たに設け、管轄地域内の周産期母子医療センターで受け入れ困難な場合でも、他の地域の同センターで迅速に医療提供できる体制の確保をめざしている。09年度予算案に事業費を盛り込み、制度設計の検討を進めている。

 現行の転院搬送は、妊婦が重体に陥るなど地元の産科医の手に負えない事態が生じた時、産科医が地元の周産期母子医療センターに受け入れの可否を確認。もし、受け入れ不可能だった場合は、その産科医が管轄地域外の同センターに次々と電話を掛けて確認しなければならず、貴重な時間を費やしていた。

 特に多摩地域は、総合周産期母子医療センターが1カ所しかない。このため、遠く離れた23区内の同センター受け入れを確定させるまでの時間短縮が、母体の安全確保に極めて重要となっている。

事故発覚受けプロジェクトチーム設置
先進例を視察、対策リード 都議会公明党

 都議会公明党は、08年10月に脳出血を起こした妊婦の緊急搬送先が見つからず、出産後に死亡した事故の発覚(同22日)を受け23日、都に周産期医療体制の強化を要請。24日には「周産期母子医療問題対策プロジェクトチーム」(東村邦浩座長=都議)を発足させた。

 その後、受け入れを拒否された妊婦が死亡した都立墨東病院を視察し、ハイリスク出産を担う現場の声を聴取。母体搬送を必ず受け入れる名古屋第一赤十字病院の先進的取り組みなども調査した上で、08年度補正予算、09年度予算案に施策を盛り込ませ、周産期緊急医療体制の強化をリードした。なお、多摩地域について都議会公明党は、新たな同センター開設を推進している。

事故の経緯

 08年9月23日午前3時ごろ。地元産科医師から妊婦の搬送依頼を受けた杏林大学病院(調布市)は、当直医師が手術中のため、受け入れを拒否した。このため、約25キロメートル離れた都立墨東病院(墨田区)に搬送されて出産したが、脳出血を起こし、処置を受けた。

 同年10月4日(土)午後7時ごろ。地元産科医師より転院搬送の依頼を受けた墨東病院の当直医師が土日の母体搬送を受け入れていないと回答し、転院搬送が遅れた。妊婦は帝王切開により出産し、頭部手術をするものの、3日後に死亡した。

変わる出産事情
高齢出産化でリスク増大

 母体搬送受け入れが困難になった背景には、ハイリスク出産の増加がある。

 都心部での核家族化や生活スタイルの変化、結婚年齢の高齢化などに伴って、30代以上での出産が増加。都の調査によれば、出産年齢別の出産数(1000人当たり)は、01年度に20代438人、30代以上563人だったのに対し、05年度は、それぞれ356人、643人となり、30代以上の出産が増えて20代の出産が減った。さらに、出産年齢の高齢化で、出産時に生活習慣病などを患っているケースも増え、ハイリスク出産につながっているとも指摘されている。

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