過去放送記録

FILE064:「こころは水で作られる!?」

2009年3月10日放送

 
FILE064:「こころは水で作られる!?」は
3月9日(月)午後3:15〜、10日(火)午前8:30〜<BS2>再放送予定です。

ニュース等の影響で放送時間変更、休止の場合もございます。
ご了承ください。m<_ _;>m

中田力(脳神経学)

近代科学最後のフロンティアといわれるヒトの「こころ」の研究。中でも私たちの意識の正体は未だに多くの謎に包まれている。その意識を独自の理論で解き明かそうとしているのが、新潟大学・統合脳機能研究センター長の中田力だ。28歳で渡米した中田は、カリフォルニアで臨床医として腕を磨きながら、脳の機能を調べるfMRIと呼ばれる装置の開発で輝かしい業績を挙げてきた。13年前に新潟大学に招かれて以来、国内では最高性能を誇るヒト用のfMRIをはじめ、脳電図記録・解析システムなど最新の装置を次々と開発している。
その中田が提唱しているのが、人間の意識の形成に脳内の水が重要な役割を果たしているという仮説である。この理論によると、脳内部で発生する熱によって水分子が動き、その動きが神経細胞の活動を絶え間なく引き起こすために、人間の意識が作られているのだという。水分子の動きは極めてミクロな現象なので、現在の技術では直接観察することは難しい。しかし、最近の研究で、脳細胞には水分子だけを通す穴があることが明らかになってきたために、中田の理論は注目を集め始めている。「こころ」の謎を解き明かそうとする独創的な研究者の理論に爆笑問題が迫る。


中田力(なかだつとむ)
カリフォルニアで臨床医になる。ER(救急救命病棟)で診療を続ける傍ら、人体内部の働きを観察できるファンクショナルMRIの開発に参加する。1992年にカリフォルニア大学教授、1996年に新潟大学教授に就任し、人間の「こころ」の科学的解明を目指した研究を行っている。著書に「脳の方程式 いち・たす・いち」「脳の中の水分子」などがあり、ヒトの“意識”の存在には脳内部の水が重要な役割を果たしているという独自の仮説を提唱している。

今回の対戦内容

中田力(なかだつとむ)/爆笑問題(太田/田中)


田中:今日は脳といっても、さらに人間の「こころ」とか「意識」とかそういうのを解明した先生だってきいてきたんですよ。
中田:僕らは、脳の働きが「こころ」を作っているということを基本前提にしているわけ。
最終的に「こころ」っていうのは、触れないものですよね。でも、そこにはある意味で心みたいなものが存在する。それを作っているものがどういう風にその「こころ」を作っているかは、科学的に証明できるだろうと。
太田:脳がどう働くかっていうのが、まあ言ってみれば、存在とはっていうところを、科学的に説明できる。要は、意思とかそういうものを脳で解明するということ?
中田:その通り。逆に言えば、「こころ」の内容だとか、一人ひとりが持っている「こころ」の読み方とか、そういうのは解明できない。だけど、どうやって一人ひとりの人間たちの「こころ」ができあがっていくかっていうのは分かるだろうと。
太田:おれも結構その辺、興味あるんですけれど、動物と人間と基本的には生物として同じで、動物なんかも意識はあるだろうし、悲しみや喜びっていうのは感じるだろうと思うんですけれど、なぜか人間だけはちょっと違うという気もするんです。
中田:結論から言っちゃうと、僕は大脳構造を持った動物はすべて意識と「こころ」を持っていると思っている。だから哺乳類はもちろん全部持ってる。ただし、そういう構造を持っていない魚みたいなものは、恐らく僕らの言う意識は持っていない。
太田:哺乳類は意識がある、魚は意識がないって言ったところで、でも哺乳類の中でも、おれは人間っていうのがちょっとまたその別の違いますよね。じゃあその違いは何なのかなって思うんだけど。
中田:人間と他の哺乳類との大きな違いは、情報の扱い方のうまさが違う。それが基本的に何から起こってきたかというと、前頭前野、一般的に前頭葉と言われているものができ上がってきたから。

先生の対戦感想

中田力(なかだつとむ)


対談の中で、直接、太田さんにも言いましたけど、割と心の奇麗な人ですよね。だからものを考えていることに非常に共感出来ることが多い。僕が言っていることに対して、どのぐらいあちらが共感しているかはわからないけれど、哲学的な会話になると、基本的に僕らが考えていることと同じことを考えているなというのが印象ですね。
今日の会話のようなことを楽しめるんだったらば、いろんな面白い会話が出来ると思います。真剣に8時間とか20時間ぐらいでも話がいっぱい出来る。例えば人類がどういうふうに生まれてきたとか、日本はどうやってできてきたとか、そういう話しの方が、実は僕は得意なんです。ですから、もしそういう会話を交わせる時期がいつか来たら、そういう話もしてみたいと思いました。でも、忙しい方なので、絶対に来ないでしょうけど。だから忙しくて、気の毒だなとも思いました。

爆笑問題の対戦感想

田中:すごく面白かったんですけど、難しかったですね。
太田:何だか分からなくなっちゃったね。自分がよく思うのは、思考と心、脳と心、何となく別な気がするんだけど、先生が言うように脳の中の意識を水で説明できるならば、それはそれで面白いなと思いますが。
田中:でも、お話を聞いていると引き込まれちゃう感じがありましたね、先生って。理論とか何か多分、何度も話しているからっていうこともあるのかもしれないけど、すごくちゃんと導いてくれるっていうか。脳の熱の放射の話があったじゃないですか、あの話はすごくワクワクしました。
太田:おれが木の話をした時に、それは「こころ」だっていうことを言ってくれてね。もし、おれが思っていた木の部分が「こころ」だとするならば、人間の脳での思考以外の心も、やっぱり存在するんじゃないかっていう気がしちゃうんですね。その辺のことはね、とても話していて分かることじゃないんだろうけど。
田中:結構先生はロマンチストっぽいじゃないですか。そういうところがこう聞いていて、普通に難しい講義みたいなのとは全然違って、ちょっとストーリーがあるみたいなね、何かそういう面白さもありましたね。
太田:そういうことも含めて、答えが出るとはとても思えないようなことを考えている先生も自分も、色々な人たちが、「こころ」というものに向かっているというのは、ある意味でそれをまた俯瞰から見ると、一つの動きに見えるのではないかと。それが宿命というか、運命論めいちゃって、不思議な気持ちになってくる、そんな感じがしました。面白かったです。

ディレクター観戦後記

中田先生は、現在、新潟大学教授とカリフォルニアでの臨床医を掛け持ちされていて、アメリカと日本を往復される多忙な日々をおくられています。それにもかかわらず、新潟大学に取材で伺うたびに、「脳で意識がどのようにして生まれるのか」というご自身の仮説や、国内外の脳科学の現状など多岐にわたる話題を、何時間もかけて丁寧に話して下さいます。番組の収録時も、太田さんの発言をしっかり受け止めて、ご自身の言葉で鮮やかな解釈をして頂きました。爆笑問題さんからはもっと話しがしたいとリクエストが出て、帰りの新幹線の便に間に合うぎりぎりの時刻まで会話が弾みました。
水に着目して脳の働きを説明する理論を中田先生は「渦理論」と命名されていて、番組で紹介できたのは、ほんのさわりの部分です。その内容は熱力学やエントロピーに使われる数式を駆使して構築したもので、とても30分では説明しきれるものではありませんが、独創的で非常に刺激的な仮説です。興味を持たれた方は、先生が書かれた一般向けの本を、一読されることをお勧めします。

プロデューサーの編集後記

意識はどこから生まれるのか?という問題は、死ぬとどうなるのか?と同じ位に、誰もがたびたび考え、しかも答えが出ない禁断の領域だと思っていました。それを中田教授は脳内の水や熱のメカニズムから解明しようとしています。意識の成り立ちがわかった後に、どんな世界が待っているのか?その探求の、ワクワクするような、ちょっと怖いような、切っ先に、中田教授は立っているのです。
今回の現場は、教授に見えてきたものと太田さんの直感が、スリリングに交錯しました。意識とこころの違いは?人間の脳は大宇宙の端末なのでは?そもそも意識なんてあるのか?・・・・科学と哲学の間で揺れ動きながら、お互いにまだまだ話し足りない、という感じで熱を帯びていく。収録をする側としては、安全な場所だと思っていたら、ふと気付くと、戦場の最前線に飛び込んでしまっていたような気分でした。そしておそらくこうした、本質的に「ヤバい」会話を放送する番組は、他にないのではないか、とも思ってしまいました。

つぶやき


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生物

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