23区の2009年度予算案
重点施策、目玉事業を追う
【放送芸能】本紙FAXモニター『地デジにしないワケ』 『今は買いたくないんです』2009年3月6日 朝刊 地上波の完全デジタル化まで、あと八百七十日。先月発表された総務省の最新の調査では、地上デジタル放送の世帯普及率は目標を下回り、半数に届いていなかった。不況だから? 告知がまだ足りないから? そこで声を集めてみた。「私がデジタルにしない理由」とは−。(敬称略) 総務省の調査によると今年一月時点で、デジタルテレビ、チューナー、チューナー付き録画機器、ケーブルテレビ加入などを含めた「地上デジタルテレビ放送対応受信機を保有している世帯」は49・1%。毎年順調に伸びてきた普及率は北京五輪という好機があったにもかかわらず、ここにきて鈍化している=表。「あっち、こっち、地デジ〜」と、みんなが地デジを見ているかのように喧伝(けんでん)されているわりには、あっちにも、こっちにも、アナログの人はたくさんいる。 本紙「FAXモニター」の“生の声”を聞いてみたら、寄せられた回答の七割がアナログ派だった。ただし、アナログ派も二〇一一年に今のテレビは使えなくなることは知っているし、それまでにテレビやチューナーの購入を考えてもいる。国や専門家が心配する“デジタル難民”になる気はないが、「今は買いたくない」というのが本音のようだ。 「アナログで十分満足。なるべくギリギリまで買わない。もっと安くなるだろうし、最新のものを買いたいから」(豊島区・竹内やす子)、「一九九六年製だがまだ見られる。ギリギリまでデジタルにするつもりはない」(牛久市・円尾明子)。「今よりもう少し安くなるのではと考えてギリギリまで買うのを控えている」(品川区・松田啓江)。 デジタルテレビは三年前は37型で三十万−四十万円もしたが、今は十万円前後。パソコンもそうだったが、待てば待つほど高性能で安くなることを“学習済み”ということのようだ。 ☆ ★ アナログを「二〇一一年七月二十四日」に停波するのは、〇一年の電波法改正で決まった。テレビの寿命を考えると「十年」の猶予があれば自然に買い替えが進みそうだが、実情は違う。 「三年前にアナログテレビを買い替えたばかりなので新しいのを買うのはもったいない。ギリギリになってからチューナーを買うつもり」(日野市・園田郁毅)。いずれ使えなくなることは理解していたが、当時店頭にあったのは三十万円以上の大型テレビばかりで、欲しかった20インチ程度の地デジ対応機種はなかったという。メーカーがニーズに応えていなかったのだ。 「基地が近く電波が乱れるので以前からケーブルテレビに加入している。ケーブルテレビ局から何らかの連絡が来たら検討する」(羽村市・布田美希)。ケーブルなら今のテレビを使い続けられる。ただし、ほとんどのケーブル局の料金体系はアナログ契約よりデジタル契約の方が高く、やはり費用負担は避けられない。 一人暮らしや困窮世帯への対策を心配する声もあるが、先月、「総務省テレビ受信者支援センター」が全都道府県に拡充され、より地域事情に即した相談に乗り出した。また生活保護世帯、障害者などNHK受信料が全額免除される世帯には、チューナーが無料配布される見通しだ。 ただ、米国はチューナー購入用にクーポン券を配布したにもかかわらず、予定通り停波はできなかった。「(日本も)先送りになるのでは」(江戸川区・内山薫)という“期待論”も。 そして、次のような理由も心理的ブレーキになっている。 「何のメリットがあるのか納得できない。画質の向上、インタラクティブサービスよりも、似たようなバラエティー、意識の低い出演者などソフトの改善に意識をそそぐべきでは。『二〇一一年にはアナログ放送は見られなくなるんです』というCMは半ば脅迫に見える。国民のことを考えない施策に乗っかったテレビなど、もう見なくていいという気になる」(所沢市・岩沢薫) ★ ☆ デジタル化のメリットは「画質がきれい」「データ放送などができる」だが、「今でも十分満足」「そんな機能、使わない」と反論されれば何の説得力もない。「まだ使えるテレビを買い替えたくない」という明快な理由と「納得いかない」という反発に勝てる、うまい「宣伝文句」がなければ、完全普及への道は険しそうだ。
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