定額給付金などの財源を確保する二〇〇八年度第二次補正予算関連法が成立した。参院では否決されたが、衆院で自民、公明両党など出席議員の三分の二以上の賛成多数による、いわゆる「三分の二条項」を使って再可決した。
小泉純一郎元首相が本会議を欠席するなど自民党の二人が党の方針に造反した。共同通信社が二月中旬に実施した世論調査では、関連法案の衆院再可決での成立に61・3%が反対し、賛成(29・9%)の二倍に達した。多くの反対の中での衆院再可決は、ごり押しと言わざるを得ないだろう。
いったんは辞退を明言していた麻生太郎首相は、受け取ることに方針転換した理由を「生活給付の部分よりも、消費刺激の比重が高くなってきた」と述べた。しかし、総額二兆円規模の給付金による消費刺激効果について、国内総生産(GDP)を0・2%程度押し上げるとの政府試算はあるものの、評価はエコノミストの間でも分かれる。給付は一度限り、一過性のカンフル剤に終わりかねない。
民主党など野党は、経済効果への疑念が多い定額給付金を「天下の愚策」などと酷評してきた。給付金を盛り込んだ〇八年度第二次補正予算が一月末に成立してからは、関連法案の審議を通じて給付金の問題点を追及していくと表明していたが、踏み込み不足は否めない。
二兆円のより効果的な使い道を探るような政策論議も見られず、麻生首相が受け取るのかどうかといった、給付金ありきの議論に終始したようだ。これだけまとまった財源であり、底の見えない経済不況を乗り切るために、将来につながるような対策を検討すべきではなかったか。例えば、新規産業を生み出すための種をまいたり、ほころびの目立つ医療や保険といった分野での安全網を築き直すことなどが考えられよう。
各自治体は給付に向けて作業を本格化させるが、給付金の効果を引き出すために知恵を絞ってもらいたい。地域経済の振興に生かそうと、地元商店街などで利用できるプレミアム付き商品券の発行などに取り組む自治体や商工団体もある。
定額給付金によってどれだけの波及効果があるのか、その影響を検証することも、今後のために欠かせない。麻生首相は来週にも追加経済対策の策定を指示するという。将来に向けて効果のある政策を打ち出すためにも、給付金の効果をきちんと検証することが必要だ。
民主党の小沢一郎代表が記者会見で、準大手ゼネコン西松建設からの違法献金事件をめぐり公設第一秘書が東京地検特捜部に逮捕されたことに「衆院選が取りざたされている時期の異例な捜査には、政治的にも法律的にも不公正な検察権力の行使という感じを持つ」と反発した。代表辞任は考えていないと強気の姿勢を貫いたが、今後も説明責任を問われよう。
逮捕された公設秘書は、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の会計責任者だ。容疑は、実際には西松建設の資金なのに西松のOBが代表を務める政治団体からの献金だったと政治資金収支報告書に虚偽の記載をした政治資金規正法違反の疑いである。
規正法は、他人名義での献金や、政党か政党の政治資金団体以外への企業献金を禁止している。西松側は政治団体を企業献金の隠れみのにする仕組みをつくり、小沢氏側に事実上の企業献金を繰り返していたとされる。関係者の話では、小沢氏側は十一年間で計約一億八千万円の献金を受領していた。
公設秘書は容疑を否認しているという。小沢氏も会見で「政治資金規正法にのっとって報告しており、強制捜査を受けるいわれはない」と検察を厳しく批判した。今後の捜査の焦点は、公設秘書が西松側の政治団体がダミーで、事実上の企業献金と認識していた裏付けを得られるかどうかだ。当局は秘書が否認を貫いても起訴できる証拠をそろえなければ、国策捜査との非難にさらされよう。
小沢氏側の西松側への便宜供与の有無や、西松側が献金したとされる他の国会議員との関係なども徹底的に調べる必要がある。後を絶たない政治とカネにまつわるウミを出すために、民主党はもちろん、国会は疑惑解明に取り組むべきだ。
(2009年3月5日掲載)