年度末に向け派遣など非正規雇用労働者の大量失職が予測される中、労働組合などが実施した電話相談で、事務系や物流系に関する相談が急増していることが分かった。非正規労働者の失職が、これまで圧倒的多数を占めていた製造業から、業種を問わず全体に拡大している状況が浮かんだ。
派遣労働の問題に取り組む労組などでつくる「派遣法改正連絡会」が先月末と今月1日に実施した「派遣切りホットライン」の集計によると、相談件数は444件で昨年11月末の472件とほぼ同じ。このうち業種が特定できた232件の内訳は製造業88件▽事務系59件▽物流その他83件▽紹介予定派遣2件−−だった。昨年のホットラインでは相談のほとんどが製造業派遣だったが、今回は物流、事務系派遣が急増。年代別では30〜50代が多く、事務系派遣が増えた影響からか女性の相談が155件となり、前回を上回った。
具体的な相談内容は「同じところに秘書として10年派遣されているが雇い止めになった」(50代女性)▽「7年続けたが契約更新を拒絶された」(営業職・男性)▽「正社員になれる紹介予定派遣だったが半月前に突然解雇を言い渡された」(20代女性)など。
派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「製造業派遣は減産などで切られ、その減産で物流の仕事も減った。経費削減などの名目で事務系などでも派遣切りが広がっているのではないか」と分析する。
同様の傾向は日本労働弁護団の労働相談でも表れており、棗(なつめ)一郎弁護士は「正社員のリストラ相談も急増している」という。
厚生労働省が2月に公表した調査結果では今月末までの半年間で15万7806人が失職するとされたが、約96%は製造業系。全業種での解雇の広がりが見られることから、失職する労働者は15万人を大きく超えると見られる。【東海林智】
【関連ニュース】
トヨタ九州:派遣1000人を正社員に 派遣切り批判浴び
雇用情勢:派遣先解除、「常用」82%が失職 非正規は15万人−−厚労省調査
全労連:「派遣労働」無料電話相談に過去最多の828件
記者の目:引きこもり問題と派遣切り社会は連関 市川明代
近事片々:派遣村