前回に引続いてナイフのハンドル材について考えてみる。ナイフの思い入れを強くするのがハンドル材だが、ナイフにどんな素材でもハンドル材として付けて良い訳ではない。幾ら美しくても脆かったり、ナイフを錆びさせてしまう素材は避けなければならない。
その他にも男の道具としてのナイフには付けてはならないタブーのハンドル材もある。その典型がマザーオブパール、真珠貝である。「いいか、義人。マザーオブパールをナイフハンドルには決して使ってはいけないぞ。」いつの頃だったかは忘れたが師匠のラブレスにこう言われた。真珠貝だけなのか、全ての貝に当てはまるのかは聞き漏らしたが理由はパールが「女性器の象徴」で、ナイフハンドルに使うなど「もってのほか」のことだそうだ。確かにパールハンドルのラブレスナイフは私の知る限り一本もない。またこの種のタブーは何もナイフに限ったことでもない。
第2次世界大戦のアメリカ陸軍の英雄、パットン将軍は象牙のハンドルにアメリカ合衆国の象徴の白頭鷲をレリーフしたコルト45を愛用し、戦場に行く時はいつも身につけていた。その象牙ハンドルの素材をパールと勘違いしたある新聞記者に「パットン将軍はパールハンドルに白頭鷲をレリーフしたコルト45を愛用している」と書かれたことを知り、将軍はこういったそうである。
「パールのグリップのガンを持つヤツはニューオーリンズのポン引きだけだ」
師匠ラブレスにこのタブーを教えられた時、私は数十本のパールハンドルのナイフを作った後だった。パットン将軍やラブレスの考えは古典的で今はそんなことを言う人間はいないかもしれない。しかしカスタムナイフはアメリカが発祥で、我々は所詮それを真似ているのだから、タブーを良く心得ないと思わぬ恥をかくことになる。
2008年08月19日 15:34
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