話題

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

eye:世界最大の船舶解体エリア・バングラデシュのベンガル湾

 ◇リサイクルの裏、隠れた危険労働--13歳の少年も

 バングラデシュの東部にある第2の都市・チッタゴン市。その北部に位置するバティアリ地区のベンガル湾岸は、約5キロにわたり約50隻の廃船が並び、約3万人が働く世界最大の船舶解体エリアだ。毎日新聞はこのほど、解体場内に入った。地球規模の「リサイクル社会」の陰にあたる危険労働の現場を報告する。

 作業は徹底した人海戦術で行われる。まず、満潮時に船体を一気に岸近くまで乗り上げさせ、干潮時に作業を開始。ガスバーナーで船体を細かく切断し、材質ごとに分け、次々とトラックに積み込んでいく。場内は鉄板や部品が散乱し、重油のにおいがきつく、黒煙も上がる。解体中の船内は油で滑りやすく、転落や部材落下の危険が常に伴う。バーナーによる引火で爆発の不安も絶えない。労働者の多くがサンダルか裸足で、マスク姿はほとんど見あたらない。ある少年労働者に年齢を聞くと「13歳」と答えた。

 問題だらけの現場だが、安易に閉鎖などはできない。鉱山に乏しいバングラデシュにとって、解体品は貴重な資源であり、雇用面でも欠かせない存在だからだ。当然、閉鎖は世界規模の船舶リサイクルの仕組みをも破綻(はたん)させ、海運国・日本にとっては人ごとではない。<写真・森田剛史/文・福田隆>

 ■南アジアで盛んな世界の船舶解体■

 船舶は9割以上が再生可能な「リサイクルの優等生」と言われる。日本造船工業会の資料によると、07年の解体実績(100トン以上)は427隻(計415万3000トン)。国別にみるとバングラデシュ44%、インド32%、パキスタン9%の順だ。南アジアで盛んだが、ほとんどが浜辺で露天のまま解体する「ビーチング方式」をとっている。

 しかし、この方法では重油流出による環境汚染を招くほか、転落や部材の落下、爆発事故などによる危険労働も深刻で、特に欧州を中心に批判の声が上がっている。市民団体の推計では、バングラデシュで過去30年間に少なくとも1000人が死亡、多数の負傷者が出ていると報告されている。

 この事態に対して、日本など海運国側の責任を問う声も強く、国際海事機関(IMO、本部・ロンドン)は現在、日本政府の主導で、安全労働や環境汚染防止を定めた「シップリサイクル条約」の制定作業を急いでいる。

毎日新聞 2009年3月5日 東京夕刊

検索:

関連記事

話題 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報