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特集:親を亡くした子、支えよう 来月10日、東京で「真心おたがい様コンサート」

 ◇総合プロデュース、宇崎・阿木夫妻

 交通遺児などの子どもたちを支援しようと、4月10日に東京・渋谷の「Bunkamuraオーチャードホール」でチャリティーイベント「真心おたがい様コンサート」が開かれる。趣旨に賛同した音楽家の宇崎竜童さんと作詞家の阿木燿子さん夫妻の総合プロデュース。120人ものキャストによる音楽と踊りが楽しめるユニークなイベントとして注目されそうだ。

 コンサートは、これまで小児がんの子どもたちなどを支援する取り組みを行ってきた毎日新聞社がサポートしている。

 交通事故、自殺などによる遺児は全国に約50万人いるとされ、その家庭の平均年収は130万円余りとも言われる。各種団体が奨学金制度を創設するなどの支援を行っているが、その環境は整っているとはいえない。遺児の中には、家計への負担を考えて進学をあきらめたり、十分な教育の機会がない子どもたちも多い。

 そうした状況を知った宇崎竜童・阿木燿子夫妻が「交通事故は、いつ加害者になるかもしれないし、いつ被害者になるか分からないものですよね。日々流れる悲しい事故のニュースを見るにつけ、人ごととは思えません」と、チャリティーコンサートへの協力を買って出た。宇崎さんが話す。

 「音楽の世界に携わるようになって35年。60歳を過ぎ、世の中に何かお返しをできないか、と考えていました」

 夫妻に話が舞い込んだのは昨年10月。阿木さんが当時を、こう振り返る。

 「正直言って、準備期間が短いな、と。でも、交通安全運動(4月6~15日)期間中でもあるし、夫と一緒だったらお互いに相談しながらやれますし。それにオーチャードホールは、こういう志の高いイベントの場にふさわしいと思ったので、お引き受けしました」

 ◇2部構成、年代超え楽しめる

 コンサートは宇崎さんがプロデューサー、阿木さんが構成・演出を担当するが、気になるのは、その中身である。内容を詳しく聞くと、阿木さんが「準備期間が短い」と言うのも分かるような壮大なものなのだ。

 交通遺児たちが招待されることを念頭に、2部構成の心温まるものとなっているのが特徴といえる。

 1部は歌手の由紀さおりさんとバイオリニストの寺井尚子さんらをゲストに、夫妻がプロデュースしているアマチュアコーラスグループ「ひふみレインボー」とのコラボレーションが実現した。

 由紀さんがスキャットや童謡を歌ったり、寺井さんのバイオリン演奏やコーラスで、プロとアマの垣根を越えた心洗われるようなステージが繰り広げられるという。

 第2部はガラリと趣向を変え、ダンスの要素が加わった華やかなステージに。ベリーダンスとフラメンコの火花が散るような競演が見もの。

 阿木さんが、こう説明する。

 「1部がアットホームな感じで、演奏を楽しんでいただくとしたら、2部は踊りの要素を存分に入れて、視覚に訴えるものにしたいなと。若い人からお年寄りまで、楽しめるものを考えています」

 ご存じの通り、ベリーダンスはアラブの踊りで、フラメンコはスペインの踊りだ。そこにサックス奏者の近藤和彦さんのジャズ演奏が加わり、エキゾチックで華麗な舞台は、音楽と踊りを通じて世界旅行をしているような感覚にとらわれることだろう。

 今回のイベントについて、宇崎さんは、こんな話をする。

 「チャリティーコンサートは、趣旨がきちんと伝わらないと半端なものになってしまいます。今回は、僕たちから直接思いを伝えて賛同してくださった方が参加してくれました。それだけに、2時間のコンサートはハッピーで、温かいものになると確信しています」

 また、阿木さんは、こうも付け加える。

 「ハートフルなミュージシャンや踊り手が一堂に会すイベントです。お互いがしのぎを削りながらもスクラムを組んで、お客様に最高のものをお見せしたいと張り切ってくれています。そうした緊張感のあるステージが見られるかと思うと、今からワクワク、ドキドキしてきます」

 ◇シンボルマークはハート--音と踊りの魔法の絨毯

 イベントのキーワードは「真心 おたがい様」。サブタイトルとして「こえ、かけあおう・てをつなごう~キャスト120名が織り成す音と踊りの魔法の絨毯(じゅうたん)」と銘打っている。その意味するところは「この世は持ちつ持たれつ、お互いさま」ということになろう。アーティストの平尾徹さんが描くハートも、コンサートを彩る。宇崎・阿木夫妻は、今回のイベントについて、口をそろえて言う。

 「人は一人では生きていけません。みんなで手を携えていくことで、もう少し住みやすい世の中になるのではないでしょうか。日本はボランティア精神やチャリティーが根付きにくいといわれていますが、音楽や踊りを通したイベントで、その垣根を少しでも低くできたらいいなと思っています」

 プロとアマの音楽家の競演に、アラビックとスパニッシュの踊り……。120人のキャストで織り成すステージは、まさにさまざまな模様が交じり合った絨毯のようにも思え、ステージと観客が一体となった感動的なコンサートになりそうだ。

 なお、収益の一部は毎日新聞東京社会事業団に寄託され、交通遺児などの支援などに活用される。また、防災・防犯・交通安全に関する多彩な事業を通じて安心・安全な街づくりに取り組んでいる「だいじょうぶ」キャンペーンの一環としても位置づけ、交通事故撲滅活動に役立てていく。

 ◇歌を通じて言葉の力伝えたい--歌手・由紀さおりさん

 人と人をつなぐ大きな力。それは言葉です。歌は、言葉がメロディーとともにつづられ、より大きな力を持っています。そして、日本の歌には、人と人とのあたたかいつながりを思い出させる力があります。だから私は、歌を通じて、言葉の力を、人への思いを伝えていきたいと思っています。このコンサートでは、そんな思いを伝えられたらうれしいです。

 ◇勇気を持って一日一日を大切に--アーティスト・平尾徹さん

 毎日、寝る前に「その日のハート」を描きはじめて9年になります。一日を振り返って、いろいろな思いをハートに込めて描いています。

 できるだけ楽しかったことを思い出しながら描きますが、そんな日ばかりじゃありません。描き続けるうちに、自分を素直にとらえることが大切なんだと気がつきました。カッコイイハートもあれば、泣き虫のハートもあります。

 人が生きていく中、いろんなことがあるかもしれないけれど、希望を持って勇気を持って、一日一日を大切にしてほしい、そこにはきっとそれぞれのハートが誕生していくんだと思います。

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 ♪コンサート開催概要

 《プロデュース》

 宇崎竜童、阿木燿子

 《出演》

 由紀さおり、寺井尚子、横田明紀男(Fried Pride)、近藤和彦、鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団、青木香葉&シャイニーベリーダンサーズ、三原ミユキ、ひふみレインボー、MAISA、阿木燿子、宇崎竜童ほか(予定)

 《日時》

 2009年4月10日(金)開場=18時30分/開演=19時

 《会場》

 Bunkamuraオーチャードホール

 《料金》

 S席7000円▽A席6000円▽B席5000円(税込み、全席指定)

 《予約・問い合わせ》

 キャピタルヴィレッジ 電話 03・3478・9999

 《チケット取り扱いプレイガイド》

 ▽Bunkamuraチケットセンター(03・3477・9999)

 ▽チケットぴあ(0570・02・9999/Pコード315-234)

 ▽ローソンチケット(0570・084・003/Lコード73246)

 ▽イープラス(http://eplus.jp)

 ▽CNプレイガイド(0570・08・9999)

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 ■人物略歴

 ◇うざき・りゅうどう

 1973年に「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」を結成しデビュー。作曲家として、山口百恵さんをはじめ多数のアーティストに楽曲を提供、最近ではジェロさんに「海雪」を提供している。アーティストのプロデュース、自身のライブ活動のほか、映画・舞台音楽の制作、俳優等、幅広く活動中。

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 ■人物略歴

 ◇あき・ようこ

 宇崎竜童さんと結婚後、「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」の「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家としてデビュー。宇崎さんとともに山口百恵さんの黄金時代を支えた。近年は近松門左衛門の「曽根崎心中」とフラメンコを融合させた作品「フラメンコ曽根崎心中」をプロデュースし、上演を重ねている。5月16、17日、熊本県・八千代座で上演予定。

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 ■人物略歴

 ◇ひらお・とおる

 アーティスト、アートディレクター、エディトリアルデザイナー、グラフィックデザイナー、イラストレーター、「366日ハート本」著者

 http://pub.ne.jp/tohru/

毎日新聞 2009年3月5日 東京朝刊

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