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【八百長判決 要旨(4)完】“世紀の一番”に関する取材「誠に不十分」 (2/2ページ)
講談社らは、大相撲の八百長についての雑誌記事や新聞記事を指摘するが、いずれも根拠の十分な資料とはいえない。そもそも本件記事で摘示された事実に直接関係しないものであり、これらをもって本件記事の摘示事実が真実であると信じるのに相当の理由になるものとは到底いえない。
ジャーナリストの武田頼政氏は長年取材し信頼関係のあった藤田憲子氏から具体的で詳細な発言を得たと感じたことから、信用性が高いものと考え、その発言内容について、ていねいな裏付け取材をする必要はないと判断。また、八百長をしたとされる当事者である北の湖前理事長を取材するまでもないと判断し、本件記事を作成するに至った。
しかし、本件取組は、いわゆる「世紀の一番」ともいわれるほど著名な取組であった。北の湖前理事長が、週刊誌発行当時の相撲協会の理事長であることも考えると、本件記事が、それを目にする者にセンセーショナルな衝撃を与え、北の湖前理事長および相撲協会の社会的評価を著しく損なうことになることは、明らかに予想されたというべきである。
それにもかかわらず、武田氏は本件記事で摘示される具体的事実については、その根拠となる発言などについて、ほとんどといってよいほど裏付け取材をすることはなかった。また、北の湖前理事長への取材が容易であるにもかかわらず、その機会をもたないまま本件記事を作成したものである。本件記事に関する取材は誠に不十分というほかなく、講談社らには、本件記事の摘示事実が真実であると信じるについて相当の理由があるとは到底いえない。
本件記事は、北の湖前理事長らの名誉を棄損するものであるから、講談社らは北の湖前理事長らに対し、不法行為責任を負うべきである。
損害の額
北の湖前理事長の損害の額700万円
相撲協会の損害の額700万円
弁護士費用
北の湖前理事長70万円
相撲協会70万円
本件記事により、北の湖前理事長らの社会的評価は著しく低下したものと推認される。その回復のためには、金銭の支払いのみでは必ずしも十分でないというべきである。北の湖前理事長らの名誉を回復するのに適当な処分として、講談社らに対し、本件記事が掲載された週刊現代に取り消し広告を1回掲載することを命じることが相当というべきである。
=(完)