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【八百長判決 要旨(2)】“藤田発言”と“板井証言”は「裏付け証拠なし」 (1/3ページ)
本件記事において示された事実が、その重要な部分において真実であることの証明があるか否か、または、それを真実と信じるについて相当の理由があるか否かについて、以下検討する。
講談社らは、平成17年6月ごろ、ジャーナリストの武田頼政氏が元大関貴ノ花の妻であった藤田憲子氏から、昭和50年春場所千秋楽の結びの一番や優勝決定戦が八百長であったことを聞いたと主張し、武田氏はこれに沿う供述をする。
武田氏の供述するところによると、武田氏は藤田氏からさまざまな話を聞ける関係にあったということであり、本件取組が八百長である旨の藤田氏の発言内容には一応の具体性があった。藤田氏自身にとっても有利とはいえない事実であることなどを考えると、藤田氏が話したとするところが、全く信用性がないとは直ちにはいえない。
しかし、武田氏の述べる藤田氏の発言は、八百長の合意が誰と誰との間で、どのように行われ、金銭の授受も結局は、どのようになされたのかなど、その具体的内容は必ずしも明らかでない。藤田発言は、遅れて祝勝会の会場に到着したところ、祝勝会はすでに終わっており、会場の大広間では貴ノ花がぽつんと1人でたばこをくゆらせていたというものであり、貴ノ花の初優勝の直後の様子としては不自然さを禁じ得ない。
さらに、「優勝おめでとうございます」との藤田氏のあいさつもそこそこに、貴ノ花は、北の湖・日本相撲協会前理事長(元横綱)に支払う八百長のための金銭である400万円を準備するように、その場で直ちに指示したというのも、やや唐突な感を免れないし、この額が当時の大関の1年間の給与に近い額であることも考えると、藤田発言はにわかには信じ難いものを含むというべきであるし、客観的裏付けも存在しない。