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国際結婚と子供の国籍

ここでは、日本人と外国人の間に生まれた子供が日本国籍を取得する場合と取得しない場合についてご説明します。日本国籍を取得しない場合については、どのような在留資格を申請できるかについてもご説明します。

1.出生による日本国籍の取得
  2.出生後の日本国籍の取得
  3.二重国籍となる場合
  4.外国籍の子供の在留資格
  5.結婚相手の子供(=連れ子)の在留資格

   

1.出生による日本国籍の取得

国籍法2条は、「出生の時に父または母が日本国民であるとき」に、その子は日本国籍を取得するとしています。このような方式を父母両系血統主義といいます。

父母両系血統主義の補足: 
 
 出生時の国籍取得制度としては、血統主義生地主義があります。血統主義とは、父または母が国籍を有すれば、その国の領土で生まれたか否かに関わりなく、その子に国籍を付与するものです。特に、父が当該国の国籍を有する場合のみに国籍を付与するものを父系血統主義といいます。そして、父または母のいずれか一方が当該国の国籍を有すれば、国籍を付与するものを父母両系血統主義といいます。 父系血統主義国にはインドネシア、イラン、エジプトなどがあります。父母両系血統主義国には、日本、韓国、中国、イタリア、ドイツ、フランスなどがあります。
  生地主義とは、父母の国籍に関わりなく、その国の領土内で生まれた子に国籍を付与するものです。生地主義は、アメリカ、カナダ、ブラジルなどで採用されています。もっとも生地主義国でも補完的に血統主義を採用し、一定の要件を満たす場合には外国で生まれた子に当該国籍を与える場合があります。

日本人と外国人の間に生まれた子供の国籍は、父親と母親のどちらが日本人であるか、また、その父親と母親が結婚しているか否かにより、以下のように異なります。ページ末尾にまとめのフロー図を掲載しています。
 

1)日本人父と外国人母が結婚している場合
 
   「出生の時に父が日本国民であるとき」とは、子供と父親の
  間に、法律上の親子関係が必要とされています。そして、
  父親と母親が結婚している場合には、両親と子供の間にも
  法律上の親子関係が認められます。このように婚姻してい
  る両親に生まれた子供を「嫡出子(ちゃくしゅつし)」

  いいます。したがって日本人父の嫡出子であれば、子供
  は日本国籍を取得
します。
 
2)日本人父と外国人母が結婚していない場合
 
    結婚していない両親の間に生まれた子供を「非嫡出子
  といいます。この場合、母親と子供の間には、母親の出産に
  より法律上も親子関係が認められます。 しかし、父親と
  非嫡出子については認知が必要となります。また、認知には
  子供が母親の胎内にあるときにする胎児認知(民法783
  条)と、生後に行なう認知(民法779条)があります。
   国籍法第2条は「出生の時に父が日本国民であるとき」と
  しています。そのため、出生後に認知してもこの要件を満た
  しません。出生前、つまり胎児認知をした場合にのみ、
  日本人父の非嫡出子も日本国籍を取得
します。
 
    例えば、日本人父が既婚者の場合、外国人母と結婚でき
  ません。二重結婚となってしまうからです。しかし、胎児認知
  をすることで、子供は日本国籍を取得します。その場合には
  さらに、母親も日本人の実子を扶養する「定住者」の在留資
  格を取得しうるというメリットがあります。
 
3)日本人母と外国人父の場合
 
    「出生の時に母が日本国民であるとき」とは、子供と母親
  の間に法律上の親子関係が必要とされていますが、母親の
  出産により当然に法律上も親子関係が認められます。その
  ため、日本人母の場合、「出生の時に母が日本国民である
  とき」という要件は常に満たされます。したがって、嫡出子か
  非嫡出子かは問わず、日本人母の子供は日本国籍を
  取得
します。

2.出生後の日本国籍の取得

出生により日本国籍を取得できない場合、つまり、日本人父の非嫡出子が胎児認知されない場合には、以下の2つの方法で日本国籍を取得できます。
 
1)準正(じゅんせい)による国籍取得
 
   準正とは、既に生まれた非嫡出子が、出生後の父母の
  婚姻により嫡出子の身分を与えられることをいいます。
  準正には、①父親が子供を認知した後に父母が婚姻する
  婚姻準正と、②婚姻後、父親が子供を認知する認知準正
  があります。つまり、以下の2つの場合です(民法789条)。
 
    ①出生(非嫡出子)→認知→父母の婚姻(婚姻準正)
    ②出生(非嫡出子)→父母の婚姻→認知(認知準正)
 
  非嫡出子が準正により嫡出子の身分を取得した場合、
  未成年の間に住所地の法務局に届出を行なうことで日本
  国籍を取得できます(国籍法3条、国籍法施行規則1条)。
  ただし、未成年の間の届出が必要です。準正が成立した
  時点が未成年であっても、成年(20歳)に達した後は、この
  国籍取得届けはできなくなります。注意が必要です。
   さらに、国籍取得の届出から1ヶ月以内に戸籍記載のため
 に、市町村への届出も必要です(戸籍法102条)。
 
2)帰化による国籍取得
 
   準正以外には、帰化により日本国籍を取得できます。
  特に、非嫡出子が出生後に認知された場合、婚姻がなく
  準正は成立しなくても、 帰化条件が緩和されます。つまり、
  生後認知の子供が日本に住所を有する場合には、以下の
  6条件(国籍法7条)のうち①②④が免除されます。 この
  緩和された条件での帰化を簡易帰化と言います。 詳しくは
  簡易帰化の「⑥日本国民の子」をご覧ください。

①引き続き5年以上日本に住所を有すること。
②20歳以上で本国法によって能力を有すること。
③素行が善良であること。
④生計の安定が見込めること。
⑤日本に帰化することで二重国籍とならないこと。
⑥日本政府を暴力で破壊しようとする思想のないこと。

以上をまとめると、以下のフロー図になります。 こちらをクリックすると、フロー図を別ウィンドウで開きます。上の説明と合わせてご覧になる場合にご利用ください。

日本人と外国人に生まれた子供と日本国籍

なお、注意すべきなのは、赤矢印のケースです。つまり、日本人父が非嫡出子を生後認知しただけでは、日本国籍を取得しません。生後認知に加えて準正か簡易帰化が必要となります。この点は、胎児認知では日本国籍を取得するのと比べて、生後認知に対して不合理な差別であるとして裁判でも争われました。平成14年11月22日の最高裁判決では不合理な差別ではないとされました。しかし、平成20年6月4日の最高裁判決では憲法違反と判断されたため、今後の法改正が期待されます。なお、この違憲判決概要判決文についてはブログでも説明していますので、よろしければご覧下さい。

以上を前提に、非嫡出子が日本国籍を取得しない場合の在留資格の取得については「4.在留資格の取得」で説明しますが、その前に次ページでは「3.二重国籍となる場合」を先にご説明します。