小沢一郎・民主党代表が4日の記者会見で、検察批判を続けたことについて、政府・与党だけでなく、一部野党からも批判の声が相次いだ。ただ、民主党内に浮上した小沢氏の進退問題と歩調を合わせ、自民党内でも「こっちも麻生太郎総裁(首相)を代えればいい」との声が聞こえる。民主党の敵失にもかかわらず、「麻生降ろし」の終わりが見えない。【三沢耕平、小山由宇】
河村建夫官房長官は4日の記者会見で、小沢氏の検察批判について「政権交代を標ぼうする野党第1党の代表として、国民に説明のつく言葉か」と批判。自民党の大島理森国対委員長も記者団に対し「確かな証拠でものを言うならまだしも、一方的に言うのは誠に遺憾」と強調した。
小沢氏の記者会見のうち、政府・与党は主に検察批判のくだりに絞って批判を続けた。西松建設OBが代表を務めた政治団体から献金を受けていたのは、小沢氏だけではない。山口俊一首相補佐官も4日、献金を受けていたことを明らかにしており、自民党内には「あまりはしゃぐと、飛び火する」(中堅)との警戒感が根強い。
自民党内に高まる小沢批判が、政権の求心力回復につながっていないことも、党執行部を悩ませている。武部勤改革実行本部長(元幹事長)は4日のTBS番組で、麻生首相の下での衆院解散・総選挙について「できない」と強調。4日夜、都内で中堅・若手の会合を開いた山本一太参院議員は記者団に対し「依然として、麻生政権の状況は極めて厳しい。不支持率8割の状況が解消されたとは思えない」と漏らした。
また、自民党の小野寺五典、菅原一秀両副幹事長ら、当選1~3回の衆院議員は4日、党本部で、新議連「自民党を刷新し、日本を再生する会(123の会)」を設立した。会独自の政策を次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に反映させるのが狙い。会合には71人が参加、選挙戦に向けた若手の危機感を改めて浮き彫りにした。
「自民党はこれから反転攻勢をしなきゃいけない。麻生首相を先頭に議論しながら、09年度予算案を早く上げて、景気が回復するよう頑張っていきたい」。08年度2次補正予算関連法の成立を踏まえ、河村長官は4日夜、都内のホテルで開かれた津島派のパーティーで、政府・自民の結束を訴えたが、反応は乏しかった。
「選挙応援に亀井静香代表代行に来てもらった。今度は自見(庄三郎政審会長)さんを貸してもらう」--。4日、国会内で開かれた社民、国民新両党の定期政策協議。社民党の阿部知子政審会長の応援要請に、自見氏は「どういたしまして」と笑顔で応じた。協議では郵政民営化見直しの具体策で一致するなど、両党の友好関係をアピールした。
しかし、小沢氏に対する両党の反応は対照的。国民新党の亀井氏は4日、国会内で「摩訶(まか)不思議な捜査が始まっている」と述べ、小沢氏の「検察批判」に同調した。一方、社民党の福島瑞穂党首は「政治とカネの問題に、厳しく対処していく」と強調したものの、小沢氏も検察当局も批判せず、「捜査の行方を見守る」と述べるにとどめた。
政策や理念の異なる野党各党をまとめ、国会内で「共闘」を維持してきたのは、小沢氏の指導力に負う部分が大きい。小沢氏を徹底追及すれば、衆院選に向けた協力関係にひびが入るが、追及の矛先を緩めれば、有権者から批判される。事態の行方次第では、衆院選後、民主党が視野に入れる社民、国民新両党との連立構想にも影響を与えかねない。
一方、共産党の志位和夫委員長は4日の記者会見で「国民に対する説明責任を果たしたとは到底言えない。ああいう開き直りの態度は政党の党首たるべき姿ではない」と小沢氏を切って捨てた。
毎日新聞 2009年3月4日 21時59分(最終更新 3月5日 1時43分)