NHKの番組でロシアの金融危機が紹介された。欧米からの潤沢な資金で積極的に投資していた民間企業が、世界的な金融梗塞(こうそく)で次々に破綻(はたん)。その中で有望な企業を選んで国の資金で救済することとし、そのリストをプーチンリストと呼んでいる。背景には石油や天然ガス企業の再国有化があり、資源価格の高騰で膨大な富を蓄積し、十分な投資余力もある。そういう国家主義的資本主義が成功しかかっているのは象徴的だ。
ベルリンの壁と共に、資本主義に対してチェック機能をもっていた社会主義が衰退し、歯止めを失った資本主義の暴走が始まった。今は米国の金融破綻、世界同時不況で急ブレーキがかかっている。シティグループが国の資金で救済され、国有化に近い状態になると共に、GMも国が救済せねば破綻する。それは、資本主義における民と公、あるいは民と国のバランスが転機に来たことを意味している。
そのように国に救済してもらわなければ成り立たない「市場経済」の欧米に対比すれば、日本の資本主義ははるかに健全と言える。先にバブルを体験したこともあり、元々社会主義的資本主義とも言われたように、日本の資本主義は社会的な利益や公平感に配慮してきた風土もあったからだろう。世界同時不況からの脱却や、その後の新しい軌道のつくり方において、日本は強欲資本主義のあかを落としながら、その特徴を生かせば今後の世界にとって大切なモデルになる可能性がある。
政局もよいが、日本の政治はそうした日本の経済や経営の長所や可能性がもっと発揮できるように、自信をもって国としての目標やそこへのステップづくりにエネルギーを注ぐ必要があろう。(瞬)