教科書:李泰鎮氏「歴史学界の責任を痛感」(上)
定年退任した歴史学界の元老・李泰鎮教授、自省の「苦言」
階級史観を身に付けた弟子たちを送り出したことを後悔、学界が国民の信頼を失い心配
歴史の重みを感じられないから、理念に振り回されるばかり…
27日にソウル大国史学科を定年退任した李泰鎮(イ・テジン)教授(66)=写真=の顔には、切なさが強く浮かんで見えた。李教授は、歴史関連の各学会が昨年10月、左派寄りの韓国近・現代史教科書を修正するという政府の方針を批判する声明を出したことと関連し、「学界に対する韓国国民の信頼を落としたようで心配だ。結果的に、左派寄り教科書の肩を持つことになった。教育は、学会の意見集約を通じてなされるものではない。国民の常識から外れない教育をしなければならない」と語った。
―歴史学界内部では、韓国近・現代史教科書における現代史の記述の問題点について、自省の動きがほとんどなかった。
「歴史学界の責任回避ということができる。わたしもそこから自由ではないが…。統一を優先する386世代(1990年代に30代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)の歴史観にあえて手をつけることができなかったのでは、と思う」
―歴史学者にとって必須の徳目の一つはバランス感覚だが、なぜ学界内でこの問題が公式に取り上げられなかったのか。
「1980年代に大学へ通った人々が、今では教授となっており、歴史関連学界の役員として活動している。現代史を、依然として民衆や階級中心の左派的歴史観で見ていることが問題だ。既に有効性を失ったと結論が出ているのに…。彼らは、歴史学をあまりにも政治化した。全教組(全国教職員労働組合)の歴史観が、政治化した歴史学の代表例だ。学者は、そんな視角を警戒しなければならない。近代史でも民衆蜂起ばかりを取り上げ、大韓帝国の改革運動は無視した。学生運動の洗礼を受けた386世代の歴史観は、金星社の近・現代史教科書と近い」
―韓国近・現代史教科書を検討してみたか。
「金星社の教科書における現代史の記述は、教科書として守るべき一線を越えた。どういう形式の統一かは問うことなく、統一のみを最優先課題として提示している。特定の事件について、専門家でも判断しづらい内容を、生徒たちに自分で判断せよと言っている。南北二つの国家として存在している状況で、大韓民国の教科書としてはふさわしくない。教育部でこの教科書に対する意見を尋ねると、文言の修正は別に意味がないと言っていた。大韓民国の歴史教科書を根本的に書き直さなければならない」
李教授は、『高宗時代の再照明』などの著書を通じ高宗と大韓帝国の改革の努力を積極的に評価する研究を発表し、論争を主導してきた。高宗が進めた中央銀行設立などの改革がまだ成果を出す前に、日本が1904年に日露戦争を起こし、朝鮮の近代化を踏みにじった、というわけだ。しかし、「高宗の改革の努力が正確にどの程度成果を挙げたか、客観的に検証してみる必要がある」と、一歩距離を置いた。
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