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社説1 成長力高める追加対策を大胆に進めよ(3/5)

 定額給付金や高速道路料金引き下げなどの財源を確保する2008年度の第2次補正予算関連法が4日成立した。麻生政権は昨年10月にこうした施策を盛り込んだ「生活対策」を決めたが、ようやく実施に移されることになる。

 日本経済は戦後最悪の不況に直面しつつある。輸出の激減を背景とした需要の急速な縮小は日本企業を直撃し、雇用不安も高めている。09年度の需要不足は20兆円を超す公算がある。景気悪化に歯止めをかけるため、政府は大胆で実効性のある追加対策を迅速に打ち出すべきだ。

 緊急に取り組む必要があるのは企業の資金繰り対策と雇用対策だ。

 売り上げの急減や金融機関の貸し渋りを背景に、中堅・中小を中心に資金繰りに苦しむ企業が急増している。緊急信用保証制度の対象拡大や政府系金融機関の危機対応融資、日銀による企業支援のための資金供給策の拡充などを組み合わせて、資金繰り難の解消に役立てるべきだ。

 雇用対策も、景気回復までの期間限定で思い切って拡充する必要がある。解雇抑制のための雇用調整助成金制度の強化に加え、失業者などを対象に職業訓練や生活支援費を賄う就労支援制度の創設も検討すべきだ。雇用を維持・創出することは需要の押し上げにも貢献する。

 そのうえで、中長期的な成長の礎になるような大胆な需要刺激策も求められる。世界的に低炭素社会に向けた大転換が進み始めており、それに伴う潜在的な需要は甚大だ。需要の呼び水効果が大きいものを中心に様々な施策を打ち出したらいい。

 例えば、電気自動車の普及促進へ向けて税制面の支援を強化したり、公用車の購入を増やしたりすることも検討対象になる。公共投資は公共施設の断熱化など省エネやエネルギー転換につながる施策を優先する。

 太陽光発電の普及には余った電力を電力会社が買い取る価格を思い切って高くするやり方もある。財政支出、税制、規制をうまく活用しながら、効果的に需要を呼び起こす策を工夫すべきだ。

 医療、介護、農業など将来性や生産性の拡大余地が大きい分野の潜在需要を規制改革などを通じて掘り起こすのも、内需の成長力を高めることにつながる。

 2月に開いた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、各国が協調して迅速な内需刺激策を取ることを促した。政治の混迷を無策の言い訳にすることはできない。日本は世界景気の回復に向けて一定の役割を果たす責務がある。

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