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社説:小沢氏記者会見 これでは国民は納得しない

 準大手ゼネコン・西松建設の裏金事件に絡み、公設第1秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕された小沢一郎・民主党代表が4日、記者会見した。小沢氏は「何らやましい点はない」と容疑を全面否定、東京地検による捜査を強く批判し、自らの代表辞任についても否定した。

 捜査当局との全面対決となった小沢氏だが、多額の政治献金の背景について「せんさくしない」と語るなど説明は説得力を欠き、疑惑を払しょくしたとは言えない。政権の担い手を目指す民主党にとって、危機管理能力が試される極めて重大な局面である。

 小沢氏秘書は西松建設から2100万円の献金を受けながら同社OBを代表とする二つの政治団体からの献金を装い、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたとの容疑で逮捕された。

 小沢氏が会見で強調したのは捜査手法への批判と、献金は適法との主張だ。「衆院選が取りざたされる時期に非常に不公正な国家権力、検察権力の行使だ。民主主義を大変危うくする」との表現まで使い、恣意(しい)的捜査だと批判した。秘書に確認したところ西松からの献金との認識はなく、政治団体からの献金として処理したと説明した。

 秘書逮捕を踏まえ小沢氏が会見し説明したのは当然だが、この内容では納得できない。「2100万円の献金を受けた背景は調べないのか」と問われ「一般的に献金について、どういうところから出ているかはせんさくしない」と答えた。小口献金ならともかく、金額の多さを考えた場合、あまりに不自然ではないか。献金を受領した経緯について小沢氏側はより、詳細に説明する責任がある。

 また、小沢氏は「この種の問題で今まで、逮捕、強制捜査をした例は全くなかったと思う」とも語った。確かに企業献金か政治団体献金かの認識をめぐる容疑での強制捜査は異例だが、政治資金収支報告書への虚偽記入をめぐっては03年に自民党の坂井隆憲衆院議員(当時)や秘書が逮捕されたケースなどもある。あくまで十分な容疑があるとの前提だが、単に衆院選前だからといって捜査を不公正と断じるにはあたるまい。

 「結果的にゼネコンから非常に多額の資金が出た」と問われ、「献金はどこから受けても構わない」と強調したが、違和感をぬぐえない。自民党政治との決別を掲げる小沢氏が秘書とはいえゼネコンとの関係で疑惑の渦中に身を置くこと自体、深刻だ。その認識が、どこか希薄ではないか。

 小沢氏の対決路線を民主党は了承した。仮に捜査過程で小沢氏の主張が覆れば、同氏のみならず党が被る打撃ははかりしれないものとなろう。衆院選を控えどう、事態を収拾するか。自浄能力を発揮できなくては、国民の政治不信を強めるばかりである。

毎日新聞 2009年3月5日 東京朝刊

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