多くの仏像に一体何を祈っていたのだろう。京都の建仁寺から「木造十一面観音座像」を盗んだ疑いで逮捕された男の自宅から二十一体もの仏像が見つかった。
男は「信仰心で持ち帰った」と供述、他の寺からも何体か盗んだことを認めているという。仏像の前に果物などを供え、「毎日拝んでいた」というが、盗んだ仏像から御利益を得ようとは。
このところ、世界の競売が話題を呼んでいる。価格もさることながら、海外に流出した貴重な品の奪回への動きだ。先月は、第二次アヘン戦争の際に英仏連合軍が中国から略奪した動物のブロンズ像がパリの競売に掛けられ、中国側との間で物議を醸した。
近くニューヨークで行われる競売に気をもんでいるのがインド政府。「建国の父」ガンジーの眼鏡や懐中時計など海外にある愛用の品々が出されるからだ。関係者への協力依頼や、海外に住む裕福なインド人に競り落として、寄付してもらう戦略を描くなど、取り戻しに必死だ。
一度、手元を離れると元に戻すのは容易ではない。やはり、先人が残した貴重な財産は、その国、その場所にあってこそ輝く。
今回の事件以外にも仏像の盗難被害は相次いでいる。闇の市場から流出すれば取り返しがつかない。「悔い改め、正しい道を」。犯人たちへ仏の声がする。