雇用情勢の急速な悪化に伴い、生活保護の申請件数が急増している。共同通信社の調査によると、全国十七の政令指定都市が今年一月に受け付けた申請件数は計八千五百九十件と、一年前に比べ54%も増えたことが分かった。底が見えない世界不況が国民生活に深刻な打撃を与えている表れといえよう。
生活保護は、国が定める最低生活費より収入が少ない世帯に差額分を支給する制度だ。受給者はバブル崩壊後の一九九五年から増え続け、昨年十二月時点で百六十万人を超えた。
申請が最も多かったのは大阪市の二千百四十三件。増加率が最も高かったのは名古屋市の152%(千七十四件)で、トヨタ自動車の関連企業などで多くの労働者が失業したことが響いたとみられる。マツダの工場がある広島市も73%増(三百五十八件)と高かった。
岡山県内でも全十五市の申請件数が三百件に上り、前年同月比で百二十八件増となったことが山陽新聞社の取材で分かった。水島コンビナートを抱える倉敷市が百二件(117%増)と増加が目立ち、自動車など製造業を中心とした人員削減の影響が浮き彫りされた形だ。
申請が急増しているのは、非正規労働者が失業しても失業給付を受けられず、いきなり「最後の安全網」である生活保護にたどり着くケースが相次いでいるためだ。背景には、雇用保険が十分機能していないことが挙げられよう。
雇用保険に加入するには、週二十時間以上働き、一年以上の雇用が見込まれることが条件となっている。厚生労働省の試算では、約千七百万人の非正規労働者のうち最大で一千万人が未加入の可能性があるという。
政府は今国会に、雇用見込み期間を「六カ月以上」に緩和する雇用保険法改正案を提出しているが、それでも新たに適用対象となるのは百四十八万人程度にとどまるとみられる。
厚労省は、企業の人員削減で昨年十月から今年三月までに職を失ったり、失う見通しの非正規労働者が約十五万八千人に上ると発表した。今後も雇用のさらなる悪化は避けられない見通しだ。危機的状況に備え、非正規労働者を中心とした雇用の安全網拡充が急務といえよう。
国や自治体にとって、生活保護の急増は重い負担となる。当面の生活を保障した上で、受給者が新たな仕事に就けるよう、就労あっせんや職業訓練などきめ細かな自立支援策を強化することが求められる。
循環型社会構築の一環で、菜の花の燃料化を目指す官民連携組織が岡山県で発足した。コスト面で実用化は困難視されるが、地道に取り組めば、菜の花畑が各地に広がる懐かしい風景が復活するかもしれない。
組織の名称は「岡山県菜の花プロジェクト推進協議会」である。県農協中央会が中心となり、商工業、行政など三十の団体が加盟した。
菜の花プロジェクトは十年ほど前に滋賀県で始まった。まず菜の花から菜種油を搾り学校給食や家庭で使用する。その廃油を回収してバイオディーゼル燃料に精製し、農機具や車の燃料として活用するという図式だ。
効果はいろいろ考えられる。生物資源であるため地球温暖化の防止につながる。食用に使うのでトウモロコシのように食料の需給に影響を与えない。遊休農地の活用や景観の美化にも役立つといわれる。
プロジェクトは全国的に広まり、岡山県でも岡山、倉敷市などの一部地域で取り組んでいる。ただ、まだ点としての動きにとどまっており、今回の官民連携で全県的に対応しようという試みは意義があろう。
県農協中央会の呼び掛けで、昨秋から各地の農協女性部員らが計四・三ヘクタールで菜の花を栽培している。今夏に搾油して学校給食センターなどの協力を得て回収する。今秋は栽培面積を十ヘクタール程度に広げる方針という。
最大の課題はコストである。栽培や回収の現状はボランティア的要素が強く、人件費を考慮するとほとんど合わないとされる。ポイントは当面の採算は度外視し、栽培を拡大しつつ効率的な回収システムを構築してコストダウンを図ることだ。初期投資には行政の支援も欠かせまい。官民が知恵を出し合い、粘り強く取り組む必要がある。
(2009年3月4日掲載)