WBC日本代表の最大の不安材料となっているイチロー外野手(35)=マリナーズ=の不振。打てるはずの球がヒットゾーンに飛ばず、ムキになって早打ちするからさらに凡打が続く悪循環に陥っている。どんなに不調になっても、絶対に好球必打の積極姿勢を変えないのがイチローのスタイルだが、調子が悪いなら、ここは日の丸のために一歩譲って四球を選ぶ方策もあるはずだ。
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イチローは2日夜はレイズ・岩村が音頭を取って都内のしゃぶしゃぶ店で開催された野手の決起集会に参加。「普通に盛り上がっていましたよ」(某選手)と気分転換もできたか、明けて3日は前日に続いて早出で打撃練習を行い、打撃改善に取り組んだ。
5日に開幕するWBCでは1番打者として、何より塁に出ることが求められるが、強化試合では当たりが止まっただけでなく、同時に四球もない。普通なら空振りしてしまいそうな低めの変化球や、ボール気味の高めの球に手を出し、技術が高いゆえの凡打もある。相手投手が最大限の警戒をしているだけに、見送れば四球だった打席もあったが、練習段階とあってイチローにそんな気配は微塵もなかった。
打ちやすい球を選んでいるうちに結果的に四球になることはあるが、「四球なんてつまらない。どうせ一塁に行くのなら、打っていく」と常々話している好打者の辞書には、四球という言葉は基本的にない。
普通なら一流の打者でさえ、調子が悪くなれば消極的になる。無理に打って出ず、投手に球数を投げさせながら四球を含めて出塁のチャンスをうかがうのは有効な作戦だ。しかし、それをしないのがイチローたるゆえんで、調子が悪くなっても頑なに打っていく。
調子の悪い打者がこんなことをしたら大変なことになるが、イチローの場合はそのうちに調子を取り戻すのがすごい。逆療法のように早打ちを続け、気がつけば積極性で不調を埋め尽くすようにマルチ安打試合を連続。いつの間にかいつもの安打製造機に戻っていく。
【「一流の安打製造機」の証し】
しかし、ものには限度がある。周囲から理解を得られなければ、続けられない手法であることも確かだ。このイチロー式積極打法は、最下位が定位置となったマリナーズでは徐々に強い批判を浴びるようになっている。
地元メディアからは、「状況を考えた打撃をするよりも、自分の安打記録を優先している。イチローにはもっと勝利のために貢献する打撃ができる」など、イチローの能力が高いからこその批判も。ハーグローブ監督時代には、「もう少し球を選んでほしい」という監督の意向を全く意に介さず、イチローは自分の打撃を押し通した。
イチローの昨季の四球数は51で1番打者としては決して多くない。打率も.310だが、出塁率は.361とこれも必ずしも高くない。いくら安打数が多くても、出塁率が低ければ意味がないという理屈で、スーパースターとなったイチローが抱えた最大の打撃の問題は四球数にある。
WBC開幕を目前に控え、打撃不振について聞かれたイチローは「おっと専門的な話になってきたな。野球とはそういうもの。それに打ち勝っていかないと壁を超えられない」と答え、あくまでも積極的な打撃を変えないことを表明している。
もし、イチローが不調時に四球選びに逃げるような打者だったら、世界一の安打製造機にはなれなかったかもしれない。しかし、四球があればさらにいやらしい打者ということは確実にいえる。もちろん、練習で凡打を繰り返しながら、WBC開幕にしっかり調子を合わせてくれるのなら、日本の野球ファンに異論はない。
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