小沢氏と政治献金/しっかり説明してほしい
小沢一郎民主党代表の公設第一秘書がきのう、政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。ゼネコンの西松建設関連の政治団体から違法な企業献金を受け取っていた疑いが持たれている。
容疑のその内容自体はそう目新しいものではない。まだこんなことが行われているのか。むしろそう思わせる。
しかし、映し出される事件の構図は十分、衝撃的だ。うんざりするぐらい古くさい政界工作のその中心に、政権奪取を目指す野党第一党の党首がいる。
小沢代表はきのう夕、党本部で幹部に「何の問題もない」と話したという。都内の事務所が家宅捜索を受け、秘書が逮捕されたのはその後。もっと詳しい説明が聞きたい。
政治資金規正法の仕組みにはすぐにはのみ込みにくいところがある。検察が抱いている疑いを踏まえた上で、きちんと反論してほしい。
自身には違法の認識が全くなく秘書の問題だというのであれば、それも説明の仕方としては成り立たなくはない。
もちろん、その場合には、次の政権を担うかもしれない立場に対して、秘書への管理責任が厳しく問われることになる。
西松建設側の政治団体は「新政治問題研究会」(新政研)と「未来産業研究会」(未来研)。逮捕された秘書の大久保隆規容疑者(47)は小沢代表の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で、捜索を受けたのは陸山会の事務所。
大久保容疑者の逮捕容疑は、2006年までの4年間に、実際は西松建設の資金だった2100万円を新政研と未来研からの献金として処理した疑い。
規正法は、政党か政党の政治資金団体以外への献金、つまり政治家個人への企業からの献金を禁止している。
新政研と未来研という二つの政治団体は、いったい西松建設とどういう関係にあったのか。そこが捜査のポイントだった。
東京地検が西松建設の強制捜査に着手したのは昨年6月。1月には海外から無届けで7000万円を持ち込んだ外為法違反容疑で前社長、元副社長らが次々に逮捕された。
捜査の過程で裏金作りと政界工作の疑いが浮かび、二つの政治団体の活動を西松建設OBが担っていたことが分かった。両団体は西松建設の課長級以上の社員から一口6万円の会費を募っていたとされる。
両団体からの献金は会社ぐるみの組織的な企業献金に当たり、大久保容疑者は十分事情を知っていた―。検察が逮捕に踏み切ったのは、そう判断したためだろう。
民主党内には動揺が広がっている。「国策捜査」とか「陰謀」といった言葉も飛び出しているようだ。小沢代表の当面の言動と併せて党幹部の動きにも注目したい。危機管理能力の一端が表れるからだ。
党代表がどう説明責任を果たすか。あるいは、どんなふうにしてその場をつくれるか。小沢民主党の体質をじっくり見極める機会でもある。