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2009/02/24

Mameya nackymade/アイウェアのオーダー②

 先日の眼鏡が完成したとのことで、Mameyaさんに取りに伺いました。 

  ただ、カメラを忘れるという失態を演じてしまったので、ごくごく簡単なご紹介のみのエントリーになります。中川さん、せっかく製作していただいたのに申し訳ありません。

 写真はHPから引っ張らせていただきました。

          ***

Mameya2
↑正面からの写真。スクェアなんですが、顔の形に合わせて角に丸みが与えられています。今までの主力のアイウェアであるボー・ソレイユ(フランス)のフレームと比べて、少し柔らかい印象になりますかね。本当にキレいに仕上げていただいて、感謝です。

061
↑(参考)今までの主力アイウエアのボー・ソレイユ(フランス)。こうして見てみてみると、改めてカッコイイですね。持ち主はこの際置いといて・・。

Mameya
↑はい、お見苦しいので縮小版で。眼鏡はいいけど持ち主が・・。似合う?似合ってるんでしょうかね?自分では何とも・・。てか、シャツのエリ直せよ!

 これだけかけててもなかなかわからないのですが、とにかくフィッティングが軽い!とてもプラフレームとは思えないぐらい。他の眼鏡をかけてからかけ変えると如実にわかります。しかもズレにくいし、本当にラクです。

062
↑この際ついでなので、ボー・ソレイユをかけた自宅における図。まあ、黒のスクエアというベースが一緒なので、それほど大きな差は感じられないかも知れませんが、どんなもんでしょう?そんなこと言いつつ、実は本人的には結構印象が変わると思ってるんですが。

・・これで当分眼鏡については極端な視力低下が起こらない限り欲しがらなくて済むな、と考えていたら、ボー・ソレイユのフィッティング調整に伺ったデコラさんで、アン・バレンタイン女史(フランス)のこれまた魅力的な黒のフレームに出会いまして、激しく心が揺れております。ったく、いっぺん死なな治らんわ、この物欲・・。

 中川さん、改めて本当にありがとうございました。

 しかし、自分の顔ってヤなもんです。

2009/02/01

Mameya nackymade/アイウェアのオーダー①

神戸市中央区磯辺通4丁目2-1 松屋ビル1F 
078(251)3211 水曜休

HPはこちら ☆カフェと併設ですが、このカフェのカレーが美味い・・らしいです(未食)。

059
 (私の知る限り、こんな店日本中探してもどこにもない!)

 2009年になってはや1ヶ月ですが、年明け早々良いお店との出会いがありました。

 スーツやシャツ、靴などにおいてオーダーの経験はあるのですが、まさか眼鏡をオーダーするなんて思いもよりませんでしたよ。

 眼鏡のオーダーというのはつまり、店主であるNackyこと中川直記さんと自分の持つイメージをもとにコミュニケーションをとった上で、1からパターンを起こし、フレームを樹脂から削り出して、そこにレンズを埋め込んで製作する、まさに世界にただ一つ自分だけのアイウェアを作り上げる作業になるわけです。

          ***

060
 店主で製作者の中川直記さん。腕のタトゥーを見て最初はちょこっとビビリましたけど、話してみると会話が弾む弾む。熱い職人さんです。

ー眼鏡のオーダーって、フレームもそうだし、検眼もあるし、レンズそのもののこともあるし、一人の職人さんがこなすのは大変そうなんですけど・・?

『そうですね、眼科医としての検眼や矯正の要素、眼鏡屋としてのフィッテイングやディレクションの要素、フレーム加工者である眼鏡工場の要素、さらには僕はパターンから起こしますからデザイナーとしての要素とかもう色々あって、キリがない(笑)。とにかく日々勉強です』。

 中川さんの写真をぜひしっかり見ていただきたいのですが、目のポジションがバッチリ眼鏡の中心にあるのがおわかりいただけますでしょうか?写真はいきなり撮らせていただいたので、撮影にあわせて眼鏡の位置を修正したわけではありません。このポジションが『決まって』かつ『維持できる』ことが、オーダーのフィッテイングの肝となります。

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055_3

↑フロントフレーム(リム)のサンプルとテンプルのサンプル。このサンプルから選ぶこともできるし、全くオリジナルなデザインをお願いすることもできます(その場合はデザイン料が別途かかります)。とにかく圧倒的!

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↑こんな風に樹脂からフレームを削り出します。

051
↑作業中の中川さん。会話のときと違って表情は真剣そのもの。

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↑削り出したフレームの細かい部分をさらに削り、磨き上げていきます。

050
↑これがオーダーシート。度数からフレームの形、色など必要事項を書き込んでいきます。

049_2
↑フレームの形状や色を決定します。中川さん曰く『検眼やサイズ計測よりもまず、フレームの色決めが一番先にきます』とのことでした

 私は黒のスクエアをということで、おそらくこの真ん中のサンプルに近い感じになろうかと思います。これをベースによりシャープなカンジのものということで。中川さんによると最終的には『ご本人の顔、服装、ライフスタイルなどを考慮してパターンを決めます』とのこと。そのため、顔写真を撮ります。

052
↑検眼は割愛して(HPに使用機械などについて掲載されていますので、興味のある方はぜひどうぞ)、顔サイズの計測器。これで顔の幅、耳までの奥行き、そしてノーズパッドの角度などを1mm単位で決定します。

           ***

 実はサイズ計測や検眼にかける時間はごく一部で、あとは雑談がほとんどを占めた訪問だったのです。おそらく、その雑談の中からお客さんの生活やら服装の好みやら、音楽の趣味やらその他の『内面』を推し量り、見た目の印象と合わせてフレームのパターンに反映させていくのでしょうね。

 『眼鏡産業って日本の場合、福井に集中してるんですよ。でも、僕はこの神戸の地で、神戸という土地を反映した眼鏡をつくりたいんです。眼鏡って実は土地柄が出るんですよ』。

 『もうひとつ、僕はお客さんのライフスタイルにかける眼鏡を作りたいんです』。

 そう仰る中川さんの姿に、ああ、ここにも自分の店で、自分のやりたいことを貫く職人さんがいるんだと=決して順風満帆な道のりではなかったでしょうが=強く応援したくなる気持ちと、ほんの少しの嫉妬が入れ混じった、複雑な感情が沸き起こってくるのでありました。

          ***

 お店を後にするときの彼の言葉が、今もずーっと通奏低音として頭にこびりついています。

『ありがとうございました。命懸けで作りますんで』。

 (完成品のレポはまた後日)

2009/01/23

大統領のネクタイ

Amr0901210315004n1
 ↑(産経ニュースより)
 しかし、いくら同盟国だとはいえ、よその国の国家元首の就任式になんだってこうもリソースを割くのかなー。

 政治は本来はこっちのブログのテーマじゃないんだけどなどと言いつつ、ついつい取り上げてしまうのですが、あのアメリカの熱狂ぶりに、逆に今のアメリカの大変さの裏返しみたいなものを感じてしまったりします。

 どっちかっていうと私は周囲が熱狂すればするほど自分に冷や水をぶっかける我ながら困った性格なもんで、今80%に届こうかというオバマ大統領の支持率を見ると、かえってあとの反動のほうが気になったりするのですが。

 CNNのキャスターでしたかの発した「これは大統領の就任式なのか、それとも国王の就任式(←戴冠式って言ってよ!)なのか?」とのコメントにむしろ同調します。いや、心情的にはオバマさんは好きな人なんだけど。

          ***

 さて、このブログとしての本題。

 私はオバマウオッチャーでは決してないのですが、それでも彼が公式の場に出てくるときは、青系のネクタイを締めることが多いのは知っています。青は知性を表す色で、ヨーロッパのエグゼクティブに好まれるそうですから、彼のイメージにはピッタリです。

 しかし、今回の就任式では赤系のネクタイでしたね。これは憶測ですが、赤のネクタイというのはアメリカのパワーエリートを象徴するアイテムで、ダークスーツに赤系のタイというのは歴代の大統領、例えば前ブッシュ大統領も好んでいた服装であって、いわばアメリカ合衆国そのものを表すアイテムだともいえるわけです。そしてオバマ大統領がそれを身につけることにより、自分と合衆国並びにその伝統とを結びつける意図を内外に発信した、とも考えられるわけです。

 そういえば、大統領就任が決定する前後からだったか、オバマ大統領はそれまで身につけていたカナーリなどのイタリア系スーツから、アメリカドメスティックの(おそらく)仕立てたスーツに変更したそうです。それも、合衆国大統領になる自分の立場を考えた故かもしれませんね。そのテーラーなり服屋にとっては何よりの宣伝でもあるし。

 男の服って、社会的な立場が上がれば上がるほど皆同じような服装になってきますが、そんな中でも独自のメッセージを載せることができる。その一例だと思います。

          *** 

 しかし、オバマ大統領のスピーチは本当に上手いですね。英語がロクにわからない私でもつい聞き惚れてしまいます。メインライターが27歳の青年と知ってまたビックリ!

2009/01/09

007とトム・フォード

Photo
007の最新作『慰めの報酬

 で、最近の007といえば、サヴィル・ロウを離れてブリオーニのスーツを身につけるのがお決まりだったのですが、今作においてはトム・フォードを纏います。

 トム・フォードといえばいわずと知れたグッチのクリエィティブ・ディレクターだったモードの世界では大物中の大物なわけですが、彼のスーツ観といえばこのインタヴュー記事によく現れていると思います。

 >サヴィル・ロウとイタリアのファッションブランドの中間点。私がグッチを辞めた時、自分がどこで服を買うべきかと考えました。私はクラシックなスタイルが好きですが、銀行員みたいな格好は嫌いです。ラルフ・ローレンはとても好きですが自分にはクラシックすぎます。アルマーニはイタリアンすぎますし、ドルチェ&ガッバーナやプラダも好きですが、私にはトレンドが多すぎます。そこの間がとても重要だと思いました。今のメンズウェアには、ハイクオリティーでかつカスタムメイドなものがありません。女性ならば、シャネルで上質な服を買えるし、クチュールを作る事も可能です。でも、男性にはそれがない。銀行員みたいなテーラーメイドは問題外。色、素材、スタイルを自分の好きなように作れるブランドを提供したいと考えています。<

 まあ、このコメントの中の『銀行員のようなテーラーメイドは問題外』というくだりには大いに異議があるのですが、彼が自身のスーツをクラシックとモードの中間点に置こうとしているところはよく伺えます。

 ちなみに、日本で買える彼のスーツは阪急百貨店のメンズ館で確かオーバー80万円!!!少し前の記憶なので、今は違うかも知れませんが、一体全体誰が買う???この世界的な大不況のさなか、さぞかし売りにくかろうと現場の方には同情します。

 このトムフォードブランドのスーツがどう受け入れられるのか、それともソッポを向かれるのか、映画とあわせて注目です。最も、トム自身は今はファッションより映画に関心を移しているというウワサも聞くのですが・・。

 ・・こう言いながらなんですが、私自身は既製ならばアットリーニやキートン、もっといえば仕立てのパニコやリヴェラーノ&リヴェラーノといった、土地の『テロワール』を感じさせる服のほうが好きなんですけどね。ま、どっちにしても買えないから関係ないんですけど。

          ***

 ところで、今のジェームス・ボンド役のダニエル・クレイグって、少なくともそのヌードスタイルはちょっと鍛えすぎてて、筋肉つきすぎてて、不自然な身体に見えるのは私だけ?

2008/12/16

ビッグ3

 ・・別に破綻確実といわれる米自動車会社はまーったく関係ありませぬ。しかし、自動車会社どころか、アメリカという国自体がデフォルト(債務不履行)の心配をされるようになるとは、おっそろしい時代になったもんです・・。

          ***

 この冬のCINQUE CLASSICOさんでの買い物から。写真もHPから拝借しました。

          ***

Photo
DENTS(デンツ)のペッカリーグローブ
 こういう革製品は長く着こなしてこそ味の出るもの・・だけど、私にとってグローブって長く使用するのがもんのすごーく難しいアイテム。今回の分も実は買いなおし(涙)。

 キャッチコピーとして、『はめたまま小銭が扱える』とのことだけど、残念ながらいくらなんでもそれはムリ!でも、まあ、フィッティングや質感にはさすがに文句のつけようがないので、長く大事に扱うつもり・・だけど、『長く使う』ためのハードル高いなあ・・。

Delta
DELTA(デルタ)のボールペン
 文具はもっぱらコンビニ専門だったけど、生涯始めての文具での大奮発。これもインクを入れ替えしながら長く使う予定・・そう、あくまで予定・・。

038
マリア・フランチェスコの傘
 これのみCINQUEさんのHPに写真がないので自分で撮影。でも、傘って撮るのが難しい上に、私の部屋はまったくもってオサレとは縁遠いので、せめてだいさんの絵の助けを借りて・・。

 傘って、今までに一回も差さずになくした経験が数回あるので、雨が降っても持ち歩くのやめようかな・・などと思案したりもするが、それじゃ買った意味ねーじゃん!てなわけで、買ったはいいが悩ましい日々が続く・・。

          ***

 以上、この冬の無駄遣いお買い物から。こうして見ると、グローブ、ペン、傘と私の紛失ビッグ3が並んでしまった。果たしてこの中のどれがモノとしての寿命をまっとうしてくれることやら・・・。

2008/11/24

帽子の似合う女性(ひと)

 先日、このブログでも取り上げたLa Coppola Stortaさんへお邪魔して、私が
心から敬愛する友人である女性の誕生日に、帽子を『押しつけ』プレゼントしようと
思い立ち、もうひとつ気乗りしなさそうな彼女を引きずりまわして、お店にお邪魔した
のでありました。

 ・・私自身は男ですので、帽子に限らず服飾全般において、自分の分を
選ぶときには黒を始めとした地味~な色ばっかり選んでしまう傾向が強くて=
というのは、しょせん男は女の添え物で引き立て役だと思っているので=その反動も
あってか、女性には色や柄、シルエットなど、華やかで美しい物を身につけて欲しいと
思う傾向が強いような気がします。政治・経済についての考え方はリベラル&
反・新自由主義的色合いが濃いつもりでいるのですが、こういうところは結構保守的、
かも?

 で、肝心の本人なんですが、これがもう見事なまでに最新のファッションというものに
興味がない。彼女の女友達がいくらやいのやいの言っても、暖簾に腕押しってやつで、
興味を持とうとしない。自分の興味のある事については、こっちが圧倒されるぐらいの
ウンチクを傾けてくれのに、もったいないなーと常々。

 ただ、話をよく聞いてみると、服に全然興味がないというわけではなくて、
彼女の母からのお下がりなどを自分なりに色々考えて、時には補修したりしながら、
自身の手で『アンティーク』化していくのが好きなよう。そういえば、彼女は
アンティーク好きで、さらには彼女の口からはしばしば古き良き時代のパリへの
オマージュが語られたりする=特に1920年代への=こととかとあわせて考えて
みれば、むしろ最新のファッションなどは彼女にとって不要、有害なものでしかない
のかも、などと考えたりしています。

 コッポラさんの帽子は本来的にはモードですが、手作業に頼る部分が多いわけだし、
華やかな柄も実はプリントでなしに刺繍だったりするので、あるいは彼女の美意識に
合うんじゃないかな、と勝手に期待したり。

 当日物色したものをいくつか。写真は全てコッポラさんのHPから拝借しました。

 

Photo_10
↑これ、決まってたなー。

Photo_11
↑勿論これも。スタッフのマライアさん曰く「50~60年代の映画のよう・・」。
  つまり、彼女の好みど真ん中?

Photo_2
↑こんなのがやたらと似合う女性(ひと)だといって、雰囲気が伝わるでしょうか・・?
 怖いくらいよく似合うけど、あまりにもシチュエーション限定なんで、ブレーキ。

Photo_12
↑こういうのも、全然アリでした。

Photo_13
↑形としては、キャスケットがよりお気に入りなよう・・。

・・で、結局。決めたのは、これ↓

Photo_14
↑これは素材がシルクなので、シルク好きの彼女にはツボのよう。
 この刺繍も彼女好みで、結局私の後押しもあって、これになりました。

 山内さん、マライアさん、改めてありがとうございました。多分、お店の
展示の1割くらいはひっくり返したのではないかと。

 ある程度予想はしていたけど、こう被る帽子被る帽子が片っ端から似合うと、
ある意味腹立ってくるくらいです。本人にその自覚がないから余計。

 このキャスケットも歳月を経て、良い『アンティーク』になってくれればよいのだけど。

 ・・で、帽子選びに時間をかけすぎて、お祝いのディナーに遅刻した私たちなので
ありました・・。

追記キャスケットを被ったその女性(ひと)の図

2008/10/19

CINQUE CLASSICOⅡ(RINNOVAMENTO!)②+この秋冬物お買い上げについて

 (最初にちょっと脱線)
Photo_14
↑いきなりお目汚しです。こちらで購入した秋冬物をアップしておきます。
 まずは①HERNO(ヘルノ)のトレンチコート。着丈はかなり短めで、
 細身シルエットなので、少々モードっぽいですね。まあ、あんまり直球
 ど真ん中のトレンチだとそれこそ張り込み中の刑事になってしまいます
 から、ちょうどいいかな、などと。裏地付きなので、かなり寒い時期まで
 羽織れるし、ニットとジャケットをインすれば、真冬でも充分使えます。

  トレンチは本来『塹壕』を意味するミリタリーコート。英陸軍のそれが
 そもそもの発祥だとか(元の用途はレインコート)。そういえば、私は
 アウターといえばやたら軍モノが好きで。米軍のMA-1(アルファ社製。
 今はもう処分)、M-65(アスペジ)など、それこそ毎日のように着倒して
 いたもんです。

  私は本来、ジャケットでもコートでも基本的にシングルブレステッドしか
 着ないのですが、さすがにトレンチはダブル以外にはありえない!
 たまに雑誌で『シングルトレンチ』などと呼ばれるコートがありますが、
 「それをトレンチと呼ぶな!」というのが、服に関してはゆる~い基準
 しかないはずの私の、譲れない基準。

  その他、肩のエポーレット(肩章:双眼鏡などをぶら下げる)、
 右胸の当て布(銃を構えた際の擦り切れ防止)など、細部にわたって
 ミリタリー色は濃いです。但し、チンフラップはなくて、
 金具で引っ掛けるようになってます。

  今回、英陸軍発のトレンチが手に入ったので、次は海軍のピーコート
 が欲しいな、などと。
 
  ボトムは②INCOTEX(インコテックス)のオフホワイトのパンツ。
 股上浅め、膝下ストレートのいわゆる『J035』モデルではあるのですが、
 これの最大の特徴はなんといってもストレッチウール素材であること。
 おかげで非常に履き心地がよい。あと、表面を少し毛羽だたせた
 フランネル調であることも特徴です。フランネルといっても、パンツ
 ですから、ウーステッド(梳毛)フランネルなのですけど。
 毛羽もごく控えめで、上品な感じですね(super100だし)。

 私はことジャケットに関してはやはりビスポークの方に心惹かれますが、
パンツについてはインコテックスの良さというのは、ある意味ビスポすら
上回るのではないかとさえ思います。というのは、パンツについては
ジャケット以上に『時代性』が大事なのではないかと実感しているから。
 ・・まあ、本当のクラシック好きには「わかってないな、こいつ」
と思われるとは思いますが・・。

 以上、上から帽子はLa Coppola Stortaの黒ハンチング、
HERNOのネイビートレンチコート、INCOTEXのオフホワイトパンツ、
GEOREGE CLEVERLEYの既製(おそらくCROCKET &JONES製)
スエードチャッカブーツ。そのうち、コートとパンツをCINQUEさんにて
購入。

・・ま、脱線はここまでにして、フジワラさんのお話の続きを。

                 ***

ーさて、お店で扱う個々のファクトリーブランドの、そのうちのいくつかに
 ついてフジワラさんからのナマの声をお伺いしたいのですが、
 まず、インコテックスからいきましょうか。

Photo_4 「一言で言って、安すぎますね」。

ー1本3万はするパンツが、ですか?
 
 「ええ、そのクオリティから考えて、
 今の倍とは言わないけれど、
 5万円近くしても、おそらく今とあんまり
 変わらないくらいの売り上げが
 見込めるんじゃないかな。
 今はね、インコテックスって日本市場に
 あってパンツの分野では殆ど一人勝ち
 状態なんですよ。
  ところが、そのインコテックスが以前の
 価格をあんまり変えてないものだから、
 イタリアの他のパンツメーカーの商品を
本当はもっと値を上げたいのに上げられないとそれぞれの代理店が
文句言っている(笑)」。

ーなるほど、イタリア物のパンツメーカーの、消費者にとっては有難い
 プライスリーダーになっている、と。

 「そうですね。その代わり他のパンツを扱うインポーターにとっては
  全く有難くないんでしょうけど(笑)」。

Photo_5 ー次はイザイア。

「正直扱えるとは思ってなかったです。
 重衣料でクラシコイタリア(協会)のモノ
 を置いてないのはマズいかな、とは
 考えてはいたんですけど。
 で、たまたまインコテックスとイザイアの
 代理店が一緒だったんですよね。
 ウチはご存知のようにインコテックスに
 ついては超優良ショップですから(笑)。
 まあ、その辺りもあって取り扱うことが
 できるようになりまして」。

ーただ、同じプライスゾーンで言えば、
 ベルベストもありますよね。

「ええ、そうなんだけど、ウチのお店の方向性としては『どクラシック』
というよりは、『モダンクラシック』を目指していますので、そうなると、
ベルベストって素晴らしいんだけど、少々年齢層高めかな・・という気が
しないでもないんですよね。さすがに両方いっぺんに扱うのはムリなんで、
ウチのお店のキャラからいうと、やっぱりイザイアかな、と」。

ーこうして見てみても、モダンでかっこいいですもんね。エンリコ・イザイア
 (創業者)を写真で見ても、単なるジジイにしか見えないんですけど(笑)。

「今は代替わりしたはずですよ」。

Photo_8 ールイジ・ボレッリとバルバなんですけど、
 差別化ということを含めてお願いします。

「ボレッリは個人的に好きということが
 大きいんですよ。先日、久しぶりに自分
 の分を買って着てみたら、やっぱり
 立体感は群を抜いてますね。
 バルバは以前から扱っていて、当然
 ウチにとって大切なアイテムなんですけど。
 ーで、両者の違い、といえばボレッリは本来
 ゆったり目、バルバはよりタイト、という
 ことになりますかね。実はボレッリは
 最近までゆったりしすぎてて、いいシャツ
 なんだけどウチで扱うにはどうかな・・
 という感じがあったんですけど、今入荷
Photo_10  しているモデルなんかは、肩も狭くなって、
 随分モダンになりましたね。
 しかも、それで腕がきちんと動くのが
 いいですね」。

ーということは、以前からタイトだったバルバ
 と、ボレッリの差がなくなりつつある、と?

「いえ、バルバの方がよりシェイプが効いている
 んですよ。ボレッリがタイトになったといっても
 それはあくまで肩の話であって、バストや背中
 からウエストにかけての絞込みは今もバルバ
 のほうが強いです。これはどっちがいいかという
 問題ではないので、ご自分のお好みや体型に
 よって選んでいただきたいな、と」。

ー関係ないけど、ボレッリってシャツ屋から手を拡げて、今じゃネクタイさらには
 重衣料まで作り始めているじゃないですか。偏見かも知れないけど、
 なんでも屋にはなって欲しくないな、などと。

「ええ。でも、ボレッリのジャケットやスーツって、キートンにいた職人が
 移籍して手がけているらしいですから、モノはいいらしいですよ」。

Photo_11 ーエドワード・グリーンとオーベルシー。
 これは価格帯もモロにバッティングすると
 思うんですけど・・。

「これは現状ではラウンドとスクエアのラスト
 の違いと受け取っていただければ。
 オーベルシーは本当に美しい靴で、私も
 大好きなんですけど、それはあくまでウチで
 扱うセミスクエアに限った話なんですよ。
Photo_12  あくまで私的には、ですが(笑)。
 で、ラウンドトゥでいいのがないかと思って
 いたところへ、グリーンの82ラストが発売
 されて。ああ、これはいいな、と。
 グリーンはもともと僕がこういうクラシックな
 服が好きになるきっかけとなった靴なんで、
 扱うチャンスがあれば是が非でも取り扱い
 したかったんです。ただ、定番の202ラスト
 だと、ウチのお店のテイストとしてどうかな、
 と考えていたんで、この82ラストを見たときに、これや!と」。

ー『現状では』ということは、将来的にはグリーンでもスクエアを扱う可能性も?

「そりゃ、もう・・。まだどれぐらい売れるか試行錯誤の段階ですけど、
 上手くいくものなら、いろいろ仕入れたいですよ。こうしてEGを扱えることが
 本当に嬉しい!」。

ー最後にお伺いしますけど、こうして大きな夢がこのお店に結実した。
 その上で、さらなる夢ってありますか?

「ありますよ・・。どこまで言っていいのかわからないけど・・。
 そうですね、次は何とか靴屋をやりたいですね。やっぱり僕が
 こういうクラシックな服飾の世界にハマるきっかけ、大量生産、大量販売の
 服ではなくて、ひとつひとつのアイテムにじっくり向きあう服飾の世界に
 足を踏み入れるきっかけとなったのはなんといっても靴、特にEGですから。
 ・・ただ、今も靴は扱ってますけど、正直どういうふうにすれば利益が出るのか
 がわからない・・」。

ー???一足10万を超えるような靴でも、ですか???

「はい。高いのはマージンのせいというより、関税なんですよ。革製品に
 かかる関税ってめちゃくちゃ高い。これは微妙な話なんですけど・・
 日本における皮革産業って、かつての身分制度で底辺に置かれていた
 人たちが関わっていらっしゃることが多いらしくて・・」。

ーそういう人たちを保護するために関税が高い、と。

「そんな話を聞きました」。

ーうーん。確かに微妙な・・。これ、書いてもいいですか?

「いいですよ。別にそのことを批判しようと思っているわけじゃない、
 きっと必要なことなんだろうと思ってるし。
 ただ、関税が高いのは事実だし、利益の出し方がわからないのも
 事実だし、それでも靴屋をやってみたいというのもまた事実なんです」。

          ***

改めてフジワラさん タカムラさん(写真写しといて、使う場面がなかった!
すみません・・)、本当にありがとうございました!

=CINQUE CLASSICOⅡ(RINNOVAMENTO!)=おわり

024
 

2008/10/13

CINQUE CLASSICOⅡ(RINNOVAMENTO!)①

 007

011_2

 私がブログを始めるきっかけを作って下さったお店である
服屋さん、CINQUE CLASSICOさんがリニューアルオープンされ、
去る9月15日、そのオープニングパーティに私も招待いただきまして、
参加して参りました。(パーティの様子など

 このパーティ、私も本当に楽しませていただいたのですが、そのレポ
などは他の方がなさっていますので(例えばこちら、あるいはこちら
少し視点を変えて、『宴の後』約一ヵ月経過したお店にお邪魔して、
店主のフジワラさんに、改めて現在の心境と今後への心持ち、
そしてお店で扱うアイテムについてのコピペではない『生の声』を
お伺いしようと考えた次第です。
(前回のフジワラさんのお話はこちら

               ***

021
(↑店主のフジワラさん)

 ーリニューアルから1ヶ月。売り上げの方はどうですか?

「以前と変わらないですよ(笑)。売り場面積が2倍になったからって、
 売り上げが2倍になるなんて思ってないんで。ただ、いずれは
 そうなるつもりでいるし、そうなってもらわないと困りますけど(笑)」。

ーリニューアル以前から含めて3年超。百貨店時代にも要職を務めて
 おられたわけですが、その時と比べてMD(マーチャンダイジング)的な
 違いは感じておられますか?勿論単価は全然違いますけど・・。

「そうですねぇ・・。価格帯のバランスを揃えるってことを意識しなくなった、
 ってことはあるでしょうか。
 ・・例えば重衣料。スーツやジャケットなんかを例にとると、ウチにはまず
 日本製のハイペリオンがあって、それは7~8万円ぐらいの売価。
 で、その次がイザイアで、いきなり20万越え(笑)。
 百貨店的なMDでいうと考えられないんですよね。普通はアンダー10万と
 オーバー20万だったら、せめて間に10万円台の価格帯のモノを置くのが
 定石なんですけど。ところが、自分で店やってみてわかったんですけど、
 少なくともこういう形態(クラシック)なショップで定石的なことをやっても
 あんまり意味がないというか、売り上げにつながらない(笑)。
 だから、まあ、価格帯云々は気にせず、いいなと思う商品だけを
 仕入れるようになりました」。

ーで、肝心の改装なんですけど、改めて一番に心がけたことはなんでしょう?

「まず、根本的には上下で同じ店であること。実は改装のアイデアを考える
 際に、上下で別のお店として打ち出すことも考えたんですよ。でも、やはり同じ
 CINQUE CLASSICOのドレス(地下)とカジュアル(地上1F)として統一
 したショップとしてやっていこうと。だから、天井や床は上下で同じ色で
 統一しましたし、什器も同じところのモノを使ったり。そもそも、ここ(地下)
 のディスプレイ棚も上から持ってきたモノだし」。

ーああ、確かに同じですもんね。

「ええ。それと、もうひとつ肝心なのが、なんといってもお客様にくつろいで
 いただくこと。だから、このカウンタースペースは絶対条件だったんです」。

025 ーへえ。その際、カウンターをスタンディング
 にすることは考えなかったんでしょうか?

「考えました。ただ、家具ショップに行った
 ときに目に入ったカッシーナ(イタリアの
 家具メーカー。HPに日本語がないです)
 のチェアに一目ぼれしてしまって・・。
 ウチが1Fだけだった時、ソファがあったん
 ですけど、それって入口に向いてたでしょう?」
ーええ。

「お客様がお一人の時はいいんですよ。ただ、例えばはすざわさんみたいに
 長居される常連さん(笑)が同時に2人いらした時に、ウチはメンズしか
 置いてないですから、普通はお客様同士ってイコール男同士じゃないですか。
 で、男同士が同じソファに隣り合って座るかっていうと、まあ、しませんよね(笑)。
 じゃ、どうするのかっていうと、結局立ってお話されるんですよね。その状況を
 何とかしたいなと思っていたこともあって、チェアでかつ売り場を背にした構造
 ならゆっくりくつろいでいただけるだろうなと思っていたところへ、
 このカッシーナですから(笑)。めっちゃ高いですけど、迷いはなかったですね。
 このカウンターの高さも、このチェアに合わせて設計してもらったんですよ」。

ー確かに、バッチリの高さです。

015_5 「あと、オーディオのBanng&Olfsen
 (バング&オルフセン:デンマークの
 高級オーディオ、AV機器メーカー)は
 絶対に置こうと。
 これは僕が欲しかったっていうのも
 もちろんだし、B&O KOBEの
 オーナーに『買います!』って
 約束していたのもあるし。
 正直、『あんなこと言わんかったら良かった!』って思ったこともあるんですけど。  
 値段が値段なもんで(笑)。
 でも、置いて良かったって思いますよ。仕事しながらこれから流れてくる
 ジャズを聴いてると、借入金のこととか忘れていい気分になれます(笑)
 お客様にも喜んでいただけるんじゃないかなぁ」。

ーほんとにいい音ですもんね。こっちまで現実逃避してしまいます(笑)。

020 「売り場でいえば、靴とシャツの棚は
 絶対3列はつくろうと。これで、神戸
 いや、関西ではどこにも負けない
 品揃えのショップになったと自負してる
 んですけど(笑)。バルバ、ボレッリ、
 オーベルシーにエドワードグリーン。
 インコテックスも関西で一番売れてるし、
 もう、どこにも負けへんで、と。
 もうひとつ言わせていただければ、
 フィッティングルームも自慢(笑)。広さと、あと照明。
 普通の電球の明かりと、白色球が切り替えできるんですよ。ほら、
 服屋の照明で見たカンジと外で見た色合いの印象が違うって多々ある
 じゃないですか。白色球だと、昼間の外に近いから、その辺のギャップが
 大分埋まるんじゃないかな。まあ、こういう細かいところにも実は気を
 使っているということも感じ取っていただければな、と。
 そのかわり突っ込んだ金額もハンパじゃないですけどね(笑)。
 大きな夢がかなったんで、当分は現実との戦いです」。

ー本当にねぇ。個人店としての限界をほとんど超えちゃってますもんね。
 では、改装にあたって苦労なさった点は?

「一番は水漏れ、ですね。この地下ってながーいこと使われてなかったん
 ですよ。だから、最初見たときはもうカビだらけ。僕自身はまあ、こんな
 もんだろうとタカをくくってたんですけど、業者の方がこれは絶対に水漏れ
 やと。そうすると案の定、地下水が漏れてまして。その防水工事に
 めちゃくちゃお金と時間がかかってしまって。本当は8月末にはレセプション
 パーティしたかったんですけど、間に合わなくなってなってしまったんですよ。
 延期した期日すら怪しくなって、本当に最後までヒヤヒヤでした」。

ー確かに大変でしたよね。HPからも伝わってきました。
 ただ、その甲斐あって、本当に素晴らしいお店ができたんではないかと。
 まあ、その代わりぼくみたいに買いもしないのにお店にきて、
 エスプレッソだけ頂いて、ウダウダ喋る人間の滞在時間がさらに
 長くなるという副作用も発生してしまいましたけど(笑)。

 ところで、バーニーズが来ますよね。迎え撃つにあたって、どんな
 お気持ちですか?これほどのお店を作ったのだから、ドンと来い、
 ってカンジでしょうか?それとも、やはり脅威・・?

「うん、ドンと来いとはさすがに言えないですけど、でも、早く来て欲しい
 ですね」。

ーというのは?

「うん、最初のオープンからそうだったんですけど、ウチのお客様って、
 大手のセレクトショップから流れてくる方がほとんどを占めるんですよ。
 逆に個人店のお客様は、そのお店に囲い込まれているというか、
 いってみればそのお店と共にお歳を召していかれる(笑)・・。
 だから、バーニーズがオープンすれば、新しいクラシックな服好き
 ができて、そこからウチにもいくらかは流れてきてくださるのではないかと」。

ー新しいマーケットを開拓してください、と。

「そうです。一度ウチに来ていただければ、品揃え、接客ともよそ様には
 負けないだけの自信はありますんで。だから、あそこのオープンは
 楽しみなんですよ。バーニーズさんが掘り起こした新たなお客様の
 何%かでもウチが喰ってやろうと(笑)」。

                          (長いので、以下次回)

 

 

2008/04/29

黒ポロ!

 以前のエントリで取り上げたギ・ローバーのポロシャツが入荷、お直し完了とのことで、CINQUE CLASSICOさんに取りに伺いました。

473
↑慣れって恐ろしいもんで、自分で自分をアップするのにだんだん抵抗がなくなって
 きてしまって・・・。
 以前にも書きましたけど、黒の長袖を半袖にカットしてもらいました。
 その袖は標準よりやや短めに。
 このポロシャツのいいところはなんといってもエリの立ち方、でしょうか。
 特にジャケットのインナーにする場合、やはりエリは綺麗に立ち上がって欲しい
 ものですので、イメージ通りといえます。
 あと、肩がややコンケープド気味に少しビルドアップしていることでしょうか。
 貧相な私の肩ですが、多少は男っぽく見える、かな・・・?

475
↑ジャケットをあわせると、んな感じ。
 あるいはジャケットを着るときは、タックインの方がいいかもしれませんね。

 しかし、色気ないですな~。まあ、私の目標が『地味カッコイイ』なんで、
 ご容赦ください。顔さえ写らなかったら、そんなに悪くはないのでは・・・
 と自分では納得しておこう???despair

以上、ギ・ローバーの黒のポロシャツ、ジャケットはハイペリオンのオーダー
ジャケット(生地はドーメルのトニック2000。モヘア30%の3プライ)、
パンツはインコテックスの035モデルのアイスグレー(ていうか、ほとんど白)
のコットンパンツ。靴は鈴木幸次さんの手によるスピーゴラの
黒キャップトゥ。靴以外は全てCINQUE CLASSICOにて購入。

 改めて、フジワラさん、タカムラさん、ありがとうございました!

2008/04/28

La Coppola Storta (ラ・コッポラ・ストルタ)=シシリーのハンチング専門店

神戸市中央区下山手通3-2-6 TEL078(326)4866

ホームページはこちらhttp://www.lacoppolastorta.jp/lacoppola/

 

467

 元来私は大の帽子好きでありまして、家の中を見回しても、コンビニで買った安物のベースボールキャップを含めて6個の帽子が存在します。すこーし前まではボルサリーノチックなHATに関心が強かったのですが、最近はハンチングを買ったり、かぶったりする事が多くて、そうすると結構微妙なシルエットの違いが気になったりしてしまいまして、『理想のハンチング』を探して紆余曲折することとなります。

 今一番かぶる事の多いハンチングは、老舗の『神戸堂』さんで手に入れたウールの黒ハンチングでありまして、当然お気に入りだったのですが、さすがに夏には暑いので、夏素材のハンチングでなんかいいもんないかな・・・などと考えていた折に、偶然前を通りかかりまして、これは天からの啓示だ・・・(←オーバーでした)とばかりにお邪魔したのでした。

 扱う商品などについての詳しいことはホームページをご覧いただくとして、ここの最大の特徴は帽子の専門店、その中でもハンチング(キャスケットを含む)に特化した専門店だということです。わが街神戸には、むかーしながらのテーラー、新しいテーラー、オーダーシャツだけの店、ビスポークシューズの職人、ネクタイしか売ってない店、帽子しか売ってない店など、ヘンな店が少なからずありますけど、その『ヘンな店コレクション』にまた新たな一ページが加わった感があります。(←勿論喜んでるんです!)

 もともとはシチリアでモードを学んだ女性デザイナーTindara Agnello(←読み方がわからん・・・。イタリア語なので、多分ローマ字読みで大きくは外れないと思うけど)の手によって始まったショップで、今ではローマやニューヨークにもショップがあるそうです。特にニューヨーク店にはハリウッドなんかのセレブも来店するようで、神戸店の壁にもここのハンチングをかぶるヒラリー・スワンク(イーストウッドの手による『ミリオンダラー・ベイビー』のヒロイン)なんかの写真が飾ってありました。

 しかし、なんで日本での最初の出店が神戸なんでしょうかね。マーケット的には東京、せめて大阪の方が絶対に売り上げが見込めるハズなんですが(しかも経営母体は大阪で、プレスは東京にあるのに!)。勿論地元ピープルにとっては嬉しいのですがね。おかげで遠方のお客さんも多いらしくて、私がお邪魔した日も横浜からいらしたという女性の団体さんなどで大賑わいでした。

471
↑店内の様子なんですが、一口にハンチング(キャスケット)といっても、素材感や色柄でこうも印象が変わるものかと目移りしてしてしまいます。

465
↑これは店頭に置いてあるオブジェなんですが、ただのオブジェじゃありません。ちゃんとペット用のハンチングが売ってるんです!

Photo
↑お店で撮ってもらった写真を転載させていただいたのですが、闇の仕事に差し障るので目線を入れさせていただきます。

 今回買ったハンチング、麻の黒。私の手持ちの帽子はぜーんぶ黒。今回も黒。本当に進歩がないと自分でも思います。
 ここのシルエットの特徴は後側がゴム付きで深めになっていることと、フロントのスナップでしょうか。スナップをはずしてキャスケット風にかぶるのもアリ、なんでしょうが、多分私はしないと思います。
 ハンチングって、平行や斜めかぶりなど、いくつかのかぶりかたがありますが、ここんちの分に関していえば、後ろの深さをいかして後ろを深めで前をやや上げ気味にかぶるのが今のところお気に入り、かな。この写真は平行やや斜めかぶりです。

 まあ、私の場合はモデルが悪すぎるのでスルーしていただいて、できればホームページでいろんな方のハンチング、キャスケットのかぶり方をぜひご覧になってください。私はハンチングに限らず、女性の帽子姿が大大大好きで、このお店に行くとある女性はかっこ良く、ある女性は可愛らしくハンチングを着こなされていて、帽子女子フェチの私にとってはもーーー入れ食い状態。至福の時間であります!!!happy01

469
↑お世話になったスタッフの方々。
 左側がプレス担当の宮原マライア亜可子さん。私の写真も彼女が撮って
 くださいました。ホームページのブログも彼女の手によります。
 もともとは映像の勉強をなさっていたそうで、今でも大の映画好き。
 だからでしょうか、カメラを扱う手つきは大変こなれていらっしゃいました。

 右側が店長の山内亮一さん。元プロゴルファーを目指していらっしゃったという、
 異色の経歴の持ち主。「だから、ファッションのこととかもまだまだこれから。
 勉強中です」。いえいえ、ばっちり決まってます!

 ・・・お店の数だけ人がいて、その分だけ人生がある。いろんな話が聞けるから、
 お店めぐりはやめられません。私は巨大企業の経営的なことにはトンと興味が
 なくて、これからもこうして現場でモノを作る人、売る人にコミットしていこうと改めて
 思った次第でした。

  山内さん、宮原さん、本当にありがとうございました!

                    La Coppola Storta (ラ・コッポラ・ストルタ) おわり

*追記・・・私は今までずーっと「ハンティング」と記述してきましたが、
       deibu95さんのカキコやHPのマライアさんのエントリ、
       あるいはWikiの記述などを確認しても、「ハンチング」(hunting)
       のほうがより正しい発音に近いようです。謹んで訂正いたします。

2008/02/19

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=⑦

432
(前回からの続きです)。

ーイタリアのサルト的な方法論と、日本的な方法論の違いについて少し・・・。

「そうですねぇ・・・。例えば『手縫い』ってことでいえば、我々の職人も『縫う』
 ことについてはもともと凄く上手かったんですよ。同じパートをずっと縫っている
 ということもあって、そのパートについては習熟するというか、それこそ△△君
 (←しつこくいうけど、特に名を秘す《笑》)より上手いぐらい。
 ただ、それは結局『手縫い』をより『機械縫い』に近づけることでしかなかったん
 ですよ。つまり、直線をどれだけ真っ直ぐ縫えるかとか、運針の正確さだとか・・・。
 そういう観点からいえば、イタリアのサルトの縫い目なんかもうガタガタ。
 そもそも、真っ直ぐ縫う気があるのかどうかも疑わしい(笑)。
 でも、出来上がった服全体を見ると、全体のドレープはキレイだし、何より着心地
 がいいんですよね。だから、向こうの発想だと、ラインと着心地がまず優先される
 のであって、縫い目なんかニの次、三の次で、曲がっていてもそれはそれで
 味じゃないかと」。   

ーなるほど、それは服に限らず、いろんなジャンルに当てはまるかも知れませんね。
 私たち日本人がつい細かいことに目がいきがちなのに対して、向こうは大きな
 フォルムを大事にするというか・・・。勿論、細かいことに目がいくのは決して
 悪いことではないけれど。

 ところで、いわゆる『手縫い』のメリットって、結局・・・。

「要するに立体感、っていうことじゃないでしょうか。例えば、生地をアイロンで
 『くせ取り』して曲げるわけですけど、それをつなぎ合わせるのには手で縫わない
 とせっかく曲げた部分の立体感が出にくいわけです。縫いながらの
 微妙なテンションの調節って、やっぱり手縫いでないと上手くいかない」。

ーなるほど。ハンドアイロンと合わさってのハンドソーイングということですね。
 そういえば、『くせ取り』もよく聞く言葉ですよね、生地をアイロンで服の形に
 曲げていく。

「ええ、現場を見てもらえればわかりますけど、これは本当に重労働で。
 えらく重いアイロンを生地に押し当てて、ずーっと当てて、ようやく変形したら、
 またその作業の繰り返し。このパートの職人なんか、いっつも汗ダラダラ(笑)。
 冬でもずーっと汗かいてますからねぇ」。

ーなんか、『くせ取り』っていうより、『根性曲げ』ですよね。

「まあ、そんなところです」。

ーところで、いわゆるショートメジャーなんですが、これはイタリアのやり方なんですか?

「じゃないかと思いますけどね。ただ、例の鳩型採寸器は実は日本人の発明なんですよ」。

ーあ、そうなんですか。じゃ、向こうだとどうやって・・・?

「メジャーを巻きつけて、たすき掛けにして採寸するんですよ。ところがこれだと
 半端じゃなく誤差が出る。測定して出てきた数字をつなぎ合わせてみると、
 人間としてあり得ない体型が出来上がることがままありまして(笑)。
 だから、最初に鳩型採寸器を作った人はエライなと思います」。

ー今もテーラー向けに売ってるんですか?

「いや、もう売ってません、私の使ってるものも自作なんで。そもそもテーラーの数
 自体減っているのに加えて、こんな短寸式でメジャーメントするテーラーなんか
 ほとんどいませんから、売ったって商売にならない」。

ーなるほど。各人の体型を割り出す方法としては、他には考えられないんでしょうか?

「どうでしょう。フランスのスマルトなんかだと、ゲージ服にメジャーメントのベースと
 なる躾糸が縫ってあって、それを起点にメジャーメントすることで体型の割り出しを
 したりしてるみたいですけど」。

ーへえ、そういうやり方もあるんですね。

 あと、石田原さんはもともと生地商だったとのことですが、これからの生地
 の流れについて少し。

「そうですね、いわゆるナノテクを使った生地なんかが増えそうですね。
 例えば、この春夏生地としてうちでもご紹介しているScabalやFintesの
 撥水生地。これはナノテクを使って生地に撥水機能を持たせたもので、
 撥水効果がずっと落ちないのがウリなんですよね。詳しい説明を聞いても、
 正直私にはチンプンカンプンなんですけど(笑)。あと、同じくナノテクで生地に
 ストレッチ機能を持たせたものなんかも出てきてます」。

ーふーむ、こういうところにも新しい動きがあるわけですね。
 と、同時に昔ながらの低速で織られた生地なんかにもスポットが当たったり、
 生地の世界もいろいろあって面白い。私的には、生地にハマリだしたら、
 服好きとして最終段階の重病で、もはや再起不能だと思ってます(笑)。

 最後に、『これからの石田洋服店の野望(笑)』について教えていただけますか?

「いや、これからどうしたいとかよりも、とにかく人が、職人がいないんですよ。
 ウチの職人も高齢化が進んでいて、しかもその後の世代、特に30~40代の
 一番いて欲しい世代がいないんです。だから、いくら注文があってもどうしようも
 ないというか・・・。正直言うとね、本当はもっと外注したいんですよ。だから、
 他のテーラーに、『ウチのやり方を教えるので、それでやってくれませんか?
 仕事を回しますから』ってお願いしたことはあるけど、みんな『今更・・・』
 みたいな感じで、首を縦に振らない。はっきり言ってヒマなんですよ、
 その人たちは。でも、新しいことなんか今更覚えられないというか、覚える気が
 そもそもないというか・・・。だからウチの工場でのキャパはもう限界に近いけど、
 他にも回せないし、ウチの職人もトシ食ってるからこれ以上キャパが広げられない。
 このままだと、あと10年、いや、ヘタするとあと5年後にはどうなるか・・・。
 注文自体は順調に頂いてるんですが、そのこと考えたら『どうしたらいいんだろう?』
 っていうのが正直なところです」。

ーうーん。イタリアもそうらしいけど、日本も仕立ての世界の『後継者不足』は
 深刻なんですね。

               *******

 職人不足については、私もお伺いしていて結構辛かったです。

 ・・・当初の意図をはるかに通り越して、随分長いシリーズとなりました。
改めて、石田原さんと、奥さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。
単に服を作っていただくという以上の、貴重な体験とお話ができたことを、
心から嬉しく思います。

           シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑) おわり

361

2008/02/11

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=⑥

430
↑店長の石田原 弘(いしだはら ひろし)さんです。
 勿論お店のオーナーなんですが、奥さん含めて皆『店長』と呼びます。

(えらく長いので、2回に分けます)。

ーしょーもないこと訊いていいですか?

 「どうぞ(笑)」。

ーどうして「石田原」さんなのに、「石田洋服店」なんですか?

 「ああ、それは私にも長いこと謎で・・・」。

ー?

 「私んとこは、実は祖父がテーラーだったんですよ。
 1914年から」。

ーあ、そうだったんですか。

 「で、そのころからもう『石田洋服店』だったんですよね。で、私も
 なんで『石田原』なのに、『石田』なのかなーと子供心にずっと考えてまして、
 あるとき訊いてみたんですよ『おじいちゃん、なんでウチは石田なの?』
 って。そしたら、祖父から帰ってきた言葉はたった一言『長いから』(笑)」。

ー(笑)まあ、確かに「石田原洋服店」だと発音しにくいですよねー。
 で、そのお祖父様のテーラーは神戸で?

 「いや、大阪ですね」。

ーへえ。それで、当時の日本のテーラーだから、やっぱりこうガッチリした
 スーツを仕立てていらした・・・。

 「はい、それはもう、ガッチガチというか、地面に置いたら立ちそうな・・・(笑)」。

ーでも、石田原さんご自身はもともと商社の経営に携っていらっしゃいましたよね。
 テーラーの家系の方が商社経営をなさって、またテーラーに戻った経緯に
 相当興味があります。

 「そうですね。これは祖父の代からなんですけど、戦争がありまして、
 服も統制経済の中に組み込まれるわけですよ。そうすると、
 当然仕立て服なんか売れないというか、売りようがないというか・・・。
 で、これではダメだと父が『石田羅紗(ラシャ)店』という生地商を始めまして、
 そうすると戦後になってもこっちの方が商売として良かったみたいで、
 祖父ももうテーラーには戻らなかったようです。そして、その『石田羅紗店』が
 『石田商事』となりまして、私の代となるわけです」。

ー石田商事時代にはベルベストなんかも扱っておられましたよね。

 「はい。いい服ですよ。パドヴァの工場にお邪魔したことが何回もあるけど、
 研究熱心という点では凄かったですね。あるとき、『工場のこのラインの
 責任者の話を聞いていってくれ』と言われたので聞きにいったら、『ここの
 部分のこの改善のためにこことあそこをあーしてこーして・・・などと延々
 一時間ぐらいも技術的な話を聞かされまして、こっちもワケがわかんない
 から、ポカーンとするしかなかったのを覚えています」。

ーあと、印象に残っているファクトリーなどはありますか?

 「そうですね。ファクトリーじゃないけど、オズワルド・ボーディングとか・・・」

ーオズワルド・ボーディングですか!一世を風靡しましたね。
 覚えてますよ。確か心斎橋にショップも出しましたよね。

 「ええ、本当に凄かったというか・・・といってもピークは実質1年ぐらい
 でしたけど(笑)。彼が来日して、福岡の百貨店のイベントに顔を
 出したときなんか、もうサインを求める人の行列が凄くって・・・。
 そこに、どう考えても彼の客層に関係のないおばちゃんが並んでて、
 すごいなー、こんな人にも名が売れてるんだ・・・と思ってたら、
 その人が私に『ところで、このサインしてくれる人ってどんな人?
 有名人?』みたいなこといわれて、ズッコケそうになりました(笑)」。

ー(笑)でも、あの時のオズワルド・ボーディングって本当に勢いありました
 もんね。ニュービスポーク、でしたっけ?

 「ええ、ティモシー・エベレストなんかと並んで・・・」。

ーただ、わーっと売れすぎて、わーっと売れなくなっちゃった(笑)。

 「そうですね。結局彼の服って若い人に売れすぎたんですよね。
 若い人って彼の服を一着持てば、もうそれで用済みみたいなところ
 があって、一巡すればもうおしまい、話のネタにOKってなっちゃった(笑)」。

ー彼自身はやはり良いデザイナーでしたか?

 「勿論そうです。ただ、ある意味扱いづらい人ではありましたね。
 もう、しょっちゅうケンカしましたよ。おかげで、ケンカのための
 英語力が随分アップしました(笑)。
 今はもう彼のことは日本じゃ話題に上らないけど、彼自身は堅実に
 やってますよ。今度ロンドンにショップもできるようです」。

ーで、そうしてやってこられた商社をやめてしまったのは・・・?

 「一言でいえば、廃業せざるを得なかった、ってことです。
 ウチはもともとが生地商ですから、メインはあくまで生地商売なんですよね。
 ところが全国的にテーラーがどんどん減っていくもんだから、生地もどんどん
 売れなくなっていく。もう、仕方なかったです」。

ーで、テーラー商売に復帰なさるわけです。
 
 「ええ、2000年からですが。実は私自身、テーラーをやりたかった、
 っていうのもありました」。

ーただ、工場(石田ソーイング)は別会社ですよね?

 「そうですよ。親戚の会社です」。

ー石田原さんご自身は経営にはタッチしていない?

 「はい。まあ、一応あそこの大株主ではあるんですけどね。
 でも、配当なんか貰ったことがない(笑)」。

ー北九州市にあるそうですが、どうしてテーラーとしての工場が必要だった
 のか、そして何故北九州市なのか、北九州市にどなたかが
 関係していたのかとか、その辺りを・・・。

 「もともとは百貨店のため、ですね。というのも、百貨店はスーツのオーダーは
 受けても、自分の工場は持たないわけですよ。全部外注するわけです。
 だから、そのための工場を持てば、安定した注文も見込めるし、いいんじゃ
 ないかと考えたということでしょうね。
 後、何故北九州市なのかってことでいいますと、ウチの親族はもともと
 北九州市には全く関係はないです(笑)。
 あそこには新日鉄の八幡工場がありましたでしょう。それで、昔は鉄鋼は
 すごく景気が良かったから、社員の皆さんはそれなりにお金をお持ちだった。
 ただ、ほとんどの人は普段スーツなんか着ないわけです。そのことで、逆に
 一張羅としていいスーツを仕立てよう・・・という文化があったみたいですね。
 皆さん、宵越しの金は持たないという気風の持ち主でもあったようだし(笑)。
 だから、テーラーへの需要が結構あったようです。残念ながら、
 今は違いますけど」。

ーふむ。でも、その時のスーツも当然ガチスーツですよね?
 それがどうしてイタリア式の柔らかい仕立てになったのか・・・。

 「それは、私と○○○の△△君(←皆知っていると思うけど、特に名を秘す《笑》)
 が以前からの知り合いで、私が頼んだというのがそもそもの始まりです。
 彼自身もイタリアでサルトの修行をして、当然自分のサルトを経営していたわけ
 ですが、 同時にその技術である程度量産できるように、分業製がしける工場を
 探していたという経緯もありまして、ウチに来てもらう話がまとまりました」。

ーでも、それまでにも当然職人さんがいて、自分たちのやり方で仕立てていた
 ワケですよね。そこにまったく違うノウハウを持ってくることに軋轢は
 なかったんですか?

 「それが怖かったんですよ。最初はおっかなビックリ(笑)。
 新しいノウハウの勉強ったって、工場のラインを止めてしまうわけには
 いかないですから、5~6人を選抜して研修するんですよね。
 で、その5~6人の反発を予想していたら、あにはからんや、選抜されなかった
 他の職人が文句いってきた。なんで俺たちに教えない、と。
 結局、誰よりも彼ら自身が今のままではダメだと考えていてくれたんでしょうね」。

                                (以下次回)

2008/02/04

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=⑤

 中縫いから約3週間。以前から仕上がっていたパンツと
合わせて、ジャケットが完成したので納品となりました。

 ま、率直に言って私は服にしてもワインや料理にしても
その「成り立ち」に興味があるのであって、特に服について
出来上がったものを引っ張り出して、コーディネートがあーだ
こーだと人様に申し上げるのが苦手です。

 これはそういうことがダメだといってるのではなくて、単に私の
趣味ではないということです。第一、そもそもコーディネート云々できる
ほど服を持ってないので、そういう企画をやっても各シーズンにつき
2回ぐらいで終わってしまう(でも、他人のコーディネートを見るのは
実は大好きなんですよね、これが)。
 そんなことも含めて、今回の出来上がりをアップするのも少々
気がひけるのですが、せっかく経過を逐一レポさせていただいて、
あげくに完成品をさらさないのもなんだかなーと考えたので、
石田原さんと奥さん、そして実際に作業していただいた職人さんたち
への敬意をこめて、簡単に完成品についてご紹介します。

425
改めて、ジャケット生地はドラッパーズ(伊)のスポット在庫のブラウン無地。
この写真だと生地の質感がわかりにくいですが、光沢があって、しかし
毛羽立ちがあります。私はこれはいわゆるウーステッドフランネルの
ように、ウーステッド(梳毛)の生地表面をわざと毛羽立たせたものでは・・・?
と考えていたのですが、石田原さんによれば、「多分、紡毛生地(つまり
ウールン=ツイードなどと同じく、原毛を梳かずにいきなり撚りをかけて
糸に紡いだもの)でしょう」とのこと。スポットの在庫だったので、石田原
さんにも詳しいことは実はわからないのだそうです。

では、この光沢は?というと、実はこれがイタリア生地の特徴の一つで、
要するに毛足が長いのだそうです。これが光の乱反射につながって、光沢
の原因になるのだそうですね。イギリス生地だと特に紡毛はこういう具合
にはならない。但し、耐久性については、やはりイギリス生地のほうが
ずっといい。根本的にイギリス生地は2by2(縦横双糸)ですが、イタリア
ものはドラッパーズもロロピアーナもついでにゼニアも、縦単といわれる
縦糸が単糸になっている糸なので、どうしてもイギリス生地に比べると
一般論として弱くなります。まあ、私は普段こんな格好をしない、あくまで
休日用ですので、使用頻度から考えると、あんまり神経質にならなくっても
いいか・・・と考えて、この光沢にひかれてこれを選んだわけです。

パンツはスキャバルのミディアムグレー。バンチでみた他のウールの
パンツ生地のなかで、一番目付が重かった(でもたしか310gぐらい)
のもあって、これに決めました。

・・・細かいことはこの際、やはり身体に合った服っていいもんです。

426
バックスタイル。背中から腋、腰、ヒップにかけてのドレープが
おわかりいただけるのではないかと。

奥さんが言ってくださったのが、「撫で肩がキレイに出てます。
そのことも含めて、特に斜め後からのラインがものすごく
キレイ!」なんだそうですが、そうなんですか?

あと、パンツに関しては裾幅は20cmに設定しています。
太くなく、でも細すぎないバランスではないか・・・と、
本人は勝手に思ってます。シルエットとしては、テーパード
控えめで、いわゆる膝下ストレートにやや近い、です。

429
あんまりディテールをあーだこーだいいたくないけど、
ひとつだけ。このゴージ(上襟と下襟の合わせ目)を
ご覧下さい。ここの部分を手縫いすることによって、
ゴージラインのこの強烈なカーブを出すことが可能
になります。バルカポケットならぬ、バルカゴージと
でも呼びますか。

芯は勿論毛芯なのですが、意外だったのはキャメルではなく
バス芯なのだそうです。キャメルの方が確か柔らかさが出やすい
と思っていたので、この選択は正直意外でしたね。
「バス芯は復元力が強いので、元に戻ろうとして、それゆえ
最初は硬さを感じるかも知れませんね。でも、時間がたつと
身体にそって、なんともいえない柔らかさがでるんですよ」。
とのことですので、頑張って(?)着倒したいと思います。

・・・と、まあ、ごく簡単ですが、完成品のレポでした。あとは、
もう完全に自分の物となるまで着こんでいくのみ、です。

うーん、でも、このシリーズ通してなんですが、やっぱり首から
下だけとはいえ、自分で自分の写真をアップするのはどうにも
ダメですね。強烈に恥ずかしい限りです。もう、こういうことは
しないと思う・・・多分。でも、そんなこと言いつつ、クセになって
しまう・・・かも?

とにかく、とりあえずもう自分が出なくて済むのでヤレヤレ
です。お見苦しい写真にお付き合いいただき、本当に
ありがとうございました。当分は私自身が画像アップされる
ことはないと思います。(ホッ・・・)

・・・そして、最後に石田原さんのお話です。

2008/01/14

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=④

 中縫いです。パンツは中縫いなしで仕上がりを待つだけなので、
 今回はジャケットのみです。

409
↑①仮縫い時と比べると、随分と作業が進んでまして、
 特に前身はラペルの部分や裏地も含めてほぼ完成に近いです。
 もうすっかり胸のドレープも出て、「らしく」なったのがお分かり
 いただけるかと思います。仮縫い時だと、石田原さんの言葉を
 お借りすれば、「シングルをダブルにする以外はなんでもできる」のですが、
 ここまで来るともう大きな変更は無理なので、細かな部分のツメと
 いうことになります。

 (全く関係ないですが、後ろに写っているのがHPにも掲載されている
 とっても目の詰まったメルトン生地【ウールに縮絨をかけて密にしたもの】
 を使ったピーコートでありまして、すごーく欲しいもののひとつです。
 私がつくるなら、着丈を短く、ウエストも絞って、ピージャケットにしたいな・・・)。

411
↑②仮縫い時と比して、肩へのノリが全然違います。
 「あ、こういう肩なんだ!」というとえらく抽象的ですが、つまり出来上がりが
 明確にイメージできる肩へのフィット感がこの時点で出現するわけです。
 また、仮縫い時の「単なる布を張り合わせた」状態から、明らかに私の
 身体にそったラインを描いているのがお分かりいただけると思います。

410
↑③肩幅が若干予定よりも広め(ほんの少しですが)なので、
 気持ち詰めます。もっとも、芯が入ると肩は少し中に入るとのことで、
 調節は本当に微妙です。

412
↑④袖丈の最終確認。上手いこといってるようで、このままでOK。

418
↑⑤ちょっと石田原さんが頭を悩ませておられたのが、前身右側の脇腹付近の
 小さなシワ。②の写真で見ていただいた方がわかり易いかな。

413_2 
↑⑥そのシワをなんとかしようと、いろいろ肩の部分で調整かけて下さいます。
  正直私は全然気にならないんですが・・・。
  「まあ、確かにずっと同じ姿勢でいるわけでなし、気にしたってあんまり
  意味がないっていえばないんですけど、ですけど、ね・・・」。
  『神は細部に宿る』といいますが、プロはこういう細かいことも気にせずには
  いられないんでしょうね。

414
↑⑦⑥とまぎらわしいですが、肩の撫で肩がもうほんの少し足りないとの
 ことで、さらに調整。これも私自身はもう全然OKだと思ったのですが、
 さすがに細かい(笑)。

419_2
↑⑧さらに、前回反身補正を入れたのですが、その後私が姿勢に気をつけた
  甲斐があったのか(?)、屈身補正を入れ直しました。混乱させてすいません!

420
↑⑨ウエストの絞りを確認
   「絞りすぎてないですか?少しゆるくします?」
   -いや、このぐらい絞っていたほうがいいです。

  

421
↑⑩「アームホールは狭すぎないですか?」
   -いえいえ、できるだけ狭い方が。腋の差し込まれ感は
    全く気にならないので。

416_2
↑⑪最後に全体のバランスをもう一度確認。

  ・・・以上で中縫い終了!後は仕上がりを待つのみです!

 とにかく、私が全く気にならないところも一生懸命調節していただいていたのが
 非常に印象的でしたね。中縫いは実はオプションなんですが、お願いして
 正解でした。

 ・・・・今後の予定なんですが、次回にパンツも含めて完成品のレポと、
 その次に今までにお伺いした石田原さんのお話をまとめられたら・・・
 と考えてます。もっとも、業界のウラ話とか、とてもここでは書けない
 ことが現時点でも一杯あるので、どこまで書けるか自信がないのですが(笑)。

2008/01/07

ポロシャツのオーダー

ポロシャツのオーダー

ポロシャツのオーダー
先日、チンクェクラシコさんでギ・ローバーのポロシャツのオーダーという、珍しい企画があったのでお邪魔してきました。

  いろんなサンプルから気に入ったものを選んでサイズオーダーをかける・・・のですが、私好みの黒の半袖が企画にない!・・・というわけで、なんと写真の長袖の袖をcutするという暴挙にでることにしました。(しかも直し代無料!)

どんな風に仕上がるのか楽しみです。 そしていつもながら無理難題に付き合って頂いているフジワラさんに感謝、です。

実は今回のエントリーは携帯から飛ばしてますので、短いですがこのへんで。

2007/12/24

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=③

  なんか、このシリーズはすごーくアクセスが多くて、びっくらこいてます。
 とりあえずは素直にありがとうございます(ペコリ)。
 でも何より、こんな時間のかかる客にイヤな顔ひとつせず、
 撮影にまで協力いただいている石田原ご夫妻にペコリペコリ、です。

 さて、今回は仮縫いです。

388
↑まずはパンツから。

387
↑「右腰が高いですね。骨盤が右に上がってるんですよ」。

 ーえ~。じゃ、どう補正するんですか?・・・。

 「右の股上を少し深くしましょう」。

389
↑左をほんの少し裾上げします。・・・といっても、既製のパンツと
 違って、裾をカットするのではなく、股上で調整します。
 裾でカットすると、場合によってはパンツの一番綺麗なラインの
 出るところでカットする場合がありえますが、股上での調整だと、
 ラインが完璧に維持できるわけです。この辺りにもビスポの良さが
 あるといえます。(但し、感覚の古いテーラーだと、やたらブッカブカ
 のパンツをつくることもありえますので、一概にビスポがいいとは
 言いかねます)。

・・・あと、私の特徴として、下半身が反身体(はんしんたい=反ってるってことね)
  ということと、それでバランスをとろうとして上半身が屈身体(くっしんたい=
  早い話が猫背)になっているということと、上記の通り骨盤が右上がりなので、
  これもバランスをとろうとして上半身の右肩が下がっている(これは昔通っていた
  カイロプラクティックでも言われた・・・)などがあるそうなんですが・・・。

  うーん、ビスポで良いフィッターに当たると、否応なしに自分の体型や姿勢の
  欠点と真正面から向きあうことになるんですよねぇ。結構凹みます・・・。
  (弁解しておきますと、骨盤は大抵みんななんらかの方向に傾いている
  らしいです。一応)。

 ひとつ救いだったのは、「普通やせてる人はもっとO脚になりやすくて、
 パンツのクリースが外に向いてしまいがちなんですが、ほぼ真っ直ぐ
 ですね」とのお言葉。はい、スクワットやランジでも「つま先方向に膝を
 曲げる」ことは意識してます!

 あと、私からの要望として、ヒップからワタリにかけてをなるべく
 コンパクトに・・・とお願いしておきました。

ここからジャケット

404_2
↑写真だけでしか見たことのない、こういう躾糸だらけのジャケットを
 自分が着ることになるとは・・・。

394
↑肩幅の調整。別にこのままでも悪くはないのですが、
 私の希望もあり、1.5cm狭くします。

393
↑袖丈の調整。左袖のみ0.5cm短く。これでジャケットから覗く
 シャツを両方とも1cmに設定できました。

391
↑ウエストの調整。ウエスト部分をもう少し絞ります。
 ただ、今回はウエストそのものというよりは、前の打合せで
 絞ることになりました。必然的にいわゆるVゾーンが狭く
 なることになりますね。

392_2
↑襟幅はこの時点で8.5cm。もう少し狭くして8cmに。
 また、ゴージのラインをもう少し上げて、
 肩のラインと平行にします。

395
↑反身補正。「反身が足りない」という言い方をするのだそうな。
 上記の通り、私の下半身が反身体なので、ジャケットの前裾が
 引っ張られて短くなる。それを補正するために、後身を7mm短く、
 前身を7mm長くします。でも、生地の長さは変わらないし、
 肩位置も当然動かせない。一体どうやって・・・?
 「それはああしてこうしてかくかくしかじか・・・」
 といろいろ説明してくださいましたが、複雑すぎて頭がオーバーヒート
 してしまいました。すみません・・・。
 「実際説明するのも難しいんですよ(笑)」。
 上の写真は、後身頃を短くするための目安のピン止め。

397
↑マークの為のチョーク。業界では「チャコ」というのだそうで。

ここまでの調整は、しかし刺身でいえばツマみたいなもの。
鯛やマグロはこの後です。

398
↑躾糸をはずして、袖部分を取り除きます。
 -??
 「一番大事な肩の調整です」。

399
↑私の肩は撫で肩で、勿論それにあわせて仮縫いしてあるわけですが、
 それでも「撫で肩が足りない」ので、さらに調整。
 ほんのミリ単位の微妙な調節ですが、これによって肩に完璧に「乗せる」
 ことができるわけです。

 「結局ジャケットのキモは肩に尽きるんです。ここを完全にフィットさせるか
 どうかで着心地が全然変わってきます。逆にいえば、ここをきちんとしない
 と仮縫いは単なる儀式になってしまうんです
」。

400
↑あと、アームホールの確認。
 「充分狭いですね。これでいいでしょう」。

401
↑細かい点ですが、Vゾーンが狭くなるのに伴って、
 フロントのボタン位置を少し下げます。

それと、私の希望で着丈をもう少し(1cm)短くしてもらいました。
・・・以上で仮縫い終了!

403
↑これは余談なんですが、上の写真をご覧下さい。
 指先の間の割れ目が肩線で、左が前身頃、右側が
 後身頃なんですが、後身頃のほうが少し生地の幅が
 広いのがおわかりいただけますでしょうか?(2cmほど)。
 この(背中側の)余分が腕の前への運動を楽にするというわけです。

 人間の腕の運動はほとんどが前方向ですので、
 それを助けるための工夫・・・なんですが、当然これをそのまま
 縫い合わせると 後身頃の生地が余ってしまいます。
 で、この長さの違う生地同士を何とかおんなじ長さになるように
 縫い合わせるわけですが、普通に考えればわかるとおり、長い
 生地を短い生地にあわせると、シワだらけになります。
 それをどうにかしてシワにならないように、綺麗に縫い合わせる・・・
 「いせ込み」といいまして、職人の腕の見せ所です。
 
 -これは機械ではダメなんですか・・・?

 「いや、実は機械はあるんです。でも、なんせ1台1千万はしますから、
 一つのパターンを大量生産できる既製服屋ならともかく、テーラーで
 どうにかできるもんじゃないです。結局手でやるしかないんですよ」。

・・・サルト(テーラー)の個性とは、フィッターの個性である。・・・
という言葉があるのかどうかわかりませんが、少なくとも私は今回の
仮縫いでそんなことを強く感じました。特に肩の微妙な調節といったら!
奥さんが「私にもこれだけはちょっと・・・」と仰る意味がよくわかったし、
フィッターの難しさ、仮縫いの難しさが身に染みてわかった気がします。

 「ウチの職人もね、仮縫いはヘタですよ」。

 そう。フィッターは服の構造の理解の上に、微妙なサイジングができなければ
なりませんし、しかも個々の客に合わせた「味付け」もしなければなりません。それには
センスと場数、それが絶対的に必要なポジションだということでしょう。

 さらに、石田原さん自身はカッターでもなければもちろんソーイングもしません。
テーラーによくある「お客に触れて体型を把握し、その感覚を頼りに線を引く」
などということが許されないのです。奥さんが最初に私に言ってくださったように、
「感覚や感性をどう数値化していくかがこの仕事の一番大事なところ」なわけです。

 ・・本当に毎回目ウロコな経験をさせていただいています。感謝、感謝です。

 次回は中縫いになりますが、年末年始の関係で1月半ばになろうかと
思います。このお店のエントリをお待ちの方がシビレをきらさないように、
先に申し上げておきます(笑)。


 

2007/12/14

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=②

 さて、実際の採寸です。もっとも、シロウトである私が走り書きのメモ
(自分で自分の字が読めねーよ!)をもとにしてエントリしますので、
あるいは事実誤認などもあろうかと思いますが、あまり目くじらを立てず、
生温かい目で見逃していただければ幸いです・・・。

 なんせ採寸箇所がやたら多いです。ご了承ください。

 採寸者は勿論石田原さん。撮影は奥さんにお願いしました!
 モデルは恥ずかしながら私です・・・(だって他にいないし)。

○まずは、一般的な採寸から

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↑①総丈

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↑②肩幅

367
↑③背幅

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↑④胸幅

   -背と胸は別々に測るんですか?

   「はい、背中と胸のバランスを見ます。はすざわさんの場合だと、
    胸よりあきらかに背中のほうが広いですので、パターンにそれを
    落としこむわけです」。

   胸より背中の方が広い・・・。ジムでの必死のベンチプレスは一体
   何のため・・・。

369
↑⑤オーバーバスト

   -これは・・・?

   「腕の太さを見ます。はすざわさんはバランスからいって
    明らかに腕が太いです」。

   ふむ。あんまり腕のトレーニングはしてないけれど、仕事柄
   (肉体労働者なもんで)なんでしょうか。
   
   370
   ↑⑥袖丈   写真には写ってませんが、肩の部分で指一本分の
       ゆとりをとります。肩パッドや芯のためです。

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↑もちろん反対も。

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↑⑦胸囲

373
↑⑧中胴

374
↑⑨ヒップ

375
↑⑩ウエスト ここからはパンツ用 。しかし、姿勢悪いなー。

377
↑⑪パンツ総丈

378
↑⑫股下

・・・とまあ、普通はせいぜいここまで(それでも多い)なのですが、
石田原さんの本領発揮はここからです。

384
↑ここで、前回の「鳩型採寸器」の出番となります。
 どう使うのかというと・・・。

386
↑・・・んな感じで、腋の下でバンド部分を巻きつけます。

385
↑後ろ側 なんか、この拘束っぷりはイケナイ世界へトリップ
 しそう・・・。

 「せめて『大リーグ養成ギプス』といってください(笑)」

・・・ま、その手のネタはさておき、ここを起点としてメジャーメント
  していくわけです。

380
↑ショートメジャー① 鎌深

381
↑ショートメジャー② 前肩

382
↑ショートメジャー③ 越肩

383
↑ショートメジャー④ 腹丈

 そして、最後に少し離れたところから体型観察をして終了、です。

 まーしかし石田原さんの採寸の早いこと早いこと!写真撮影のために
ある程度ストップかけながらの採寸にも関わらず、これだけの工程が
たったの10分そこそこ。撮影がなければもっと早かったでしょう。
事実、採寸しながらもおよそ「迷う」ということが全くない!
プロの仕事というものを見せつけられた思いです。

 ・・・以上ではじき出された数値をもとに、被採寸者の
肩の位置」が決定されます。また、その上で、
着用者の体型に応じて鎌をギリギリまで浅くする、つまり
高くて狭いアームホール」設定が可能になるというわけです。

 このアームホールについて私はずっと勘違いをしていました。
アームホールというのは着用可能な限り狭いほうがいいと・・・
これが必ずしも間違いというわけではないのですが、それには

1)着用者に応じた正確な肩ポジションと

2)腕を前に動かすための胸部のゆとり すなわち「イングリッシュドレープ」
 (イタリアでは「オメロピット」という)の存在

 ・・・などが前提として必要となるわけで、そういった配慮なしに単純に
 アームホールを狭くすると、単純に窮屈な服が出来上がることになります。
 そう、「着心地の良い、動きやすいジャケット」には様々な要素が必要なのだと
 改めて感じさせられたのでした。

 で、採寸しての私の体型の特徴なんですが

 「ちょっと特殊体型、ですね」。

 ーはあ・・・。

 「あきらかに肩が前肩になっている。つまり前方向に肩がついている
  んです。肩幅のサイズでいえば44でピッタシなんですが、それで
  標準のジャケットを着られると、腕を前に上げるときに肩がつっかえる
  んじゃないですか?」

 いや、おそれいりました。その通りです。それでずっと困っていたんです!

 ・・・以上、採寸だけでもとっても刺激的な体験をさせていただきました。

 しかし、本番はこれからです。この後、ビスポークで最も大切なこと、
「私も採寸はできるんですよ」と仰る奥さんが「これだけは私には絶対
できません!」と断言すること、すなわち「仮縫い」の工程があるわけですが、
それはまた後日に終了しだい、レポします。

 

  

2007/12/11

シリーズ 実録!!!石田洋服店(笑)=①

 住所等はホームページからどうぞ!→http://www.oshitate.com/home.htm

361

(石田原さん、まるで「仁義なき戦い」に出てくるようなタイトルをつけてしまい、
 真に申し訳ありませんっ!)

 尚、このシリーズは間をおきながらの連載とします。

 インターネットでも評判の、イタリアのサルト(仕立て屋)式のハンドメイド
スーツやジャケットを、分業制で生産コストを下げて提供してくれる
テーラーさんです。

 今回は採寸だけでしたが、いろんな意味で衝撃的というか、
興味深いことばかりで、本当に楽しかったです。追々お話
させていただきます。

 さて、私はスーツやジャケットのオーダー自体は初めてではないのですが、
仮縫いつきのフルビスポークとなるとさすがに経験がなくて、今回が初めての
チャレンジとなります。で、それにあたって何故ここを選んだのかというと、
1にも2にも、メジャーメントの方法の一つである「ショートメジャー(短寸式)」
というものを体感してみたかったから、なのです(今のところここ以外でこの
採寸法をとっているところを知りませんので)。

 ・・などといっても、ここを見ていただいている方の大半にはチンプンカンプン
でしょうから、服飾評論家の遠山周平さんの著書、「背広のプライド」(亀鑑書房)
から、ショートメジャーに関する部分を引用しておきます。

>短寸式(ショートメジャー)というのは、体型をそのまま製図上に表現する
 昔ながらの採寸法です。背広を作る上でもっとも難しいのは、胸まわりと
 肩まわり部分といわれています。というのも、人体の中でこの部分が
 最も複雑な曲線がからみあっているし、また腕の動きなども考慮しなくては
 ならないからです。

 たとえば、肩が上がっていたり、下がっていたり、猫背だったり、反り身だったり
 という体型をもった人のフィット感や着心地の良否は、すべてこの部分の出来に
 かかっているといっても過言ではありません。つまり、短寸式とは、この胸まわり
 の部分を特に入念に採寸する方法なのです。この採寸箇所は、鎌深寸、前肩寸、
 越肩寸、前腋寸の4ヶ所ですが、いずれも胸回りの寸法取り(バスト寸)より
 測定距離が短いのでショートメジャーリングシステムと呼ばれているわけです。

 また、この採寸法は、着用者の体の反屈や肩の高低が割り出せるので、
 変則的な体型には有効なシステムといえるでしょう。しかし短寸式を正確に
 採寸するには、大変難しい技術(たとえば初心者が3度計れば3度とも違う
 寸法になってしまうことがあるほど)が必要です・・・。<

                * * * * *

 さて、上の写真は店内ですが、とにかく生地の多さにビックリ!
店長の石田原さん曰く、「普通テーラーでもこれだけの生地を持っている
ところはないと思いますよ」。とのことですが、全くもって圧倒的です。
やはり、前身として生地の輸入に携わっていた故、なんでしょうね。

 

360
 ↑机に並べられた生地、生地、生地・・・。
  目移りなんてもんじゃないです。生地決めだけで軽く1時間半は
  かかりました。(色やスタイルなど、ほぼ何をつくるか決めていた
  にも関わらず!)

 もともとブラウン、それも焦げ茶ソリッドのジャケットと、それに合わせる
パンツを考えていたので、悩んだ末、以下の生地にしました。

362
 ↑左がジャケット用でドラッパーズのウール100%の生地。
  ウーステッド(表面が滑らかな梳毛の羊毛生地。反対に強くてやや
  毛羽立った紡毛生地はウールン)ですよね、これ。
  右がパンツ用で、スキャバルのミディアムグレー。

363
 ↑どうも、服地って写真にすると色や質感がわかりにくい・・・。
  ブラウンといってもカントリー調ではなく、随分とドレッシー。
  「ウール100%のくせに、なんか妙に光沢があるんですよ。
  この生地は、バンチ(生地帳)にものってなくて、これきりで
  終わり、です」。とは石田原さんの弁。

364
 ↑パンツの生地。最初はウインターコットンの白系にしようかと
  考えていたのですが、ジャケットが随分ドレッシーな感じなので、
  石田原さん(並びに奥さん)と相談の上、ウールのミディアムグレー
  にしました。

 で、次回は採寸の実際です。(続く)

 追記・・ショートメジャーで決定的な役割を果たすのが、
     ↓この「鳩型採寸器」という道具です。どう使うのかは、次回
     ということで。

384

 
 

2007/07/25

夏のお買い物

 この夏シーズンの無駄遣いお買い物について少し。

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 AKG(アーカーゲー)のヘッドフォンK701・・・AKGはオーストリアのヘッドフォンメーカーで、K701はそのフラッグシップ機。以前にチャイコフスキー「悲愴」のエントリーで触れたように、ぼくの部屋ではいいスピーカーがあっても全くその機能を使いきれないので、その分いいヘッドフォンが欲しくて、資金の都合とにらめっこしつつ、結局この夏に買うことにしました。デザインは・・・正直ダサイ!大きさの問題を抜きにしても、少なくとも、これを装着して街歩きをしようなんて気には全くならない。本当に音楽鑑賞に特化したヘッドフォン。で、音は一言で言ってとにかく素直。2ちゃんあたりで「キング・オブ・無難」といわれているのも納得。ものすごーく解像度の高い音というわけではないけれど、音楽に集中するにはちょうどいいと思いました。特筆すべきはヴァイオリンのソロ。普通、ヘッドフォンで聞くとヴァイオリンのソロってキンキンしてつらいけど、これはキレイに再現してくれてとても聞きやすい。このへんはオーストリア製品の面目躍如といったところか。エージングはまだまだこれからなので、今後どう変化していくのか楽しみ。もっともインピーダンスが高いので、i-podなどのポータブル音源ではまるで音量が取れないとのこと。あと、まだこれでロック、ポップスを聴いてないので、エージングをしつつ、また改めてレポする予定。

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 オロビアンコのトートバッグ・・・チンクエクラシコさんにて購入。デルガのショルダーバッグをたすきがけで身につけていたけれど、シャツなどの襟のある服だとラインが崩れやすいし、なによりジャケットだとせっかくのラペルの返りがぺったんこになるので、ジャケットスタイルにフォーカスしたトートが欲しくて、購入に至りました。かなり容量のあるバッグで、本を持ち歩くことの多いぼくにはありがたい限り。ジャケパンに限らず、あらゆるカジュアルに重宝しそう。革とナイロンのコンビですが、最初、革の部分がお疲れのような気がしたので、デリケートクリームをやや多めに入れておきました。

  とどめに・・・スピーゴラにて2足目を発注。もっとも支払いのほとんどは来年ですが。スタイルは濃い目のバーガンディのセミブローグ。フィッティングについて、以前書いたように右足小指の外側の「当たり」が気になったので、それを伝えてラストの改良をお願いする。あと、左足の羽根が完全に閉じるので、それも修正対象に。ヒールカップをもっと小さくすれば良いのでは?という考えは錯覚で、今がジャストなのでこれ以上は小さくしないほうが良いとのこと。そのため、踏まず部分の押し上げで対処するのだそうです。ビスポークは1足目で終わっては意味がないと考えていたけれど、こうして2足目を発注して改めてその思いを強くしました。ただ、し、支払いが・・・(大量の発汗)。

 ・・・あと、他にも小物いろいろや、秋以降の食べ歩き資金などをキープして、この夏のボーナスも無事昇天いたしました。冥福を祈りたいと思います。

2007/07/09

シャツキタ~

 (今日〈7月9日〉到着したので、前回の続きより先にエントリーします)

ちょっと書類の手違い等がありまして、時間がかかっていたのですが、ハッピークリーニングさんに出してあったシャツが帰ってきました。

 えらく大層なケースに入ってきました。手持ちのシャツと大きさの比較をば。要は畳まずにハンガー仕上げのままの配送というわけです。

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 一応シャツを写しておきますが、もとの「まっ茶っ茶」状態を写し忘れていたので、参考にはなりませんね。

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 添付書。さすがにしっかりしています。ちなみに、色移りを処置するにあたって、ボタンは全部外すのだそうです。さすが!

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 カフスとエリ。一番汚れの残りやすいところで、実際、酸化黄変してしまっていて、特にカフスは完璧とはいかなかったようです(添付書にもその旨書いてあるました)。とはいえ、自分でエリソデケアを使いながら洗ったときとはやはり雲泥の差。エリなんか見た目はどう見ても真っ白。

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 やはり仕上がりは非常に満足のいくものでした。まあ、値段が値段なんで、そうそう利用できそうにはありませんが、とっておきの服を、ここぞというとき、には、やはりお世話になろうかと思います。とりあえず、次は同じマフェイスの200番手のシャツを出してみようかな。あと、チンクエさんでつくったジャケットも。でも、ジャケットになると、一体いくら飛んでいくのやら。

 なんせ、収入も省みず、値の張るモノを買うことが多いので、せめてケアしながら長く着用しないと。

2007/06/26

ソールの貼り付け

 

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今日シャツのクリーニングが届く・・・つもりでいたら、1週間間違えてて、来週だそうです。残念!(←死語)

 さて、それとは別に靴ネタをば。

 CAR SHOEという、イタリアのドライヴィングシューズがあります。なかなか良いフィット感で気に入っていたのですが、なんせドライヴィングシューズですから、いわゆるソールが無くって、アッパーと同じ革にペブルが引っ付いているだけで、言ってみれば「革手袋で歩く」ようなものなのであります。_221_1

  ←こんな感じ。

 決して不愉快なわけではないのですが、やはり長時間の歩行には向かないし、ある程度歩くと底が破れてしまうし、そうなってからでは遅いので、ソールを貼り付けようと、「修理屋」さんにお願いすることにしました。

 

 お店紹介をしたいブログとしては不本意ながら、場所が不便なので、直接訪問は断念し、メールと宅急便でのやりとりとなりました。

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 ←完成品。レザーソールの前後にラバーを貼り付けてます。(マッケイ製法)

 やはり歩きやすさは断チです。今までならおっかなびっくりだった砂利道も、遠慮なく歩けます。これで、寿命も延びるし。安くはないモノだから、大事にしないと。修理屋さんに感謝!(ただの貧乏性)

 あと、嬉しかったのが、アッパーも手入れしてくれていたこと。おそらくデリケートクリームでしょうか?本来はツヤだしのためのクリームではないのですが、しっとり感がでていて、ある意味新品以上の質感になってました。

 で、改めて手持ちの革靴、デリクリで手入れしました。特に、スピーゴラの靴なんか、もとの革質がいいせいか、すんごく味のある質感になった気がします。

 「うーん、いいツヤじゃのう、ふおっふおっふおっふおっ」とまるで水戸黄門かバルタン星人のような高笑いを浮かべつつ、手入れは続くのでありました。

 

2007/05/31

ハッピークリーニングとアンハッピーなわたくし

 *追記しました。

(どーも大文字だけだとブログの構築が上手くいかないことが多いので、今回から文字サイズを通常ベースに戻します)。

2年ほど前に、コルウさんで「エマヌエレ・マフェイス」という、イタリアはベルガモのシャツファクトリーのシャツをつくりました。
 裾だし専用(にも関わらず、何故かダブルカフス)でつくった白シャツですが、大層気に入りまして、着る機会が多かったのですが、うっかり色落ちしやすいリネンのブラウンのパンツと一緒に洗ってしまいまして、シャツ全体がまっ茶っ々になってしまいました。
 すっかり凹んでしまって、しかし何とかならないものかと必死になって自分で漂白しながら何回も洗ったのですが、やはり元通りとはいかず、「高いシャツだったけど、あきらめなしゃーないのかな・・・」。としょげ返っておりますと、CINQUE CLASSICOのフジワラさん曰く、「ハッピークリーニングに出されたらどうですか?高くはつきますけど・・・」と言ってくださったので、高くついても、買うよりマシか・・・と思い、思い切って送ってみました。
 早速電話が入り、見積もりに。

 
 「もしもし、ハッピークリーングです。(女性の声)。この度はありがとうございます。早速お見積もりなんですが(カシャカシャとキーボードを叩く音)」。

ーあ、はいはい、お願いします。(2~3千円は覚悟しないといかんかな)。

 「ええと、カフスの汚れ、襟の汚れ、あと、一部に細かなシミなどが見受けられまして」。

ー(さすがによく見てるな)ええ、はい。

「それらの処置を含めまして代金のほうが・・・」。

ーあ、あとですねー。ちょっと他の衣料から色移りさせてしまいまして、その脱色もお願いしたいのですが。

「それは、全体の、ということですか?」

ーそうです。

「そうしましたら、さらに特殊な処置が必要になりますので、お高くなってしまいますが・・・」。

ー(覚悟の上さ!)結構ですので、お願いします。

「では、その処置を含めまして、ええと(カシャカシャ)・・・」。

ー(また千円くらい上積みになるのかな?トータルで4千円くらい行ってしまう?たかがシャツ1枚で?まさか。でも・・・。ドキドキ)。

「(明るく)合計で8千百円になりま~す!」

は、はっせんひゃくええええええええええええええええええええええんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん?!(←断末魔のディオ風に)

 ・・・というわけで、今尚立ち直ることができてません・・・・・・・・・・・・。

 仕上がりはまたレポします、多分・・・。

*追記 受け取りは6月25日の予定です。一部で随分と気になさってくださっているようで、ありがとうございます。

2007/03/27

ようやく・・・

 La spigola(ラ・スピーゴラ)のディナーシューズ                     (キャップトゥ・オックスフォード)

 鈴木幸次さんの手による、わが生涯初のビスポークシューズがこのたび完成と相成りました!(写真クリックしていただければ拡大します)。

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 えー、まず、タイトルなんですが、ご承知の通り、ディナーシューズなんて靴のジャンルは存在しません。英国式に言えばキャップトゥ(オックスフォード)、米国式に言えばストレートチップということになります。じゃ、なんでこんな名前を勝手につけたのか?と言うと、使用目的が主にちょっと気合の入った晩メシを食べに行くため・・・だからです。キャップトゥという靴は本来は昼の正礼装(いわゆるモーニング)用の靴でありまして、そこから転じて昼夜を問わずパーティ用などにも使われたりするのですが、実際ぼくの生活においてパーティにお呼ばれすることなど結婚式ぐらいしかないわけで、もちろんそれ用と考えてもいいのですが、それよりも、美味しいものを食べに行くための靴と考えた方が履く機会も増えるだろう、服にもディナージャケット(タキシード)というジャンルがあるし・・・と考えまして、こういう呼び方にします。あしからず。

 ちなみに、アッパーはもちろん、ライニングも黒、ソールもカラス仕上げの黒で、まるでかつてのコム・デ・ギャルソンのカラスルックならぬカラスシューズですなあ、こりゃ。_199_1

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 シューツリーに名前が入っています。嬉し恥ずかし・・・って感じ。

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              *******

 さて、この靴の到着前、ぼくにとってのディナーシューズといえば、当時清水の舞台から飛び降りるつもりで買った、泣く子もだまる(ウソ)ジョン・ロブのガルニエというプレーントゥ・オックスフォードでした。そこで、これをサンプルにしながら、既製靴とビスポークとの違いを簡単に見ていきます。サイズ的には、足にあわせたか否かの違いはあっても、基本的にかなり近い大きさです。

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 手前がジョン・ロブのガルニエ、奥がスピーゴラです。買った当時はなんてキレイなフォルムなんだ!と感嘆したガルニエですが、こうして並べると、随分モッサリしているように感じてしまいます。(でも、お世話になった靴です)。

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 違いの出やすいウエスト部。真っ黒なので少し判りにくいですが、左のスピーゴラの「攻めた」ウエストの絞込みがお分かりいただけますでしょうか?

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 左がスピーゴラ、右がガルニエ。ヒールカップの大きさの違いをご覧いただければ、と。あと、これはあくまでぼくの注文ですが、ピッチドヒール(先細りのヒール)と合わせて、ヒールの高さそのものを高くしてもらっています。

 あと特徴としては、普通トゥとヒールに入れる芯をサイドにも入れているということでしょうか。これは、「フォーマルなので、できるだけ長持ちするように」との鈴木さんの考えによります。だから「最初は硬いですよ」と。それから、ガルニエの5アイレットに対して6アイレット。よりエレガント路線といったところでしょうか。それから、写真では判りにくいですが、トゥは鏡面仕上げになっています。自分の顔が写ります。恥ずかしいです。

 で、嬉しがりのぼくとしては、「少しずつ慣らしてください」との鈴木さんのアドヴァイスを無視して、翌日にいきなり明石駅から伊川谷の自分の家までの一時間ウォーキングを敢行してしまいました。アホです、ハイ・・・。

 やはり、フィッテイングは素晴らしいですね。いきなりの長時間歩行にも関わらず、「痛くないピッタリ感」のおかげで全く苦痛を感じずにすみました。

 もちろん、この一足で終わってしまってはビスポークの醍醐味の半分も味わってないわけで、木型の微修正を加えつつ、またオーダーするつもりです。例えば、①右足小指の微妙なあたり、②ヒールカップとウエストはもう少し「攻め」られそう、などといったことを鈴木さんと話しつつ、次の構想を考えるつもりでいます。が、今はともかく、これの履き慣らしが第一です。やっぱり、素直にうれしいですね。鈴木さんと、「コルウ」の島田さんに感謝したいと思います。

 

2007/01/26

ル・ボナーの細ダレス

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 ↑買うべきか、買わざるべきか、さんざん悩んだあげく、結局買ってしまいました!ル・ボナーさんの細ダレスバッグです。  実は当初はダレスではなく、普通のブリーフにしようかと考えていたのですが、その日はもう在庫がなく、新たにつくるのにだいぶかかるとのことでしたので、予算オーバーだったにも関わらず、思い切ってしまいました。もともとこっちのほうが本音では欲しかったし。

 ル・ボナーさんは六甲アイランドでご夫婦ふたりでカバンづくりと販売を手がけています。お二人とも職人にありがちなガンコそうな感じはなく、めっちゃフレンドリーでした。ただ、会話の端々に自分たちのつくるモノへの自負と、革への愛情がビンビン伝わってきます。  革はイタリアはワルピエという家族経営の小さなタンナーがつくる「ブッテーロ」というタンニンなめしの革。復元力の強さが特徴で、「爪傷とかあまり気にせずに」。とのこと。

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 ↑細ダレスですので、容量はあんまし・・・。と、あにはからんや、結構マチがあります。「実はノートパソコンも入りますよ」。とは、奥さんのハミさん。  手入れは基本水拭きと乾拭きで、特に取っ手の部分に注意して、あとオイルとかは塗らないで・・・等々、メンテの説明もすっごく丁寧。それから革にまつわるとてもここでは書けないようなウラ話など、ただの買い物では終わらない、とても良い時間を過ごせました。

 正直、ダレスは自分には重いかな・・と。物理的にではなく、精神的に。だいいち、バリバリのブルーカラーの自分がこのバッグを持つのは、たまの研修他極めて限られたシチュエーションなわけで、普通に考えればもったいない・・・。

 でもでも、ホントに欲しかった。わが街神戸が誇る職人さんの一人(二人)である松本夫妻の手がけるこのバッグが欲しかった。サイフには間違いなく負担ですが、後悔はしてません。

 おそらく、修理もこのお二人にお願いしつつ、ぼくとこの細ダレスの付き合いは一生続くでしょう。そう、生まれて初めて、ぼくは自分の寿命より生きるであろうモノを、そのコトを意識しつつ買ったのでした。

2007/01/23

La spigola その②

 鈴木幸次さんです。ほんとは写真撮られるのがあまりお好きではないようで・・・。申し訳ないです。

 

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 -もともと婦人靴のパタンナーだったんですよね。

 「はい」。

  -そのつもりでイタリアにも行かれて、それがまたなんで紳士靴のほうに?

 「やっぱり、ロベルト(ウゴリーニ)ですかね。彼の靴を見て、ああ、いいな、きれいだなと思ったし、それが手によるものだというのが余計に・・・」。

  -疑問なんですけど、修行時代のビザって・・・。

 「ぼくは学生ビザでした。人のところで雇われる分においては大丈夫みたいですね。ただ、自分で何かしようとなるとそうはいかないみたいですが」。

  -で、向こうで約3年間の修行を経て帰国されて、ご自分の工房で靴づくりをはじめられた訳ですが、やっぱり最初のフィッティングとか、まして納品とかは随分緊張されたのでは。

 「しましたね。今でも緊張しますよ」。

  -そのはじめの頃と、今ではやはり随分仕上がりの差が。

 「うーん、技術的には上手くなったんでしょうかね。なんとも・・・。ただ、つくる靴の雰囲気とかはイタリア時代とは変わってきてるかなーと。どっちがいいとかいうんでなくてね」。

  -というのは?

 「やっぱり日本だと、コバの張り出しを押さえて欲しいとか、ステッチの細かさ、正確さとかを求められるが多くて(ギク!まさにぼくがそんな注文でした)。だんだん自分のつくる靴がイタリアから離れていってるような気はします」。

  -なるほど。じゃ例えばブランキーニみたいな靴なんか・・・。

 「ああ、いいかもしれないですね。実際つくるかどうかは別として」。

  -それにしても、凄い当たり方ですよね。

 「まあ、いろんな意味でタイミングもよかったし。まだぼくが日本に帰ってきてこの仕事はじめたときは、靴の職人なんて数えるほどでしたからね。逆に今は職人もそのタマゴもたくさんいて、どうなっていくんでしょう」。

  -そうですね。そんなにビスポークの需要のパイが伸びるとも思いにくいし。

 「ええ、だからこれから独立していくっていうのはかえって大変かもしれないですね」。

  -そんななかで鈴木さんはメディアに取り上げられる機会も多いし、安泰なのでは?

 「いやいや、まだまだ。それに雑誌にとりあげられるっていってもほとんどが靴とかファッション誌ばっかりなんで。もうちょっと違う媒体にもとりあげてもらわないと(笑)」。

  ーそうですかねー。贅沢ですよ(笑)。あと、これからやりたいこととかは?

 「うーん、できれば自分のホームページをもてたらいいなーと。そんな大層なものでなくていいので」。

  -そういえば、イタリアに毎年行かれるんですよね。革の仕入れで?

 「ええ、革もそうだし、あとは工具ですよね。日本じゃどうにもならないモノが多いんで」。

  -最後に、イタリアでの修行時代、現地の女性と「ごっつあんです」みたいな経験は?

 「ないない、ないです。男が向こうに行ってもそんないいことありませんよ(笑)。女性はそりゃいろいろあるみたいですけど(笑)・・・」。

  ・・・鈴木さん、ありがとうございました!靴待ってます!(笑)

                           La spigola  おわり

2007/01/15

La spigola(ラ・スピーゴラ) その①

 ビスポークシューズ(注文靴)の世界で,もはや彼を知らぬ者はないといった快進撃を続ける男,それがスピーゴラの代表である靴職人、鈴木幸次(すずき こうじ)さんです。あまりにこの世界で有名になりすぎたため、注文が殺到して、納期がものすごーく長いことでもすっかり有名になりました。(ちなみにぼくの分も約1年半かかってまだできてません・・・)。

 今さらぼくがいうことでもありませんが、簡単にプロフィールを。

ー1976年神戸生まれ。靴のパタンナーであった父の下でパターンを学ぶ。その後イタリアへ。デザインスクールでデザインを学ぶ。フィレンツェのス・ミズーラ(オーダー)の靴職人、ロベルト・ウゴリーニの下で約3年間にわたり、ス・ミズーラの靴づくりを学ぶ。2001年帰国。神戸市長田区に自身の工房を開き、現在に至るー

 ハンドソーンを主体に、いろいろな製法をマルチにこなします。が、ともかく彼の靴の特色はその色気ムンムンなフォルムでしょう。例えごくごくありきたりのプレーントゥ、キャップトゥ、セミブローグなどを扱っても、彼のつくる靴には独特の色気が漂います。が、決してモード靴のようにぶっ飛ばず、あくまでオーソドックスなクラシック靴の範囲内ですので、シチュエーションを選ばないのもいいところです。

 注文自体は神戸の有名なテーラーであり、セレクトショップでもあるCOL.(コルウ)さんを通してお願いしたのですが、ぜひ一度彼の工房にお伺いしたいと思い、念願かなっての訪問となりました。一度画家のだいさんとお伺いして、その後あまり間をおかずにひとりで再訪しました。鈴木さんのお話はその2回でお聞きしたものです。

 実は2回目の訪問の時に、工房の外観や中の様子を撮影させていただこうと考えていたのですが、許可が下りなかったので、少し趣向を変えて、彼の私物を中心にご紹介しておきます。あ、彼自身はとてもあたりの柔らかい好青年ですので、念のため。

 _121_1 フィレンツェの老サルト(仕立て屋)で仕立てたスーツ。彼のご希望で名は伏せておきます。構築的な肩と、全体の柔らかいドレープの対比が印象的です。あと、脇から腰ポケットへの斜めに入るダーツはフィレンツェのサルトのお約束。写真ではわかりにくいですが、これスリーピースなんですね。 多分、「Men`s Ex 07年 1月号」の写真で写っていたのがこれのベストだったような気がします。(間違っていたらごめんなさい)。「何をどう言っても、こういう風にしかつくってくれないんです(笑)」。そう言いながら、心からお気に入りの様子。ただ、このサルトも後継者は存在せず、一代限りなのだとか。向こうのサルトは共通してこの問題に悩まされています。例えば、ワインづくりの分野ではどんどん若手が新規参入していくのに、イタリアのサルトのスーツはこれからどんどん「伝説」の世界になっていくのでしょうね。残念ですが・・・。

  同じサルトの手によるコート。=ーこれはなんていう種類のコートなんですか?「うーん、なんていうんでしょうね」。=  チェスター(フィールド)やセミチェスターってわけでなし、ちょっとわからないです。「向こうの感覚では田舎くさい」らしいです。

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なんと工房にシガーのためのセラーが!温度、湿度とも常に管理しておられます。ちなみにシガーの購入は主に京都で。

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納期を待つ靴。「これは写しておいてください」という会心の作。人の靴なので、あまりいろんな角度からは撮影できませんでしたが、革の美しさといい、全体のシェイプといい、細かいつくりこみといい、さすがの一足。色気たっぷりです。あー、早く自分の分が欲しいー!(しかし、トゥが切れてるのは写真として致命的ですねー。反省)。

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                     ーあと、鈴木さんのお話です(続く)                              

2007/01/11

思えばこれから始まった・・・

 思い返してみると、以前ご紹介したCINQUE CLASSICOさんとのお付き合いはここから始まったなー、と自分の部屋にちらかってある二つのものに目が留まりました。

 ひとつはヤコブ・コーエンのデニム。

 もうひとつはアンドレア・ダミコのクロコのベルト

 デニムは、まあ、ある程度買う気だったからいいのですが、ベルトは完全に想定外。しかも、クロコなんて、自分が買うことになろうとは、夢にも思いませんでした。最初は隣に置いてあったフェイクで充分、と思っていたし。

 ところが、その想定外が最もヘビーローテーションになるのだから、世の中分からんもんです。その時のオーナー・フジワラさんの言葉、「衝動買いに意外といい出会いがあるもんですよ」。がまさにその通りになりました。

 その後も、いろんなモノを買いました。そして、それ以上にいろんな人との出会いがありました。今ベルギーで活動中のだいさん夫妻をはじめ、ひであき氏、beyan氏、Fujimura氏、その他のいろんな方々。そして、それらの方々に触発されてはじめたこのブログ・・・。

 街中の、ほんとに小さな服屋さんは、ぼくにとって大きなコミニュティーの場となりました。

 買う、ということだけとれば、物凄い買い方をする人は沢山います。残念ながらぼくにはそんな財力はないけれど、ゆっくり、ゆっくり、だけどできるだけ長く、お付き合いさせていただくつもりです。

 何より大切なこと。このお店とフジワラさんなしでは、この「店と物と、そして人と」のタイトルは存在し得なかった。

 デニムとベルトを眺めながら、そんなことを考えました。

 そのオーナー・フジワラさんは、ほんの少しの間お店を閉めて、イタリアに買い付けの旅に出ます。そのみやげ話を楽しみに、またぼくは足を運ぶでしょう。

 気をつけて、行ってらっしゃい。さらに良いお店となるために・・・。

                  以前のフジワラさんとのお話はこちら

2006/09/11

CINQUE CLASSICO その3

 オーナーのフジワラさんにお伺いしました。

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 -そもそもCINQUE CLASSICOのネーミングの由来は?

「テキトーです(笑)。いえいえ、もともとクラシコ・イタリアというのは、イタリアのフィルターを通した、イギリスのクラシックスタイルのことなんです。で、ぼくはクロージングのなかでもとくに靴が好きなんですが、ぼくの靴のサイズがイギリス表記で5(ファイブ)なんですね。で、それをイタリア読みすると、5(チンクエ)になるんですね。まあ、そのへんから。最終的にはフィーリングですが(笑)」

 -お客さんの年代層とか職業に特徴はありますか?また、特にどんな人に来て欲しいですか?

「だいたい30~40代が中心ですかね。職業はほんといろいろ。サラリーマンの方から社長さんまで、いろんな方が来られて、いろんな刺激があります。楽しいですよ。だから、とくにどんな人に来て欲しいっていうのではなくて、いろんな方に来て欲しい。強いていえば、仕事なりプライベートなりで、なんらかの向上心を持っている方、でしょうか。」

 -「クラシコ・イタリア」という言葉からどういったことをイメージしますか?また、それを踏まえて、とくにどういったコーディネートをプッシュしていきたい?

「伝統的であり、かつ現代的でもあり・・・。そしてなんといっても、イタリアの陽気な空と海、ですね。コーディネートとしては、もっともっと皆さんに、ジャケット&スラックスを楽しんで欲しい。日本人は、デニムとカットソーとか、その方向ではすごくいい線いってると思うんですよ。でも、例えばイタリア人は、普段からジャケパンスタイルを楽しんでいて、それが本当にサマになっているんですね。だから、うちではそういったスタイルを積極的におすすめしていきたいです。」

 -靴好きとのことですが、お店の靴のなかでも、とくにこれが、というのは?

「うーん。なにかひとつ、となれば、オーベルシーですかね。これほどクラシックなドレスシューズの範囲内でありながら美しい靴はないんじゃないでしょうか。ほんとにエレガントという言葉がぴったりだと思います。パリとの価格差があまりないのも魅力です。」

http://www.cinqueclassico.com/ctimgdata/img/img060625141030M_01.jpg

 -今後の夢は?

「そりゃ、セレブになること(笑)。ウソ!とにかく、今は神戸の人を中心に、ひとりでも多くの人に愛されて、必要とされる店になりたいですね。今はそれだけです。」

 - 最後に、これを見てくれてる人にメッセージを。

「とにかく、服は可能な限りいいものを手に入れて欲しいんです。例えば、ウチの店をみてもらえればわかりますが、一般的に見て決して安くはない。むしろ高いかもしれない。でも、それは全て素材や縫製など、理由があるからであって、意味もないのに値段だけ高いものは決して置いていないつもりです。それに高いといっても、手も足もでない値段ではなくて、ちょっと頑張れば買えるものばかりです。」

「皆さんにも、とっておきのお気に入りの服を身に着けたときの、ちょっと背筋の伸びる緊張感とか、高揚感とか、経験がおありだと思うんです。いい服を着たら、行動さえも変わる。そういう感覚をもっともっと味わって欲しいし、そのためのショップでありつづけたいと思ってます。」

                         CINQUE CLASSICO おわり

                     *フジワラさん、ご協力ありがとうございました!

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2006/09/10

CINQUE CLASSICO その2

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「歌は世につれ、世は歌につれ」といいますが、たしかに音楽は時代を反映します。しかし、ファッションはそれ以上に世の中の流れを写し取ります。服飾史は本当に面白い。まさに「服は世につれ、世は服につれ」であって、このことについてもいずれ書くつもりです。

 さて、店内ですが、前に書いた通り、決して広くはありません。しかし、服好き、特にイタリア服好きにとって、よだれがでそうなアイテムが沢山あります。

 まず、カジュアルではスメドレーやナポレオンエルバのニットやポロが目をひきます。これから寒くなってくると、当然ニットは必需ですから、まだこの店になじみのない方はこのあたりからどうぞ。あと、ヤコブ・コーエンのデニム。ぼくも買いましたが、つくりがすごくいい。デニムを作業着として捉えるのではなくて、あくまで「トラウザーズ」の一環として考え、ジャケットにあわせる前提でつくっているとのこと。とくに、このストレートタイプは夏のカットソーや白シャツ、もちろんジャケットにと、あらゆるトップスとあわせて大活躍です。そして、このアンドレア・ダミーコのベルト。最初クロコってものすごーく抵抗があったのですが、いまではすっかりデニムのお供としてヘビーローテーション入りです。最初に考えていたよりずーっと上品で、ほんといいアクセントとして重宝してます。お店には他にいろんなタイプがあるので、是非ごらんになってみてください。これからの季節にむけて、ベルスタッフなんかも充実してくるそうです。

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ドレスでは、まずシャツのバルバやダノリス。そして、カンタレリやイザイアのスーツやジャケット。なかでもイザイアは、モードブランドのスーツやジャケットを沢山手掛けていることもあってか、ナポリのサルトリア的なつくりと現代的なシャープさを併せ持った、さすがのもので、現物を見るたびに(値段もふくめて)ため息をついてしまいます。

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 あと、オリジナルのスーツやジャケット。これがほんとにいい。もともとここのオリジナルを手掛けるファクトリーは、イタリア的なスーツ、ジャケットづくりを得意としていて(ジャンニ・カンパーニャ的?)、大手のセレクトショップからもいろいろ声をかけられているそうですが、それらを全部断って、こういった小さなショップを中心にこつこつ営業されているとのこと。既成、オーダー両方ありますが、どちらも素晴らしい。オーダーは仮縫いこそしませんが、ほとんどの要望を聞き入れてくれて、かつ、カッコいいスーツやジャケット=しかもクラシックを大きく逸脱せずに=を、とても良い仕上がりで届けてくれます。これからスーツやジャケットを揃えていこうという方、持っているけどもう少しいいものが欲しいという方に文句なくおすすめです。

 最後に靴。オーベルシィー、マネッティ、ヤンコ、ディ・メッラなど、それぞれに特徴があってかつ素敵な靴が並びます。フジワラさん自身が靴好きを公言するだけあって、彼との靴談義は本当に楽しい。それぞれのブランドの特徴から手入れの方法、もっとも大切なフィッティングや果ては業界裏話(?)まで、彼の話はいちいち楽しくかつ正確で、彼との会話だけでも、このお店にいく価値があります(でも、買ってください!)。

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 次回は最後に「フジワラさんに聞く」です。

 

2006/09/03

CINQUE CLASSICO その1

 本当にいい服との出会いは、本や音楽などと同じく、人生そのものに影響を及ぼす力を持ってい_017ます。

 まだまだぼくたち男性陣、特に年齢層が上の方の中には、服好きに対する偏見をお持ちの方がいらっしゃる。しかし、優れた服というのは、人間の体の構造に対する理解、主素材や副資材に対する理解の上に、パターン、カッティング、縫製など沢山の要素を持つ、あくまで実用品でありながら、アートとしての一面をも持ち合わせた、大の男が一生をかけて追いかける価値のあるものだとぼくは固く信じております。こんな楽しい世界を女性に独占させるなんて、もったいない!

 ところで、メンズのファッションの世界で、「クラシコ・イタリア」という言葉が盛んに喧伝されたことがあります。いや「ことがあります」と過去形で言うのは正しくなくて、特に重衣料の世界では、現在進行形で世界中に影響を及ぼしている=反発も含めて=と言い切ってよいと思います。

 この「クラシコ・イタリア」という言葉、厳密にはクラシコ・イタリア協会という団体もしくはそれに属するファクトリーのことを指すらしいのですが、日本においては一般に、イタリアの服飾全般において、高品質なものづくりをしているファクトリーのなかで、モード系ブランドを除いたものを指すことが多いようで、ぼくもそのつもりで使っています。

 さて、このクラシコ・イタリア、日本においては二通りの捉え方があるようです。ひとつはあくまで「クラシコ」の名の通り、クラシックなシルエットやコーディネイトにこだわり、そこからはずれたそれを「インターナショナルでは通用しない、またはエレガントではない」と否定的に捉える方々。もう故人になられましたが、落合正勝さんはそういった方々の代表といっていいかもしれません。

 もうひとつは、クラシコといってもあくまでファッションのひとつの形と考え、あくまでその時々に応じたさまざまな「仕掛け」を取り入れていく必要性を訴える方々=多くのセレクトショップがそうだと思いますし、最近では当のクラシコ・イタリア協会がそう感じているのではないかと思われる気がするのですが=も沢山存在します。

で、ぼく自身に関して言えば、クラシコの技術的なことにたいして大きな関心と尊敬をもちつつ、正直向こうで「エレガント」と言われる服装を纏った年輩の方を見ても、あんまりピンとこないのですね(ジャンニ・アニエッリやルカ・モンテゼモーロはほんっとにかっこイイと思うけど)。確かに日本のおやぢよりは圧倒的に服装に気を使ってるのはわかるけど、ちょっといろいろやり過ぎというか・・・。ご本人がいたころのジル・サンダーが好きだったこともあって、モダン&シンプルなものが好きで、クラシコのテクニックを駆使しつつ、モダンな服=決してコドモっぽくならないような=がいいなと思います。だから、後者に考え方が近いのですが、でも、あんまり大手のセレクトショップが好きではないのです。なんでかって考えると、どうしても背後に「数字」がちらつくからなんですね。大手は当然売り上げから在庫、さらには人事まで、数字でバッチリ管理していて、もちろんそれは必要なことですが、それゆえ「売れ筋」ということばかり気にしているような気が・・・。だから、「このおすすめでの売り上げで、あなたの今日の売り上げ目標に対して何パーセントの達成率?」みたいなことをすぐ考えてしまう悪いクセがありまして、素直に買い物を楽しめなかったりするわけです。もちろん、別に大手に限らず、数値管理が大切なのは理解はしてますが、規模が大きくなればなるほど、個人が見えにくくなって、数字が一人歩きするのは仕方のないことでしょう。

 今回からご紹介する、CINQUE CLASSICOさんは、そんなことを考えていたとき偶然前を通って、しばらくして意を決して入ったお店です。

 このお店は、なんといってもまだ若いオーナーのフジワラさんのセンスがいい。「クラシックBUTモダン」とでもいいたくなる品揃えの店内は決して広くはありませんが、とても居心地がいい。そして、彼の「匂い」がお店からプンプンしています。最初に入った時に、「あ、これいい!自分に合ってる!」といきなり思いました。もともと大手アパレルのカリスマ販売員として、「店にきたお客には、手ぶらでは帰らせなかった」過去をもつスゴ腕だったのですが、今はそんな過去がウソのように、「とにかく仕事が楽しくて」と穏やかに語り、決して無理押しはせず、なんにも買わずに帰る(ぼくのような)客の話相手になってくれたりします。

  前置きがえらく長くなりました。次回はお店の中をのぞいてみましょう。

                                            (続く)