▽偏在解消に期待
新卒医師の臨床研修制度の見直しに伴い、医師不足に悩む中国地方の病院の要員増に期待が広がっている。厚生労働省が二日に公表した都道府県ごとの研修医募集定員の試算で、大都市圏の定員は抑えて、集中する研修医を地方に分散。中国五県では定員が満たされれば、二〇〇八年度の採用実績より二百九十一人多い計七百七人が確保できる見込みだ。
東京都や福岡県など研修医が集中する五都府県は定員が大幅に削られた。島根県は現行の定員九十五人を三十五人上回る百三十人となる。うち十六人は、離島人口が多い地域への加算分だ。
〇六年に産科医が一時ゼロとなり、院内出産ができなくなった隠岐病院(島根県隠岐の島町)の田中智英事務部長は「受け入れるには研修医の教育体制を整える必要があるが、県内の研修医が増えるのは歓迎する。研修を通じて離島医療を望む医師が増えてほしい」と期待する。鳥取県も七十人から二十人増の九十人となる。
広島、山口、岡山各県の新たな定員は現行より減るが、いずれも〇八年度の採用実績は上回っている。広島県は現行の二百二十八人から百七十九人に引き下げられるが、採用実績の百四十二人よりは三十七人多い。
今回の大都市圏の定員の抑制で地方に医師が分散するチャンスを生かし、定員を確保すれば、研修医は大幅に増える見込みだ。小児科医師の辞職が相次ぐ半面、医局に入る研修医が減り、常勤医派遣の縮小方針を決めた広島大病院(広島市南区)のケースの改善も期待できる。
広島大病院卒後臨床研修センターの田妻進センター長は「最善の策ではないが、研修医の全国的な偏在を解消するための工夫は認められる」と評価。一方「内科や産婦人科など診療科ごとに足りない人数を把握して、適正に配置するようさらに求めたい」と、研修後の診療分野の選択も適正数にする必要性を指摘した。
試算は医学部の定員数や人口などに基づいているため、岡山大医学部(岡山市)と川崎医科大(倉敷市)がある岡山県の定員は中国地方で最多の二百一人。山口県は百七人となる。定員は一〇年から導入される見通しだ。(衣川圭)
●クリック 臨床研修制度 免許取得後の新卒医師に病院での研修を義務付ける制度で、2004年度にスタート。現在は2年間で7診療科を経験し、基本的な能力を身につけている。症例が豊富で経験を積みやすい都市部の民間病院を研修先に選ぶケースが増加。地方病院の医師不足を加速させたとされる。研修医を確保しにくくなった大学病院が地方病院などに派遣している医師を引き揚げる動きが相次いでいる。
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