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【静岡】

若者の自立支え20年 三島のNPO法人「リベラヒューマンサポート」

2009年3月4日

NPOカフェで働く藁科さん(左)と、理事長の三好さん(中)=三島市で

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 不登校やひきこもりの若者らの就学、就労を支援している三島市の特定非営利活動法人(NPO法人)「リベラヒューマンサポート」がことし、活動開始から20周年を迎えた。これを機に拠点施設を再開発型のマンションに建て替える予定。理事長の三好悠久彦さん(66)は「新たなステージに入る活動を次世代に引き継いでいきたい」と話す。 (三島通信部・堀場達)

卒業生らに活動リレー

 この法人は、三好さんが1989年、三島市内に設けた三島総合心理研究所が原点。相談業務から始め、翌90年にフリースクールの「リベラスコーレ」を開校させた。

 三好さんは元中学校、高校の先生。「静岡県高校教育相談研究会理事として不登校問題に取り組んだのがきっかけ。教師と二足のわらじでは、問題解決につながらないと考えた」と振り返る。

 安定した職をなげうっての挑戦だっただけに「3人の子は独立しておらず、かみさんに『やめなさい』と泣きつかれた」と打ち明ける。

   ◇  ◇

 スコーレには現在、小学3年から22歳までの約40人が通う。高校中退、不登校などが理由だが、適齢の子どもは県立静岡中央高校に在籍させ、通信教育を受けさせる。過去約80人が高卒資格を得て大学、短大などに進学したという。

 「不登校のほとんどは、学校の管理になじめなかったり、不満を持っていたりするのが原因。別のシステムで学習意欲は引き出せる」(三好さん)との指導方針が、成果につながっているという。

 法人はこのほか、厚生労働省の委託を受け、ひきこもり青年らのための「地域若者サポートステーション」を開設したり、系列のNPO法人「リベラインダストリア」が知的障害者の就労訓練施設を運営したりするなど、活動の幅を広げてきた。

 スコーレをはじめ関係施設は、三島市中心部に集中させている。「つまずいた少年や障害者の生活の場をまちの真ん中につくりたかった」と三好さん。「人は多くの人と出会い、成長する。施設がまちの中にあればこっそり通うことはできない。堂々と出入りするようになる」からだ。

 スコーレの卒業生が職員として働くケースも。藁科雄介さん(30)は、系列の喫茶店「NPOカフェ」で接客法を学んでいる。「最初は不安ばかりだったが、一緒に働くスタッフは失敗しても温かい」と笑顔を見せる。

 山田陽介さん(26)は自動車の部品加工などを受注しているインダストリアの事務局長。スコーレ時代、ボランティアで知的障害者施設の仕事を手伝ったのをきっかけに福祉の道へ。「僕より皆さん(障害者)の方が仕事の腕は上」と、アピールにも余念がない。

   ◇  ◇

 三好さんは、本部事務所とスコーレを開設している2階建ての老朽家屋を取り壊し、周辺地権者とともに14階建てマンションを建てる事業を進めている。7月に着工し、来年12月に完成予定。新たに合宿所を設けたり、マンションの清掃を請け負ったりするなどして若者支援の機会をさらに増やしていく考えだ。

 ただ、自身は完成を機に「理事長を引退し次世代に引き継ぎたい」という。「市民運動は持続させてこそ意味がある」。バトンを渡す次世代が確実に育ったことも大きな誇りだ。

 

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