県立中央病院の受精卵取り違え疑惑で、出産に希望をつなごうとする夫婦は病院側に質問を重ね、妻は「100%自分の子供なら産みたい」と涙を見せたという▼一方、これまで約1000例を手がけたという担当医は記者会見で、「ルーティンワークに流れた」と答えた▼この言葉を聞いた時、新人のころデスクから「お前にとっては日々の仕事の一部かもしれないが、新聞に載った一言が人の人生を左右することもあるんだぞ」と言われたことを思い出した。どんな仕事でも、単純なミスや不注意はある。でもそれが、時に人を不幸のどん底に陥れてしまうことがある。自分の仕事には常に責任と、起こりうる事態への想像力を持って臨みたい。【吉田卓矢】
毎日新聞 2009年3月3日 地方版