医師として人間として信頼・敬愛している私の主治医が病気で入院した。先生は愛煙家にして愛飲家。以前「二つは体に毒。私のように一つにしたら」と“忠告”したら、測定データで私の酒量を知っている先生に「あなたに言われたくない」と言い返された。
私はこの先生とは一蓮托生(いちれんたくしょう)で、ほかの医師が処方する薬(降圧剤)など、飲む気はしない。命を預ける身として心配になり、お見舞いに行った。医師を見舞うのは61年の人生で初の経験。世間的にも患者が医師を見舞うなんて、あまりないだろう。
幸い「大したことではない」と話され、顔色も良く、元気な様子だった。「酒やたばこが要因の病気でもない」とうれしそうに言った時、思わず笑ってしまった。
「医者の不養生」という言葉があるが、この先生に限って「不養生」などではなく、患者や地域医療の事が心配で、そのストレスが病気の原因ではないかと素人ながら思う。
雑談のあと、先生に一度言ってみたかった言葉を伝え、病室を出た。「お大事に」【中村隆】
毎日新聞 2009年3月4日 地方版