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生活保護 申請急増 「最後の安全網」効果的運用課題

3月4日8時5分配信 産経新聞


 東京23区と17の政令市で、今年1月の生活保護申請数が前年同月よりも大幅に増えている実態が明らかになった。悪化する景気の底が見えない中で、今後の雇用環境の深刻化は必至。生活保護申請がさらに増えることも予想される。国や地方の財政負担増も懸念され、自治体では大幅な申請増加に戸惑いの声も漏れる。社会の「最後の安全網」をどう効果的に運用するかが課題となりそうだ。

 ≪窓口では順番待ちも≫

 ある自治体担当者は「審査は適正に行わねばならない」と話す。窓口では通常、資産や預貯金調査などの審査を経て、原則2週間ほどの審査が必要。そのため申請者の急増で窓口前では相談者らが順番待ちをするようなケースも出ている。申請者からは審査の迅速化を求める声も強い。

 年末年始に開設された「年越し派遣村」では、東京都千代田区が、申請した「村民」に2、3日の審査だけで保護決定をした。派遣村実行委員会では「当然のこと。他の地方自治体にもこのような審査が広がるべきだ」と強調する。

 しかし自治体側には審査を慎重に行わざるをえない事情もある。とりわけ自治体側の頭にあるのは北海道滝川市や埼玉県深谷市で発覚した多額の保護費不正受給事件のケースだ。不正防止を目的に、チェックが厳しくなれば結果として、申請のスピードは鈍らざるを得ないジレンマにある。

 ≪財政耐えられない≫

 急増する申請に、ある自治体幹部は「全部申請を受け入れれば、自治体財政が破産する」と懸念する。生活保護費の負担は原則、国が4分の3、残る4分の1を地方が担う。国の負担が大きいとはいえ、件数増加による市区町村の負担は、財政全体にまで及ぶ。

 そのため自治体が「水際作戦」というハードルを設けていることが指摘されている。平成18年度の厚生労働省の調査では市区町村への生活保護相談者のうち、申請手続きまで至った人は約4割。残る6割の中には、相談にとどめて門前払いするケースが少なからずあるといわれる。財政への深刻な影響を避けつつ、どこまで保護の手を伸ばすかが自治体窓口の悩みだ。

 広島市は「生活保護が増えるのはしかたがないが、ハローワークと連携するなどして、働ける人には就労に結びつけるよう支援していく」としている。

 ≪非正規の相談増か≫

 「3月はなんとかなりそうだが、問題は4月以降。『不安』のレベルは超えた」。日雇い派遣で働く都内男性(40)はこう話し、生活保護の申請も考えているという。

 厚労省によると、昨年10月〜今年3月までに職を失ったり、失う見通しの非正規労働者は全国で約15万8000人に上る。生活保護以外の有効な「安全網」がない中、非正規労働者による保護申請が増える恐れが高まっている。

 産経新聞の調査でも、北九州市では昨年12月と今年1月に職・住を失った非正規労働者から21件の相談があり、うち6件が保護申請。「今後、非正規労働者からの相談・申請は増えていくと思う」と予想。

 神戸市は「失業や収入の減少で保護申請世帯の数は増える可能性がある」と警戒。札幌市も「本州で派遣切りにあった人が、戻ってきて申請するケースが今後増える恐れもある」と危惧(きぐ)する。

 法政大の杉村宏教授(生活問題論)は「仕事と住まいを一度に失う二重の困窮に陥る人が多い」と指摘。「再就職支援なども大切だが蓄えがなければすぐにホームレスになってしまうような人には生活保護も最後の命綱として活用していくべきだ」と話している。

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最終更新:3月4日8時34分

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