【千葉】現場に強い危機感 医師不足 10万人当たり全国45位2009年3月4日
全国的に医師不足の問題がクローズアップされているが、県内の医師数は必ずしも少ないわけではない。厚生労働省の調査では、二〇〇六年末時点で県内の医療施設で働く医師数は九千三百二十二人で、全国で九番目に多い計算になる。 ところが、人口十万人当たりの医師数に換算すると、一五三・五人となり、埼玉県、茨城県に次いで四十五番目。六百万人を超える人口を抱え、東京に隣接する首都圏として不利な側面があるとはいえ、順位は一気に急落する。昨年九月末の銚子市立総合病院の休止問題も医師不足が大きな要因だった。 県も医師確保のためにさまざまな手を打つが、効果は見えてこない。特に苦戦しているのが、転職や再就職を希望する医師に無料で勤め先をあっせんする「ドクターバンク事業」だ。〇六年十月にスタートしたが、今年一月までに採用に至ったのはわずか一人。背景には民間の仲介業者との競合もある。県医療整備課は「求人数に比べ求職者数が少なすぎる。やり方を考え直さないといけない」と頭を抱える。 ◆ ◆ 県医師会の石川広己理事は「医師不足対策には県内の研修医を増やし、定着させることが効果的。そのために医師研修を充実させることが大切だ」と力説する。千葉大医学部付属病院などと協力して昨年二月、特定非営利活動法人(NPO法人)「千葉医師研修支援ネットワーク」を設立し、研修医同士の交流などに努めてきた。 石川理事は「ネットワーク設立には協力してもらったが、県の施策にあまり期待はできない」と漏らす。 県がんセンター長の竜崇正氏は二月二十三日、「このままでは医療崩壊が止まらない」と知事選への出馬を示唆し、独自の医療政策を発表した。結果的に出馬は見送ったが、「自分たちでなんとかしなければ」という強い危機感は現場の医師に広がっている。 ◆ ◆ 地域による医師の偏在や高齢化のほか、小児科や産科をはじめとする一部診療科の医師不足など、医療問題にはいろいろな側面がある。県民の生死に直結するだけに優先度は高く、新知事は重要な政策課題として真正面から取り組む必要がある。 (小林孝一郎)
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