米国の保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の経営危機から金融不安が拡大している。株価も急落した。米政府は危機の連鎖を防ぐために万全の措置を講じるべきだ。
サブプライムと呼ばれる住宅ローン焦げ付き問題の直撃を受けたAIGは昨年九月に連邦準備制度理事会(FRB)から巨額融資枠の支援を受けたのを手始めに、十一月には米政府から公的資金を受け入れた。それでも経営危機は収まらず、今回は米政府が最大三百億ドル(約二兆九千億円)を追加増資した。
日本で営業している子会社のアメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー(アリコ)などの株式をFRBが間接的に保有する支援にも乗り出している。
米政府は先に、AIGだけでなく金融大手のシティグループについても、保有する優先株の一部を普通株に転換する形で支援している。米政府の持ち株比率は最大で約36%に達し、事実上、政府管理の下に置いた。
まさに政府とFRBによる全面支援態勢といえる。それでも週明けのニューヨーク株式市場は大幅続落し、東京市場も一時、バブル後最安値を割り込んだ。東証株価指数(TOPIX)は終値でもバブル後最安値を更新した。
AIGの経営危機が表面化してから、アリコでは保険契約の解約が相次いだ。米政府とFRBの支援で保険金支払いへの懸念はなさそうだ。FRBの株式保有は一時の緊急避難であり、最終的にはあらためて売却先や経営再建策を固めていくとみられる。
AIGの事態が深刻なのは、債務不履行の場合に損失を肩代わりするクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる商品が広範な金融取引にまたがり、万が一の場合には危機が一段と世界に拡散するからだ。
危機を最小限に食い止めるのは、発信源である米国の責任でもある。住宅価格は値下がりが止まらず、景気悪化から不良債権も増加した。金融大手バンク・オブ・アメリカの株価も急落している。米政府は支援の手を緩めず、家計や市場の不安感を和らげるために手を尽くしてほしい。
日本もこれから三月末の決算期を迎える。金融機関は株価下落で自己資本比率が低下し、貸し出し余力は一段と弱まりそうだ。黒字倒産の増加を避けるためにも、政府は企業の資金繰り支援にきめ細かく対応する必要がある。
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