民主党の小沢一郎代表の公設秘書が、東京地検に逮捕された。西松建設側から違法な政治献金を受けた疑いが持たれたのだ。自らの政治資金の実態や背景について、小沢氏は詳細に語るべきだ。
小沢氏の資金管理団体に対し、西松建設のOBが代表を務めていた二つの政治団体から、多額の政治献金がなされていた。二〇〇三年から〇六年にかけ、計二千百万円に上っている。
政治資金規正法は、政治家個人や資金管理団体への企業献金を禁じている。他人名義の献金も、むろん法に触れる行為である。
西松建設OBの政治団体の場合は、同社社員が政治献金の原資を納めていたばかりか、同社はその分を社員の賞与に上乗せする形で、埋め合わせていた。
こんな形態は、一般感覚では“偽装献金”そのものではないだろうか。企業献金が法律で封じられているため、西松建設の名前をあえて表に出さず、OBの政治団体を迂回(うかい)する形で、政治資金を政治家側に流していたのと同然に映るからだ。
東京地検は、小沢氏の会計責任者を務める公設秘書が、この多額献金が西松建設からのカネだと認識していたとみて、同法違反の疑いで逮捕したわけだ。
秘書は容疑を否認とされ、小沢氏も民主党の幹部会で「法令に従って適切に処理している」と説明したという。だが、政権交代をめざす同党には致命的な打撃となりうる。それだけに、国民に向かって、小沢氏は事実の経緯や同社とのつながりなどについて、詳細に説明を尽くすべきだ。
問題はもっとある。西松建設のOBの政治団体を調べると、約十年間にわたって、総額約四億八千万円にものぼる政治献金やパーティー券の購入をしているのだ。そこには、小沢氏の団体ばかりでなく、与党の幹部や閣僚らの団体がずらり名を連ねている。
総選挙が近いこの時期に野党党首の公設秘書逮捕に踏み切った理由について、東京地検にも説明を求めたい。民主党幹部は「仕組まれた陰謀だ」と述べている。与党側政治家には問題はないのか。徹底捜査を求めたい。公正さを疑われては、東京地検も本意ではなかろう。
またも政治とカネをめぐる不正が浮上した。「政治空白」が嘆かれているこの場面で、さらに混迷が深まれば、国民の政治不信は募るばかりだ。
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