準大手ゼネコン・西松建設の裏金事件に絡み、小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書らが3日、東京地検特捜部に政治資金規正法違反の疑いで逮捕された。今の政治状況を一変させる可能性のある衝撃的な逮捕である。
小沢氏は同日の党幹部会で「適切に政治資金を処理している」と語ったといい、秘書も容疑を否認しているという。だが、衆院解散・総選挙が近づく中、これまで追い風が続いていた民主党へのダメージは避けられない。小沢氏は早急に事実関係をきちんと説明し、責任を明確にすべきだ。
政治資金規正法では、届け出があった政党側以外への企業からの献金を禁止している。しかし、西松建設は、同社OBを代表とする政治団体を隠れみのにして違法な企業献金をしてきたとされる。
今回の容疑は小沢氏の資金管理団体「陸山会」の会計責任者である秘書が、実際にはOB団体を名義にした西松建設の企業献金と認識しながら、計2100万円の献金を受け取り、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたというものだ。
西松建設のOBが設立した二つの政治団体には同社の課長クラス以上の幹部が会費を支払い、後で会社が賞与に上乗せする形で補てんしていたという。西松建設の前社長も同時に逮捕されており、企業ぐるみの違法献金だったことは明らかで極めて悪質だ。
企業や業界との癒着につながる不明朗な政治家とカネの問題はこれまでも再三指摘されてきた。小沢氏もかつて、自らの資金管理団体が巨額な不動産を取得していた問題で与党から追及されたこともあった。
もちろん、今後の捜査の進展を慎重に見極めなくてはならない。だが、小沢氏は「古い自民党政治」と決別するため、自民党を離党し、政権交代を目指してきたはずだ。その小沢氏と自民党政治の象徴といえるゼネコンとの不透明な関係が今回明るみに出た。有権者の間には「小沢氏も古い体質から逃れられない」とのイメージが広がるだろう。
小沢氏の政治的な責任が大きいのはそこだ。今後、小沢氏の進退問題につながる可能性がある。野党優位で進んできた国会情勢も大きく変わるかもしれない。
民主党内には総選挙が近づく時期の逮捕に「政治的意図があるのではないか」と反発する声もある。だが、まず党を挙げて事実関係を確認し、国民に説明する方が先だ。
西松建設OBによる2団体の政治資金収支報告書などによると、06年に解散するまでの10年間で政治献金は総額3億8500万円に上り、小沢氏側以外にも、自民党や民主党の有力議員らの側にも提供されていた。同様に違法献金だった疑いもある。特捜部にはこれらについても徹底した捜査を求めたい。
毎日新聞 2009年3月4日 0時11分