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浮浪容疑の逮捕「違法」 覚せい剤使用の被告に逆転無罪

2009年3月4日10時21分

 軽犯罪法違反(浮浪)の疑いで奈良県警に現行犯逮捕され、勾留(こうりゅう)中の尿検査の結果から覚せい剤取締法違反(使用)の罪で起訴された住所不定、無職の男性(43)の控訴審で、大阪高裁は3日、逆転無罪の判決を言い渡した。古川博裁判長は浮浪容疑での逮捕について「要件を満たしておらず違法」と判断。「違法な別件逮捕中の採尿にもとづく鑑定には証拠能力はない」と述べ、懲役3年の実刑とした昨年10月の一審・奈良地裁判決を破棄した。

 浮浪は軽犯罪法が列挙する罪の一つで、「働く能力がありながら職業に就く意思を持たず、一定の住居を持たずに諸方をうろついたもの」と規定され、ほかの罪とともに「該当する者は拘留または科料に処する」とされている。警察庁の07年の犯罪統計によると、同法違反の摘発件数1万8478件のうち浮浪の適用は6件。弁護人によると勾留されたケースは異例。

 判決は、男性の生活実態について、男性が乗っていた車の中に求人情報誌や求人票があり、就職活動中だった▽マンションを賃借していた、と認定。浮浪容疑での逮捕は誤っていたと判断した。そのうえで、軽犯罪法が適用上の注意として「国民の権利を不当に侵害しないように留意し、本来の目的を逸脱して他の目的のために乱用してはならない」と定めている点に触れ、県警の捜査について「定めに反する判断で、落ち度にほかならない」と非難した。

 判決によると、男性は07年10月7日、奈良県生駒市のパチンコ店駐車場にいたところを奈良県警の警察官に職務質問され、浮浪の疑いで現行犯逮捕された。強制で行われた尿検査で覚せい剤反応があり、翌8日にいったん釈放された後、覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕・起訴された。

 判決について弁護人は「捜査に疑いを持って、事実を真正面からみた内容だ」と評価した。(宮崎園子)

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