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写真から「音」が聞こえる

2009年03月04日

写真

作品を前に、愛用のデジタルカメラを手にする宮本涼子さん=横浜市泉区

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付近の川などを撮影する宮本涼子さん(右)。見守る竹田英雄さんは手話でアドバイスする=横浜市泉区

 聴覚障害がある横浜市港北区の宮本涼子さん(27)が、同市都筑区のカフェ「レジオン」で、初の写真展を開いている。外が怖くて引きこもりがちだった生活を変えようと、カメラを手にして5年。「日本を代表する女性写真家」を目指し、第一歩を踏み出した。

(斎藤博美)

 さらさらと流れる川のせせらぎ、竹やぶを吹き抜ける一筋の風………。宮本さんの写真からは、さまざまな「音」が聞こえてくるようだ。

 けれど宮本さんは、2歳の時、聴力を失った。小中学校は普通学級に通い、会話は、相手の唇の動きを読んで理解した。手話を覚えたのは通信制の高校に入ってから。人とのコミュニケーションがうまくとれず、引きこもりがちの生活を送っていた。

 しかし22歳の時、障害者のパソコンの相談員をしていた竹田英雄さん(42)に出会い、カメラを勧められる。自らも「多発性硬化症」という難病と闘い続けてきた竹田さんに影響を受け、宮本さんは「写真家になる」という夢を見つけた。

 ミュージシャンでもある竹田さんのライブで撮影を担当するなど、少しずつ人と触れ合い、写真を撮り始めた。

 「最初は100枚に1枚いいのがあるかないか。そんな状態が4年以上続きました」と、竹田さんは振り返る。

 でもあきらめなかった。週5日、野菜を詰めるアルバイトをしながら、時間を見つけて和泉川付近の自然を撮影したり、夜、自宅でコップやペットボトルに水を入れて光と影の織りなす世界を撮ったりした。竹田さんの指導を受けながら、コンパクトデジタルカメラと携帯電話で、撮り続けた。

 ここ半年ほどですばらしい写真が増え、作品展の開催を決めたという。竹田さんは「竹の若々しい感じ、流れる雲の立体感など、一瞬を切り取る力がすごい。聞こえないからこそ見える世界をとらえていると思います」と話す。

 8月までに30カ所の作品展開催を目標にしている。

 「いい写真が撮れた時の達成感がうれしい」とほほえむ宮本さんは、いつかもっと高性能のカメラやレンズを使って、作品作りに励みたいと考えている。

 夢は始まったばかりだ。

     ◇

 カフェ「レジオン」(横浜市都筑区中川中央1丁目37の23)での作品展は10日まで(4日休み)。横浜ラポール内のレストランや、東京・府中市の古本屋でも順次開催を予定するが、その後の開催場所も募っている。

 問い合わせはハートフルパワー(045・800・3317)へ。

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