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【主張】西松献金逮捕 小沢氏の責任は明白だ
■首相は懸案解決に邁進せよ
準大手ゼネコン「西松建設」の裏金事件は、小沢一郎・民主党代表の公設第1秘書らが政治資金規正法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕されるという衝撃的な事件に発展した。小沢氏自身の政治責任はきわめて重いと言わざるを得ない。自ら出処進退を明らかにすべきだろう。政権交代を目指す政党の責任者として、政治とカネの問題で国民の信頼を失いつつあることを重く受けとめるべきだ。
逮捕された大久保隆規容疑者は、西松建設側から不正な政治献金を受けたとされる政治資金管理団体「陸山会」の会計責任者を務めている。また公設第1秘書は側近中の側近でもある。
小沢氏はこうした事態とどう向き合うのか。
小沢氏はこれまで、西松建設側からの資金提供について「企業献金ではなく、政治団体からと思って受け取ったのだと思う。何ら違法性はない」と説明していた。東京地検の強制捜査前には、小沢氏は民主党本部での幹部会で「すべてきちんと処理している。まったく心配はない」と語り、政治資金に関する法令上の問題はないとの認識を示した。
民主党執行部もその説明を了承したというが、不明な点ばかりではないか。政治とカネをめぐる事件が党首周辺で起きた事態を深刻に受け止めているのか。
小沢氏自身も含め、民主党は今回の事件について国民に説明する責務がある。
≪政権を担当できるのか≫
とくに小沢氏は最近、北朝鮮による拉致事件に対し、金銭的な解決しかないとの趣旨の発言を行ったとされる。政治家の資質を疑いたくなる発言といえる。
西松建設の裏金問題は同社前社長の国沢幹雄被告(外為法違反で起訴)が中心となって、海外にプールした約10億円の裏金を税関に無届けで日本に持ち込んだことから発覚した。
東京地検特捜部は西松建設が与野党の政治家の政治資金管理団体に献金していた疑いが強いとみて、捜査を続け、小沢氏の政治資金管理団体に2100万円の不正献金があったことをつかんだ。
西松建設の手口は巧妙だ。同建設のOBが代表を務める政治団体が、政治家の資金管理団体に献金するというやり方をとっていた。政治資金規正法は、企業献金先を政党と政党の資金を管理する政治資金団体に限っており、他人名義や匿名での寄付も禁じている。
不正な政治献金の舞台とされた「陸山会」は一時期、東京都内などに計13件、総額10億円を超す不動産を購入していた。政治資金規正法に触れないものの、不適切ではないかと問題視されていた。
自民党などは政治団体の不動産所有は政治資金による資産形成にあたると指摘していた。こうした問題も徹底解明を期待したい。
今秋までには衆院選を通じて自民、民主両党による天下分け目の戦いが行われる。麻生内閣の支持率の低迷などから、自民党の苦戦が予想され、有権者の間にも選挙後には民主党を中心とした政権が誕生する可能性が高いとの認識が広がっている。
≪国民の政治不信に拍車≫
それだけに民主党トップの秘書が逮捕されるという事件は、民主党支持層に限らず多くの国民は信じられない思いを抱いたに違いない。ねじれ国会を背景として続いてきた国政の停滞に加え、今回の事件で新たな政治不信を招きかねない。
参院財政金融委員会は3日、定額給付金などの財源根拠となる関連法案を否決した。4日には参院本会議で否決、衆院再議決により成立する運びだ。それに続き、来年度予算案や関連法案などの参院審議が控えている。
麻生太郎首相にとってもここは踏ん張り時である。民主党の混乱に乗じて解散・総選挙を求める声が自民党内から出るだろう。だが、首相が全力を挙げるべき課題は内政外交の懸案を一つでも二つでも解決することだ。
株価下落などを受け、追加経済対策策定や補正予算の編成作業などの景気対策も待ったなしだ。
さらにアフリカ・ソマリア沖の海賊対策のため、海上警備行動として海自艦船を派遣するほか、海賊行為対処法案(海賊新法)の早期成立を図るべきだ。北朝鮮のミサイル発射問題もある。首相は指導力を発揮する絶好の好機ととらえるべきだ。