西松建設の裏金事件に絡み、民主党の小沢一郎代表の公設第1秘書が逮捕されたことを受けて、自民、民主両党の攻防は攻守逆転の様相を帯びてきた。民主党はこれまで平成21年度予算成立直後の解散を主張し、政府・与党は21年度第1次補正予算成立後の解散を模索してきたが、小沢氏の辞任に発展するなど混乱が拡大すれば、21年度予算成立直後の解散が現実味を帯びることになる。
第1秘書の逮捕の一報を聞いても与党幹部は平静を装った。思わぬ“敵失”に小躍りしていると思われたくないからだ。
自民党の細田博之幹事長は「事実は司直の手で今後明らかになると思うが、強制捜査ならば(捜査当局に)ある程度の心証があるのだろう。まあ特に感想はございません」。菅義偉選対副委員長は「小沢氏は数年間で5000万円を受け取ったと聞いている。異常な金額だ。事実関係をきちんと捜査してほしい」と語り、次期衆院選への影響については「まったくない!」と断言した。
一方、矢野絢也元委員長の国会招致などを材料に民主党に揺さぶられてきた公明党の北側一雄幹事長は「重大な事態だと言わざるを得ない。小沢氏にはまず事実関係をきちんと説明していただきたい」と厳しい口調で語った。
3日夕の国会内はこの話で持ちきりだった。政府・与党の選挙戦略を根底から見直すことになりかねないからだ。
これまで与党内では麻生太郎首相の内閣支持率低迷を受け、「4月解散説」はすっかり下火となり、4月末に21年度第1次補正予算案を提出し、早くても5月末から6月初めの解散が有力とみられてきた。
だが、小沢氏が代表辞任や議員辞職する事態となれば、前提条件はすべて崩れる。ある自民党中堅は「これで潮目が変わった。小沢氏が辞任する瞬間を狙って解散を打つべきだ」と力説。「もし解散を先送りし、民主党が新しい代表で勝負を挑むことになれば、逆に自民党は苦しくなる」と付け加えた。
事件は政治不信を募らせるだけで自民党の支持率好転につながらないとの声も少なくない。加藤紘一元幹事長は「これでまた政治に対する信頼がぐらつく。不幸せなことだ…」。伊吹文明元幹事長は「麻生首相は敵失に乗じて解散するような人ではない。また自民党は絶対にそういうことをしてはいけない」と冷静な対応を促した。
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