小沢一郎民主党代表の会計責任者が逮捕された背景には、企業が政治団体を隠れみのに献金し、政治家に接近する行為が後を絶たない実態がある。社員を政治団体会員に仕立て会費を負担させ、賞与で補てんする西松建設のやり方はあからさまといえ、捜査はこうしたからくりをあぶり出し、違法な企業献金に警鐘を鳴らす意味を持つ。
政治資金規正法は1948年の制定後、たびたび不備が指摘され、改正を繰り返してきた。政治家の資金管理団体への企業献金は00年以降全面禁止となったが、政党支部への献金や政治団体からの寄付は認められており、「抜け穴」は存在するとの批判は強い。企業献金の禁止と引き換えに、政党助成金が導入された経緯から考えても、政治家や企業の現状認識は甘いと言わざるをえない。
今回、西松建設による不正な献金は与野党議員や地方自治体の首長を問わず行われており、特捜部も広く捜査を進めてきた。その中で、小沢代表の資金管理団体への献金額が他の政治家と比較して突出して多かったため、立件を優先したとみられる。地検幹部は「(逮捕された)会計責任者は違法献金だったと知っていたのは確実」と断言する。
ただ、政界や法曹関係者の間では、「なぜ小沢代表の団体だけなのか」「今回の虚偽記載の額(2100万円分)が今後、立件の有無を判断するハードルになるのか」との声も聞かれる。特捜部は真相解明とともに、こうした疑問に対し丁寧な説明を迫られるだろう。【安高晋】
毎日新聞 2009年3月3日 22時45分(最終更新 3月3日 22時57分)