3月中にも一部で支給が始まる定額給付金をかたった振り込め詐欺の未遂事案が、昨年秋以降、宮城や兵庫など9県で発生していることが警察庁のまとめでわかった。給付金はほぼ全世帯に支給されるため、犯罪集団の標的も広がる。このため支給業務を担う自治体には、各世帯への問い合わせに電話を使わないようにするなど、詐欺の防止策をとるところも多い。
「定額給付金の手続きをするので至急ATM(現金自動出入機)に向かってください」。昨年12月上旬、仙台市の高齢女性宅に市職員を名乗る男から電話が入った。女性はキャッシュカードと通帳を手に急いでスーパーのATMに向かおうとしたが、呼んだタクシーの運転手に「まだ支給は始まってないですよ」と教えられ、事なきを得た。
宮城県警によると、昨年11月末から年末にかけて、定額給付金の支給をかたってATMに誘いだそうとする事例が計23件あった。同県警は高齢者宅への巡回を強化。仙台市は町内放送や広報紙のほかラジオやミニコミ誌で「まだ給付する段階ではありません」と注意を促した。
神戸市では昨年11月中旬、「給付金が支給されているので銀行口座を教えてほしい」という不審な電話があったと、区役所に市民から連絡があった。
警察庁によると、定額給付金をかたった同様の事案は昨年11月ごろに始まり、宮城、兵庫のほかに富山、千葉、愛知、和歌山、宮崎、長崎、鹿児島でも起きている。いずれも未遂で、金銭的な被害はなかった。
定額給付金の申請は、郵送方式が基本とされている。まず市区町村が各世帯に申請書を送付。受け取った世帯は、申請書に振込先の口座番号を記入し、通帳や本人確認書類の写しを同封して送り返す。それを役所がチェックし、口座に振り込む。